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MCU史上最もエモい展開に号泣!『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』 ネイモア&アイアンハート解説【ネタバレなし】

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ライター:#杉山すぴ豊
MCU史上最もエモい展開に号泣!『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』 ネイモア&アイアンハート解説【ネタバレなし】
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』©Marvel Studios 2022

ヒーローの喪失を乗り越える

自分のライター人生の中で、初めて涙目で試写室を後にしました。自然と涙と熱いものがこみあげてくる……それが『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』でした。

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』©Marvel Studios 2022

もちろん、これまでも『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)や『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021年)等、心動かされるMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)作品はありました。しかし今回の涙は、それともちょっと違う。そう、チャドウィック・ボーズマンさんのことです。

いや、正確に言えばボーズマンさんへの涙というよりも、彼の死という哀しすぎる現実を受け入れ、乗り越え、この素晴らしい作品を作り上げたスタッフ&キャストへの気持ちだったかもしれません。

ティ・チャラ亡きワカンダを海の超人ネイモアが襲う!

『ワカンダ・フォーエバー』は、チャドウィック・ボーズマンさんが演じていたティ・チャラことブラックパンサーが突然この世を去り、残された者たちとワカンダの運命を描きます。

マーベルはティ・チャラに対し代役もCG等で蘇らせることもしない、と明言していました。したがってボーズマンさんの死去が、そのまま映画のティ・チャラの逝去と重なるという映画になっています。ただし(ここ言葉選びが難しいですが)、決してボーズマンさんの死を“利用した”映画にはなってはいません。主演俳優の不在と主人公の不在という事情を踏まえながら、堂々たる続編に仕上がっているのです。

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』©Marvel Studios 2022

ティ・チャラという強いリーダーと守護神を失ったワカンダ国。これを機会とばかりに貴重資源ヴィブラ二ウムをめぐって様々な国家が干渉してきます。さらに海からネイモアという超人が率いる海底王国タロカンがワカンダに迫ってきます。

事態は複雑化し、ついにワカンダとタロカンの間に戦争が!? ――国家存亡の危機、その時ティ・チャラの母で女王のラモンダ、ティ・チャラの妹で王女シュリのとった行動とは……?『ワカンダ・フォーエバー』は、運命に翻弄される母と娘のストーリーなのです。

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』©Marvel Studios 2022

 

ヒーローの不在を描く異色作かつ超アクション・エンタメ作

そして前作の『ブラックパンサー』(2018年)が、善い者のヒーローが悪党を倒す、という単純な話でなかったように、本作も“善の国ワカンダ VS 悪の帝国タロカン”というわけではない。

ネイモアとシュリたちのそれぞれの選択と行動は、自国の民を守るためのものです。さらにワカンダのあるアフリカも、タロカンのルーツである民族も、西側諸国によって奴隷として扱われた暗い過去がある。こういった背景も、この2つの国の在り方に影響しています。

このような大きな話に加え、大事な息子であり、兄を失った(救えなかった)という思いが母と娘を追い詰める。

そう、MCUはヒーロー映画ですが、この映画に主役となるヒーローは出てこない。ヒーロー不在で混乱する世界の中で、ヒーローを失った人々がどう生きるか、という異色作なのです。

そう書くと、暗く重く聞こえるかもしれませんが、そこはMCU! 魅力的なキャラたちが暴れ回る、アクション・エンターテインメントになっています。

前作から人気の、オコエ率いる無敵の親衛隊ドーラ・ミラージュ VS タロカンの戦い! そして空を飛ぶことのできるネイモアとワカンダ空軍との空中戦! 『ブラックパンサー』は地上戦でしたが、今回は海と空の大バトルが加わります。さらに新ヒーロー、アイアンハートが颯爽と登場です。

新参戦ネイモア&アイアンハートと今後のアッセンブル観測

ここでネイモアとアイアンハートについて解説しましょう。

ネイモアは1939年にコミックでデビューしました。マーベル・ヒーローの中でも最古参の一人です。コミックでは海底王国アトランティスの王という設定でしたが、それを除けば、ほぼ本作で描かれているような性格と能力を持った超人です。ヒーローとして活躍することもあるのですが、彼はあくまで海底王国/自分の民たちが大事であり、そのために人類と敵対することもある。したがって、時にヴィランであるわけです。

MCUが始まって何度か登場の噂や期待が囁かれましたが、今回、満を持してのスクリーン・デビューです。海や水中の特撮は手間がかかるので、ある程度視覚効果の技術がそろわないと表現できなかったかもしれませんね。

実はMCUではネイモア、というか海底人の存在は示唆されていて、『アイアンマン2』(2010年)ではニック・フューリーが世界中を監視していると思われるモニターの画面で、海をチェックされていることが示唆されています。ファンの間では、これはきっとネイモアと海底王国にシールドが気付いていた証では? と話題になっていました。

さらに『アベンジャーズ/エンドゲーム』において、オコエが海の異変(地震)について言及するセリフがあり、これもまたワカンダが「海には何かある」と知っていたのではないか? との憶測を呼びました。

アイアンハートことリリ・ウィリアムスがコミックに現れたのは2016年(リリ・ウィリアムスとしての登場。アイアンハートになるのは2017年)。彼女はアイアンマンの意志を継ぐ若きヒーローとして活躍します。

誰が新ブラックパンサーを導くのか? 深まるドラマとの連動

MCUは、ミズ・マーベルやケイト・ビショップ(2代目ホークアイ)、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022年)のアメリカ・チャペス、さらに2023年2月公開の『アントマン&ワスプ:クアントマニア』のアントマンことスコットの娘がヒーローとして活躍することも伝えられており、アイアンハートがここに加わることで新世代ヒーローたちがアッセンブルし始めていますね。

『ワカンダ・フォーエバー』において、こうした新旧ヒーローが揃ってMCUデビューするというのも嬉しい。なおアイアンハートを主役にしたMCUのドラマ・シリーズも2023年の配信が決定していて、MCUにおける映画と配信ドラマのリンクはますます強まっていきます。先ほど“ヒーロー不在のヒーロー映画”と書きましたが、本作はネイモアとアイアンハート、そして新ブラックパンサーの大活躍で楽しませてくれます。

壮大なスケール、スーパーアクションでありながらも、実は哀しみを乗り越え立ちあがろうとする母と娘の人間ドラマ……実にMCUらしい。ちなみに僕が劇中、おお! と唸ったのは、新ブラックパンサーを誰が導くのか? がわかった時でした。

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』©Marvel Studios 2022

エンド・クレジットのサプライズと余韻にも心動かされること必至。皆さんもきっと涙すると思います。けれど新生ブラックパンサーの誕生を心から祝いたくなるでしょう。観終わった後、心の中で「ワカンダ・フォーエバー!」と叫んでください。

文:杉山すぴ豊

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は2022年11月11日(金)より日米同時公開

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『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』

国王とヒーロー、2つの顔を持つティ・チャラを失ったワカンダ国に海の帝国の脅威が迫る。ティ・チャラの妹であり天才科学者のシュリたちは、この危機にどう立ち向かうのか。そして、新たな希望となるブラックパンサーを受け継ぐ者は誰なのか…。

監督:ライアン・クーグラー
脚本:ライアン・クーグラー ジョー・ロバート・コール

出演:レティーシャ・ライト ルピタ・ニョンゴ
   ダナイ・グリラ ウィンストン・デューク
   フローレンス・カサンバ ドミニク・ソーン
   ミカエラ・コール テノッチ・ウエルタ
   マーティン・フリーマン アンジェラ・バセット

制作年: 2022