細野晴臣のNY&LA公演に密着!『SAYONARA AMERICA』監督・佐渡岳利インタビュー

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
ライター:石津文子
細野晴臣のNY&LA公演に密着!『SAYONARA AMERICA』監督・佐渡岳利インタビュー
『SAYONARA AMERICA』ⓒ2021“HARUOMI HOSONO SAYONARA AMERICA”FILM PARTNERS

細野晴臣、ライブinアメリカ

音楽家、細野晴臣のライブ・ドキュメンタリー映画『SAYONARA AMERICA』が2021年11月12日(金)より公開中だ。ライブは2019年にアメリカのニューヨークとロサンゼルスで行われたもの。誰もマスクをしていない。この後、自分たちの自由が制限されるとは夢にも思わず、みんな細野の音楽を楽しんでいる。細野も自由に軽やかに、愛するアメリカン・ミュージックを歌い、ギターを弾く。自由の国アメリカで。

『SAYONARA AMERICA』ⓒ2021“HARUOMI HOSONO SAYONARA AMERICA”FILM PARTNERS

2019年は細野晴臣にとって特別な年だった。音楽活動50年を記念して、コンサートはもちろん、映画『NO SMOKING』公開と展覧会「細野観光」が開催された。あれから2年。新型コロナウイルスによって世界は一変した。音楽、そしてエンターテインメントを取り巻く環境も。それでも、細野の音楽の軽やかさは変わらない。また11月初めには、盟友・松本隆の作詞家50周年ライブ「風街ODYSSEY」で“はっぴいえんど“のメンバーとして、名曲「風をあつめて」を歌う、唯一無二の幸福な音楽家、細野晴臣の姿がそこにあった。

『NO SMOKING』に続いて『SAYONARA AMERICA』を監督したのは、佐渡岳利。NHKエンタープライズのエグゼクティブ・プロデューサーとして「紅白歌合戦」をはじめ多くの音楽番組を手がけてきた佐渡に、細野晴臣の音楽と映画について話を聞いた。

佐渡岳利 監督

「In Memories of No-Masking World(マスクがなかった世界を偲んで)」

―『NO SMOKING』と『SAYONARA AMERICA』は、最初から二本撮る予定だったのですか?

『NO SMOKING』を作るにあたって、海外のライブも撮影することになったんです。でも『NO SMOKING』は細野さんの生い立ちからその軌跡を描くので、それほどライブのシーンを多く入れられないということも、最初からわかっていて。それで、せっかくならライブの映像作品も残したいね、という話が当時からあったんです。内容がすごくよかったですから。

それで2021年になって展覧会「細野観光」の大阪での巡回展が決まって、同じ頃にライブもきちんとまとめて映画にしよう、という流れでした。やはり『NO SMOKING』を公開した時に、大画面、大音量で観る、ということの価値をみんなで共有できた。そこからライブ映画にしたいという感じになって。細野さんも、そうなったらいいよね、という感じでした。

『SAYONARA AMERICA』ⓒ2021“HARUOMI HOSONO SAYONARA AMERICA”FILM PARTNERS

―細野さんがNYとLAでライブを行ったのは2019年の5月と6月。『NO SMOKING』が2019年11月に公開され、その後すぐにコロナ禍が起こりました。この2年で、記憶すら分断されてしまった感があります。

『SAYONARA AMERICA』の製作に本格的に入る時には、コロナ禍の真っ只中でしたので、やはりそこに触れないわけにはいかないと思いました。入れなかったら、こいつ何も考えていないのか? ってことになってしまいますよね。

―冒頭、細野さんがスタジオの屋上にいるシーンは、細野さんご自身が撮られたと聞きました。監督はその場にはいなかったのですか?

細野さんご自身で撮っていて、僕もいませんでした。映画のタイトルも、冒頭の、“In Memories of No-Masking World”(マスクがなかった世界を偲んで)っていうフレーズも、細野さんからのアイディアで。あの映像は2021年の夏ですが、「ここは僕が何か言わないといけないな」と細野さんは最初からおっしゃっていて。撮ってもらうことは決まっていましたが、いつ撮ったかは、僕も後から知りました。ご自身のタイミングで撮ってもらった感じですね。「あ、今だ」っていうことって大事ですから。

『SAYONARA AMERICA』ⓒ2021“HARUOMI HOSONO SAYONARA AMERICA”FILM PARTNERS

―監督はNHKの「細野晴臣イエローマジックショー」はじめ、長く細野さんとお仕事をご一緒されていますが、細野さんにはそういう“よきタイミング“を大切にしている感じがあるのでしょうか?

やっぱり「ここはちょっと頑張ろうかな」というときと、「んー、今じゃないなー」というときがあって。そのタイミングがいつやって来るのかは僕にはわからないんですが(笑)。そもそも撮影されることがあまりお好きではないので(笑)、「今日もお邪魔します……」という感じで撮らせていただいてます。なんとなく、あまりのってないな、というときはすーっと僕たちもいなくなる感じで。

でも、一定の距離を取ろうとしている、というのとも違うんです。細野さんが僕らを遠ざけるようなところは全然なくって、なんとなくそうした方がいいな、と感じる時がある、っていうか。細野さんからは、もう撮らないで、ということはあまりないんです。

佐渡岳利 監督

「アメリカの古い時代の音楽をカバーしても聴かせてしまうすごさ」

―アメリカでのライブを番組ではなく映画にする、ということにあたって、何か作る上での違いはありましたか?

テレビは不特定多数の方が観るものですが、映画の場合、細野さんを全く知らない方が劇場に観に来る可能性は極めて少ないと思うんです。誘われて来る方はいるでしょうが。テレビだと、ファン以外の人も観る可能性を考えるから、前提から始めることが多い。例えば、細野さんはこういう経歴でこんなことをしてきて……とか。でも映画でそれをやると、そんなこと常識じゃないですか、もっと奥がみたいな……みたいなことになると思うんです。

―とても説明的になってしまうわけですね。

そうです。例えば外国の音楽ドキュメンタリー、ボブ・ディランのものとか色々と見ましたけど、結構知らないとわからないことも平気でやっているんですよ。あんまりわかりやす過ぎて、ミステリアスな部分が消えちゃうのもどうかと思うので、テレビより説明しすぎないようにはしましたね。

『SAYONARA AMERICA』ⓒ2021“HARUOMI HOSONO SAYONARA AMERICA”FILM PARTNERS

―ショーン・レノンも登場しますが、彼はライブ会場で何をしていたんでしょう?

客入れの時にDJをやっていたんです。ああいうのも、テレビだと100%説明していると思いますよ(笑)。ショーンと細野さんは仲が良くて、ニューヨークの会場でDJをやってくれた、ということをきちんと入れると思う。でも映画では、二人の関係性は説明しなくても伝わるんじゃないかな、と何も入れていません。奥ゆかしさの良さというか、まあ、どこが正解かはわからないんですが。

―映画を観るとほぼ現地のお客さんで満席になっていて、細野さん、すごいなあと思いました。NYのグラマシー・シアターは行ったことがありますが、意外と客席数があるんですよね。

結構キャパありますよね。ちなみに日本のアーティストの海外公演は、通常、現地の日本の方や日本からきたファンの方が結構多かったりするんですが、今回はほぼ現地のアメリカの方々だったので、これは驚きましたね。細野さんって本当に受け入れられているんだな、聴かれているんだな、と実感しましたね。

―NYもLAも劇場が満員でした。どうやってお客さんは細野さんを知ったんでしょう?

若い方は圧倒的にYouTubeですね。話を聞いてみたら。YMO等がきっかけで、なんだろう、って思って見て、そこからdigしていって、こんなすごい人がいたんだってはまって、細野さんのファンになる、という感じです。上の世代の昔からのファンの方は、最初はレコードがきっかけ。昔はNYにはいろんな個性的なレコード屋さんがあって、そういうところへ行ってみなさん色々調べて行き着いた、という感じでしょうね。今はほとんどなくなってしまいましたが。

―寂しいですね。そういう意味でも『SAYONARA AMERICA』という感じがします。佐渡監督にとって、細野さんは音楽も含めて、どんな存在ですか?

いろんな全然別のスタイルを平気でやるのが、すごいと思うんです。スタイルの変更ってそれまでのファンを失ったりする可能性もあるけど、細野さんは、お構いなしにどんどんやる。近年はアメリカのブギウギをカバーしていますが、自分の音楽として昇華しているんです。細野さんはご自身がそれをやるべきだと思ったから、というシンプルな理由でやっていて、何にも縛られていない。その凄さ。アメリカ人に対して、日本人がアメリカの古い時代の音楽をやっても、聴かせてしまう。現地のお客さんも、おそらく「え、細野さんブギウギなの?」って最初は戸惑ったと思うんですが、ガンガンに楽しんでいました。素晴らしいですよ。

『SAYONARA AMERICA』ⓒ2021“HARUOMI HOSONO SAYONARA AMERICA”FILM PARTNERS

「今後、私たちは音楽をどうやって享受していくんだろう」

―コロナ禍は終息しつつあると信じたいですが、まだわかりません。今この時期に『SAYONARA AMERICA』を観る意味というのを、監督はどうお考えですか?

日本から海外に行くことも、海外のアーティストが日本に来ることも、今までのようにはいかないかもしれない。今後、音楽やエンターテインメントの楽しみ方も変わらざるを得ないですよね。そういう時に、いみじくもこの映画には『SAYONARA AMERICA』というタイトルがついている。本当に「サヨナラ」なのか……今後、私たちは音楽をどうやって享受していくのだろうか……そういうことを考えるきっかけになったら良いなと思いますね。

答えは特にないと思うんです。まだどうなるかわからないから。でも、ふと立ち止まって考えるよすがになったら良いなと思います。

佐渡岳利 監督

――映画のタイトルは、はっぴいえんどの1973年の曲「さよならアメリカ さよならニッポン」を思い起こさせるが、果たして細野は何に「さよなら」を言おうとしているのか。幸福な音楽を聴きつつ、ちょっと耳を澄ましてみたい。

取材・文:石津文子

『SAYONARA AMERICA』は2021年11月12日(金)よりシネスイッチ銀座、シネクイント、大阪ステーションシティシネマほか全国順次公開中

細野晴臣デビュー50周年記念展「細野観光 1969 – 2021 in 大阪」はグランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボにて2021年11月12日(金)から12月7日(火)まで開催

細野晴臣デビュー50 周年記念展「細野観光 1969 – 2021」

Share On
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

『SAYONARA AMERICA』

幸福感と高揚感に満ちた“細野晴臣”集大成のライブ・ドキュメンタリー

音楽活動50周年を迎えてから2年、世界は一変、突然現れたウィルスにより、それまで普通だったことが、普通でなくなり、音楽も映画も舞台も、全てのエンターテインメントを家で楽しむことが余儀なくされる日々が普通になってしまった。ライブは映像として伝えられ、人々が同じ空間で音楽を楽しんでいたのは過去の出来事。そんな自由が制限された世界だからこそ、”In Memories of No-Masking World”(マスクがなかった世界を偲んで)、 2019年アメリカ、ニューヨークとロサンゼルスで開催された“集大成”となるライブを記録する、幸福感と高揚感に満ちたライブ・ドキュメンタリーが完成した。アメリカの舞台で軽やかに、自由に、ギターを奏で、歌う細野晴臣、彼は今何を思い、語るのか—。17曲の楽曲で彩られるライブを映画館で観るのも今の時代だからこその“楽しみ”なのである。

制作年: 2021
監督:
音楽:
出演:

PR

  • BANGER!!!
  • 映画
  • 細野晴臣のNY&LA公演に密着!『SAYONARA AMERICA』監督・佐渡岳利インタビュー