あらゆる予想を裏切った 『アバター』はなぜ、日本でも大ヒットしたのか?

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ライター:杉山すぴ豊
あらゆる予想を裏切った 『アバター』はなぜ、日本でも大ヒットしたのか?
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』©︎2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』がついに公開されました。本作についてのレビューや解説・考察記事は様々なメディアで展開されていますが、ここでは前作『アバター』が2009年12月に日本で公開された時どんな感じだったのか、筆者が覚えている限りのことを書いてみたいと思います。

『アバター』
ブルーレイ発売中 /デジタル配信中
©2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン

あらゆる予想を裏切った『アバター』

「ジェームズ・キャメロンがすごいSF映画を3Dで作る」との噂が聞こえてきたのは、2007年ごろだったと思います。その時「負傷した宇宙の海兵隊員がとある惑星でその星の姫と恋に落ち、その星のために戦う」というようなストーリーになると伝えられ、それをいまだかってない3Dで描くと。これを聞いた時、僕は『エイリアン2』的なミリタリーSFアクションだと思っていました。そしてミサイルやら光線が観客席にまで迫ってくるだろう、と。

この予測はほとんど外れました。まず“姫”というのはナヴィ族のネイティリのことですが、いわゆる『スター・ウォーズ』や『ロード・オブ・ザ・リング』的なイメージの“プリンセス”ではなく、部族長の娘です。そして、その星のために戦うというのは、なんと侵略者である地球人と戦うという話でした。

また、なによりも“3D”の解釈が違った。3D=立体映画と思っていた――つまり、画面の向こうから怪物やメカが飛び出してくるとイメージしていたのですが、その逆で、画面の向こうに“奥行き”があるという意味での3Dだったのですね(ちなみに筆者が一番好きな、飛び出す映画=立体映画としての3Dの傑作は『13日の金曜日 PART3』です)。

青い肌のキャラクターは日本で受け入れられない?

完成した『アバター』を観て、期待した“立体SF戦争映画”ではなかったけれど、とてもエモーショナルでいい映画だった、という気持ちで劇場を後にしました。

しかし、この『アバター』公開当時の映画宣伝をした方に話を聞いたら、日本でのプロモーションには相当苦労したそうです。まず“青い顔”というキャラクターがあまり日本では受け入れられないのだと。公開当初は、真剣にナヴィ族のビジュアルを隠すか? というアイデアまであったそうです。しかしながら、逆に早い段階から、この顔、キャラに慣れさせてしまう、という作戦に切り替えた。だから広告のビジュアルもナヴィの顔をどんどん出した。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』©︎2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

さらに頭を悩ませたのが、ストーリーがわかりやすすぎること。要はひねりやドンデン返しがなく、予告編で見当がつく話ということです。事前にマーケティングの調査をしたら、多くの人が「予告編や発表されているあらすじで先が読める」と答えたそうです(笑)。

しかし、当時のプロモーションで来日したプロデュサーのジョン・ランドーが、インタビューで「ジェームズ・キャメロンの『タイタニック』だって、映画を観る前から皆あの船がどうなるか知っているだろう? 先が読めないストーリーだから優れている、というものではない」的に答えていたのが印象的でした。

わかりやすいストーリーだからこそ、皆に理解できて共感を呼ぶ。その代わり、映像は今まで観たことのないものをお届けする――そこで『アバター』は夏くらいから、3Dの環境の整った場所で長めの映像を見せるというプロモーションを展開。誰もがパンドラの世界観にうっとりしたのです。隣にいた映画ライターの「もっとここにいたい」という言葉をよく覚えています。

09年末の劇場、『アバター』最大のライバル作品は……

こうなると“青いキャラ”も“先が読めるストーリー”も気になりません。とにかく、あの異世界パンドラを体験できることがすごい! という口コミが広がっていきます。

そしていよいよ公開が近づいた時、最大のライバルが現れます。日本では2009年の12月19日、人気TVドラマの映画版『のだめカンタービレ 最終楽章 前編』の公開が控えていました。人気ドラマの映画版は大変人気があります。これとの直接対決を避けたのか、それとも全米公開の反響を受けてからのプロモーションの方がいいと判断したのかは分かりませんが、『アバター』はあえて『のだめ』との直接対決を避け、12月23日公開としました。

公開当時、日本でも3Dを強く打ち出したのは、やはりライバルがTVドラマ発の人気コンテンツだっただけに、映画館で観るべき映画らしいコンテンツということを強調する狙いもあったのでしょう。

結果『アバター』は日本でも大ヒット。映画を観るとわかりますが、皆、あのナヴィに共感していきますよね。最初は、日本人には気味悪がられると心配された青い人たちがかわいらしく見えてくる、ギャップ萌えの効果もありました。そしてなにより分かりやすいストーリーだからこそ、この映画が訴えたかったテーマが素直に受け入れられたのかもしれません。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』©︎2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『アバター:WoW』遂に公開! 早くも続編が楽しみ

あれから13年が経ち、続編『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』として帰ってきました!

映画の前半はTV番組「ダーウィンが来た! パンドラの海の仲間たち」といった感じで、後半は『タイタニック』×『ランボー怒りの脱出』(キャメロンが脚本)の様相。しかも海のクリチャーが『殺人魚フライング・キラー』(監督のデビュー作)とキャロン節炸裂で、13年ぶりのパンドラ再訪問を楽しみました。蟹型のモビルスーツがかっこいいので、おもちゃを買うか検討中。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』©︎2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

上手いなと思ったのは、確か地球からパンドラまで6年くらいかかるのです。なので、前作でパンドラを追われた地球人が戻るまでに6年。作戦を1年で立て直してパンドラに戻るまで6年ですから、前作から13年経っているというのも辻褄が合いますね(笑)。キリの父は誰なのか? などと予想しながら、続く『アバター3』での答え合わせも楽しみです。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』©︎2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

文;杉山すぴ豊

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は全国公開中

『アバター』はU-NEXTほか配信中

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『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』

神秘の星パンドラの一員となった元海兵隊員のジェイクは、ナヴィの女性ネイティリと家族を築き、子供たちと平和に暮らしていた。再び人類がパンドラに現れるまでは…。神聖な森を追われた一家は、“海の部族”の元へ身を寄せる。だが、この美しい海辺の楽園にも、侵略の手は迫っていた…

監督:ジェームズ・キャメロン
製作:ジェームズ・キャメロン、ジョン・ランドー

出演:サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、シガーニー・ウィーバー、スティーヴン・ラング

制作年: 2022
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