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映画音楽ウラ話『バック・トゥ・ザ・フューチャー』 ゼメキスが信頼した音楽家とは?「魅惑の深海パーティー」トリビア解説も

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ライター:#森本康治
映画音楽ウラ話『バック・トゥ・ザ・フューチャー』 ゼメキスが信頼した音楽家とは?「魅惑の深海パーティー」トリビア解説も
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』サウンドトラック:筆者私物
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ロック大好き高校生マーティ・マクフライ(マイケル・J・フォックス)と、天才科学者“ドク”ことエメット・ブラウン博士(クリストファー・ロイド)のユーモラスなタイムトラベルを描いたSFアクションコメディの傑作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ(1985年、1989年、1990年)。

「エリア限定の時空旅行」という絶妙なスケール感、魅力的な登場人物、至るところに張られた伏線を鮮やかに回収する脚本、「未来は自分で作るもの」という爽やかなメッセージが見事な融合を果たした『BTTF』シリーズは、第1作の公開から38年が経った今も多くの人々から愛されている。

映画史に残る名コンビを好演したフォックスとロイドはもちろん、彼らの冒険を盛り上げるキャッチーなメインテーマを作曲したアラン・シルヴェストリも、シリーズの功労者の一人と言えるだろう。

映画ファンの心を掴む、珠玉のメインテーマ

『アベンジャーズ』シリーズ(2012年~2019年)の音楽でも知られる巨匠アラン・シルヴェストリは、第1作当時35歳。ロバート・ゼメキス監督と初めて組んだ『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』(1984年)で意気投合し、彼から全幅の信頼を寄せられての再タッグであった。本作の製作総指揮を務めたスティーヴン・スピルバーグは、当時まだ無名だったシルヴェストリが適任か半信半疑だったが、試写で彼の作った音楽を聴いて才能を認めたという。

こうした経緯からも分かるように、『BTTF』の音楽はリスナーの心を掴む旋律的・律動的な魅力に満ちている。金管楽器の演奏を前面に出したメインテーマの高揚感のあるメロディ、そしてスネアドラムとシンバルを華々しく打ち鳴らす力強いリズムで、マーティとドクが繰り広げる冒険の興奮を溌剌と描き出す。

本作の劇伴はメインテーマのバリエーションを中心に構成されているが、このテーマ曲の中には二つの重要なフレーズがあり、それぞれ行動開始を示唆するモティーフ、マーティとドクの友情や“奇跡”が起きる瞬間を示唆するモティーフとして機能している。シリーズを通して使われている、せわしない雰囲気の「ドクのテーマ」もコミカルな味わいがある。

同じ音楽構造の中に新しい要素を組み込んだ『PART2』と『PART3』

このシリーズの音楽の特徴は「続編でも劇伴の構造がほとんど変わらない」ということだろう。ともすればマンネリと思われそうな手法だが、これは「同じ登場人物がどの時代でも同じシチュエーションを体験する」という作品の本質をシルヴェストリが理解していることの証とも言える。音楽構造が同じだからこそ、物語にデジャヴのような感覚と“繰り返し”の面白さがもたらされるのである。

とはいえ、続編の音楽にも新しい要素は組み込まれている。タイムパラドックスでヒル・バレーが無秩序な町と化す『PART2』では、より凶悪な存在となったビフ・タネン(トーマス・F・ウィルソン)のために不吉なテーマが作曲され、ダークな楽曲の割合が増えている。

そして冒険の舞台を1885年に移した『PART3』では、前作ラストの予告編で流れたテーマ曲が本編の音楽の中でも使われ、往年のハリウッド西部劇のような音楽が聴かれるようになった。ドクとクララ・クレイトン(メアリー・スティーンバージェン)の温かな「愛のテーマ」も微笑ましく、クライマックスの蒸気機関車アクションを盛り上げる10分強の劇伴も迫力満点だ。

シリーズの音楽を通して聴いてみると、シルヴェストリが映画音楽家として力をつけていった過程がよく分かる。だからこそ、今日に至るまでゼメキスとのコラボが続いていること、近年『レディ・プレイヤー1』(2018年)でスピルバーグ監督作の音楽を任されたことにも胸が熱くなるのである。

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