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『RRR』でエンタメの極みに至ったインド映画の底力『バンバン!』 トムクル主演『ナイト&デイ』の荒唐無稽さに磨きをかけたマサラ・リメイク

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ライター:#市川夕太郎
『RRR』でエンタメの極みに至ったインド映画の底力『バンバン!』 トムクル主演『ナイト&デイ』の荒唐無稽さに磨きをかけたマサラ・リメイク
『バンバン!』©Fox STAR Studios

いまだ大旋風を巻き起こし中である『RRR』のおかげで、「もっとインド映画をくれ!」と需要が高まりつつあるなか、最高のタイミングで供給されるのが『バンバン!』だ。

『バンバン!』©Fox STAR Studios

主人公、ビックリするほど甘マッチョ

かつてインドで発見され、英国ヴィクトリア女王に献上された世界一のダイヤモンドとして名高い“コ・イ・ヌール”(実在します ※劇中字幕は「コヒヌール」)が、展示されているロンドン塔から盗まれたというニュースが世界中を駆け巡る。もちろんインド全土では“コ・イ・ヌール”盗難事件で話題沸騰中なのだが、テンション高めな祖母と片田舎で二人暮らしの銀行受付係ハルリーン(カトリーナ・カイフ)は無為に過ごしていた。

『バンバン!』©Fox STAR Studios

そんなある日、ハルリーンは変わり映えしない日常から脱却するため、勢いで出会い系サイトに登録。マッチングした相手と会うためにレストランに向かうと、そこに来たのはビックリするほど甘いマスクをしたマッチョだった。最初は浮かれまくるハルリーンだが、ハンサムマッチョの異様さにほんのり気づいた時には時すでに遅し。ハンサムマッチョは“コ・イ・ヌール”を盗んだ国際指名手配されている怪盗ラージヴィール(リティク・ローシャン)で、凶悪なテロリストと警察から追われている身だった……。

『007』『ワイスピ』顔負けの力強さ&お茶目さが完全オーバーヒート

そんなストーリーからは微塵も感じさせないが、本作は2010年に公開されたトム・クルーズ&キャメロン・ディアスの共演作『ナイト&デイ』のインド版リメイク。オリジナル版では小さなボディに莫大なエネルギーを持つ革命的な電池“ゼファー”をめぐる騒動だったのが、物語の支柱を伝説的ダイヤモンドにしたことで『RRR』と同様にイギリスとインドの歴史をしっかり主張しながらも、荒唐無稽さに磨きをかけるという離れ業をやってのけている。

『バンバン!』©Fox STAR Studios

それでいてオリジナル版の踏襲具合は絶妙で、ヒロインが睡眠薬をやたら盛られるところや、無人島でのイチャイチャなどしっかり『ナイト&デイ』らしさもキープしているところは流石。トム・クルーズとキャメロン・ディアスに代わるリティク・ローシャンとカトリーナ・カイフの力強さとお茶目さは完全にオーバーヒートしていて、本作を“観るエナジードリンク”の域にまで高めている。世界的に大ヒットした「トゥメリ」のダンスシーンでは映画館の座席で静かに黙って観続ける日本式映画鑑賞作法に苦痛を感じるはずだ。

『バンバン!』©Fox STAR Studios

そんな本作の見どころはやはりド派手なアクションで、冒頭のパルクール合戦からオリジナルを越える気満々のテンション。タイ、ギリシャ、ドバイ、チェコを舞台にカー&バイクチェイスはもちろん、市街地をF1マシンでぶっ飛ばしたり、水上スキー銃撃戦などに至っては笑うしかないほどの勢いで、ダニエル・クレイグ版『007』シリーズや『ワイルドスピード』シリーズを意識した、移動しながらのスピード感あふれるマシンアクションが盛りだくさんなのだ。

『バンバン!』©Fox STAR Studios

リメイク先進国インドの着実アップデートを実感

そもそもインドは他国作のリメイクや大胆すぎるオマージュがお盛んで、過去には、香港ノワールの傑作『男たちの挽歌』のリメイク『Aatish: Feel the Fire』(1994年)や、モロに『レザボア・ドッグス』でタランティーノもお気に入りだという『Kaante』(2002年)、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』オマージュの『Action Replayy』(2010年/Netflix配信時の邦題『タイムトラベル・キューピッド』)なんかもあり、韓国の『オールド・ボーイ』は『Zinda』(2006年)、ウォンビンがカッコ良すぎた『アジョシ』は『ロッキーハンサム』(2016年)としてリメイクされている。

最近では、『ラン・ローラ・ラン』のリメイクでNetflixで配信中の『エンドレス・ルーーープ』(2022年)や、トム・ハンクス主演のアカデミー賞作品『フォレスト・ガンプ/一期一会』が『Laal Singh Chaddha』(2022年)としてリメイクされ話題になった。どの作品もオリジナルへのリスペクトは忘れないままインド映画らしさを前面に押し出していて、“ものにする”のが上手すぎるのはお国柄なのだろうか。

ちなみに本作の本国公開は2014年で、『RRR』のヒットのおかげかようやくの日本公開となった。監督のシッダールト・アーナンドは2019年に再びリティク・ローシャン主演でハードなスパイアクション『WAR ウォー!!』を撮っていて、そこでは長回しの肉弾戦や空中戦など、本作では観られない高難易度のアクションにチャレンジしている。

『バンバン!』©Fox STAR Studios

2022年に『RRR』でアクションエンタテインメントを極め、世界を席巻したインド映画。時間を遡る形になるが、本作を観れば着実にアップデートされてきたインド製大作アクション映画の歴史を垣間見ることができるはずだ。

文:市川夕太郎

『バンバン!』は2023年2月10日(金)より全国順次ロードショー

Presented by  SPACEBOX

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『バンバン!』

謎の怪盗ラージヴィ―ル(リティク・ローシャン)と、偶然彼に出会った地味なOL、ハルリーン(カトリーナ・カイフ)が、インドからイギリスに渡った伝説のダイヤ“コヒヌール”をめぐって、残忍な犯罪組織や国際警察と世界を股にかけた争奪戦を繰り広げる中、やがてラージヴィ―ルの真の目的が明らかになる……。

監督:シッダールト・アーナンド
出演:リティック・ローシャン カトリーナ・カイフ
   パワン・マルホトラ ダニー・デンゾンパ

制作年: 2014