『マトリックス』製作の裏話! ネオ役候補はキアヌじゃなかった? 音声解説の枠を超えた番組「副音声でムービー・トーク!」

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ライター:多田遠志
『マトリックス』製作の裏話! ネオ役候補はキアヌじゃなかった? 音声解説の枠を超えた番組「副音声でムービー・トーク!」
© 1999 Village Roadshow Films (BVI) Limited. © 1999 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

音声解説という文化

DVDやブルーレイに多重音声が収録可能されるようになってから、すっかりオーディオコメンタリー(音声解説)というものが定着した印象がある。その多くは出演した俳優や、監督・スタッフなどが映画本編を見ながら撮影時の裏話や思い出を語る、といった内容だ。

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発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント

海外では俳優や監督だけでなく、脚本家やカメラマンなど各部門の関係者ごとに個別に音声解説を収録し、それぞれの立場からの発言に新たな発見があったりする。だが日本でブルーレイなどが発売される際、権利関係等のコスト増からか、そういった音声解説がカットされることも少なくないのが残念なところだ。

監督の音声解説は、監督ごとの自作に対する姿勢が良くわかる物でもある。デヴィッド・フィンチャーが『セブン』(1995年)や『ファイト・クラブ』(1999年)など頻繁に解説しているのに対し、『スカーフェイス』(1983年)などのブライアン・デパルマ作品には「自分の伝えたいものは映画で語り尽くしている」とのことで音声解説はない……といったように、それぞれの考え方の違いも浮き彫りになる。

作品によっては面白い話術が楽しめるものもあり、『リーサル・ウエポン』(1987年)のリチャード・ドナー監督は「このころはワシの黄金期だった……昔はよかった……」などと終始グチっていたり、パッケージに「世界で最も面白いコメンタリー!」というコピーのついた『A Night to Dismember』(原題:1983年)などは、ドリス・ウィッシュマン監督が昔撮ったヒドいホラーをサカナに、撮影監督だったというお祖父ちゃん相手に全編にわたって「うるさいよ!」「そんな昔のこと、あたしゃ覚えてないよ!」と映画そっちのけで口喧嘩を続けるという、前代未聞の物まで存在している。

日本では、スウェーデンのスリラー『痴漢ドワーフ』(1972年)で、作家の中原昌也氏が本編と関係のないトークを繰り広げ、ダジャレも飛び出す抱腹絶倒の音声解説を付けているので、ぜひ探してみてほしい。

また、昨今ではディスクに収録されたものだけではなく、話者と視聴者が同時にDVDをプレイ、ないしはTVなどでオンエアされるものを見ながらコメントを聞くことができる独自コンテンツもポピュラーになってきた。タブレットやスマホなど映画の画面と別モニターを用いつつ“ながら鑑賞”できる、新たな音声解説の形態だろう。さらには視聴者からのコメントと双方向のやりとりをしながらの動画配信など、音声解説文化はアップグレードを繰り返し続いているといえよう。

音声解説の枠を超えた番組『副音声でムービー・トーク!』

我々「映画木っ端微塵」(高橋ターヤン、てらさわホーク、多田遠志)が古今東西の映画に音声解説をつける、CS映画専門チャンネル ムービープラスで放送中の番組『副音声でムービー・トーク!』も、始まってもうすぐ1年を迎える。

前述の通り、大抵の音声解説は関係者が語るのが普通だ。だがご存じの通り、木っ端微塵のメンバー3人はオンエア作品には縁もゆかりもない。実は今までにも、無関係の人間の音声解説という物は存在はしていた。かつては古いSF映画に地球文化を学ぶ教材として、映画を見ている宇宙人たちがツッコミを入れていく番組『ミステリー・サイエンス・シアター3000』(1988年ほか)などがあった。しかしそれらの多くは、昔のローテクな映画の演出や展開にツッコミを入れていくものである。

「副音声でムービー・トーク!」は今のところ『シャイニング』(1980年)や『エクソシスト』(1973年)など、いわゆる名作を多く扱っている。恐れ多いことであるが、それは逆に、制作者ではないからこそ観客目線の視点や気づきがある、とも言えるかもしれない。もちろん、製作秘話などは網羅されている上で、である。

『シャイニング』を巡る原作者スティーヴン・キングと監督スタンリー・キューブリックの対立など、公式ではなかなか扱いづらい話題に言及できるという強みもあるかもしれない。映像作品自体に留まらず、そこから起こった事件や社会現象、映画のゲーム化作品などにまで話題は及ぶ。その辺の幅の広さ、場合によっては脱線具合を楽しんでもらいたい。

また、『エクソシスト』ではウィリアム・フリードキン、『イレイザー』(1996年)『コブラ』(1986年)ではシュワとスタローンなど、監督、役者たちの裏話が該当作品だけに留まらず、彼らの他作品やパーソナルなエピソードにも触れるという評伝的な音声解説になっているようにも思う。

スタッフ込みの打ち合わせはしているものの、映画本編について何の話を収録の時に誰が担当するか、というあたりは打ち合わせていないという、実はフリーセッション要素もある副音声である。そのため我々にもどこへ話が転がるかわからないところがあり、逆にそれが映画本編の新たな要素の発見や気づき、独特のグルーヴ感を生んだりしているのかもしれない。

脱線上等! 解説番組『◆副音声でムービー・トーク!◆マトリックス』からトリビア紹介

さて、そんな音声解説を生み出した媒体、映画DVDがリリースされた当時の大ヒット商品として真っ先に挙げられるのが『マトリックス』(1999年)だろう。当時、DVD再生機能も搭載しているプレイステーション2とともに本作のDVDが売れたことを記憶している人も多いと思う。キアヌ・リーヴスはすでに『スピード』(1995年)などで有名ではあったが、彼の人気を決定づけたのは間違いなく本作だ。12月20日、28日の放送回で『マトリックス』を取り上げる『副音声でムービー・トーク!』も様々な情報が満載だが、その一部を紹介したい。

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当初、ネオ役の候補にはジョニー・デップやブラッド・ピットが挙がっており、モーフィアス役の候補にはチョウ・ユンファが挙がっていた、といったキャスティング秘話から、もともとウォシャウスキー監督はこの企画をコミックの原作として考えていたため、全てのシーンが絵コンテ化してあった、などの制作秘話。そして『攻殻機動隊』(1995年)、『AKIRA』(1988年)など日本のアニメの影響が大きいことは有名だが、実際にプロデューサーにアニメを見せて、「こういうのを実写でやりたい」と直訴したのだそうだ。

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アクションシーンはトレーニングや準備に6ヶ月もかけ、役者たちは骨折などの怪我を負いながらカンフーの練習に取り組んでいた。モーフィアスとのシーンでネオが鼻をこするのはもちろんブルース・リーからの引用だが、これはカンフーマニアでもあるキアヌのアドリブ。さらに、エレベーターロビーでの銃撃戦後、壁が崩れるのは意図したものではなく偶然で、結果的に良いシーンが撮れたため採用した……などなど、映画製作は計算と偶然の組み合わせであることが分かる。

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他作品や俳優にまで及ぶ脱線トークがより深い理解を促す

『マトリックス』という映画の印象を決定づけた有名な“バレットタイム”は、その撮影誕生秘話も話題に上るが、CGだらけに見えて実は特殊効果は映画全体で20%ほどで、セットやクリーチャーなども多くは実際に制作している。『マトリックス』を象徴するグリーンのコード文字には日本語のカタカナが含まれているが、これにはある驚きの理由があった。本来の脚本では別バージョンのエンディングが5パターン用意されていた……といった意外な裏話も満載。元の脚本はもっと筋肉アクションだったが、それをいかにスタイリッシュに抑えたものに変えていったかなど、世界観の構築も語られる。

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機械に支配された暗い未来や、レジスタンス的な人々、その戦いを終わらせる救世主としての主人公に、姿を変容させる敵(エージェント・スミス)など、『ターミネーター』シリーズ(1984年~)、特に『ターミネーター2』(Tー1000)との類似性についても語られるが、これは他ではまず飛び出さない話題だろう。また、キアヌが『X-MEN』のウルヴァリン役の候補だったらしい、などと他作品での「もしも」にまで話題は及ぶ。 もちろん『マトリックス』シリーズ最新作『レザレクションズ』についても言及する。

動画配信サイト等によって「この作品が好きなら◯◯もおすすめ」という機能がすっかりお馴染みになった今、『副音声でムービー・トーク!』では1本見るだけでおすすめ作品がぞろぞろ列挙される。これは淀川長治氏の「みなさん、もっともっと映画を見ましょうね〜」という意志を継いだ、木っ端微塵メンバーの気持ちの表れであると言えよう。 様々な映画作品への新たな扉を「副音声でムービー・トーク!」が開けるのであれば、それにまさる喜びはない。

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文:多田遠志

『マトリックス』シリーズ3作および「副音声でムービー・トーク!」はCS映画専門チャンネル ムービープラス「『マトリックス』シリーズ一挙放送!」で2021年12月放送

『マトリックス レザレクションズ』は2021年12月17日(金)より全国公開

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