岡田准一ありきの新選組チャンバラ映画! 司馬遼太郎原作『燃えよ剣』は大人のための激渋アクション娯楽劇

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ライター:椎名基樹
岡田准一ありきの新選組チャンバラ映画! 司馬遼太郎原作『燃えよ剣』は大人のための激渋アクション娯楽劇
『燃えよ剣』©2020「燃えよ剣」製作委員会

岡田准一という存在

現在、日本の映画制作の中心は漫画の実写化である。毎日のように大量の漫画が生産されていて、原作にはこと欠かないかもしれない。しかし漫画の実写化は、非常に難しい部分があると思う。特にファンタジー要素が強い原作の場合、失笑ものの作品が出来上がってしまう場合がある。

漫画の実写作品は、よく「原作に忠実な」と評される。それは褒め言葉であり「原作ファンの夢を壊さない」という意味合だ。しかし、それこそが失笑もののトンデモ作品が出来上がる原因でもある。漫画表現における髪型や服装だけ考えても、それを実写化したら非常に違和感があるだろうことは、容易に想像がつく。必然的に漫画の実写化は「ガラパゴス」で「クールジャパン」な作品になりがちである。

岡田准一が主演した『ザ・ファブル』シリーズ(2019年/2021年)が素晴らしい出来栄えだった。『ザ・ファブル』は漫画原作であるが、ファンタジー要素がない現代劇である。この映画は、世界のエンターテインメント作品と同じ土俵で勝負しているし、邦画の現在の力量を胸を張って正々堂々と提示しているように感じる。そして、アクション俳優・岡田准一ありきで作られているとすら思えるのだ。

岡田准一は、体を鍛え、格闘技に精通し、目指すべき俳優像に自分自身を作り込んだ。アクションシーンを演じることができて、そこに自分のアイデアを持つ俳優は、現在の日本映画界では彼しかいないだろう。岡田准一が出演した過去作品を見渡しても「マンガチック」な作品は見当たらない。彼がいつからアクション俳優の道を目指し、出演作を選んでいったのかわからないが、その慧眼に感服する。今では日本映画界の救世主だ。大人のためのアクション娯楽作品は、岡田准一の独壇場である。

そこで『燃えよ剣』である。原作となる、新選組の土方歳三を描いた司馬遼太郎の小説は国民的作品と言われているが、1966年に映画化され一大ブームとなった。日本映画界の王道娯楽路線を担っている岡田准一が、演じるべくして演じた作品と言えるかもしれない。

喧嘩そのものが目標で喧嘩をする男、土方歳三

今の若者にどれだけ需要があるかはわからないが、日本で娯楽作品を作るならば「やっぱり時代劇だろう」と私は思う。前時代の武士世界は、非日常的でありながら、すんなりと受け入れることができる。撮影もしやすい。江戸時代の街並みのオープンセットが手軽に利用できて、寺院仏閣や木造の橋など、画になる建築物が多く残っている。実際、本作品にも非常に美しい日本の風景が描かれている。

『燃えよ剣』©2020「燃えよ剣」製作委員会

そして何より“チャンバラ”が撮れる。映画のバトルシーンは銃撃戦よりも、体をぶつけ合ってタイマン勝負する剣劇のほうが盛り上がる。演者の華麗な身のこなし、刃から飛び散る火花、立ち上がる血飛沫……チャンバラシーンには華がある。『スター・ウォーズ』シリーズ(1977年~)だって剣劇だ。ちなみに『燃えよ剣』のエンドロールには「土方歳三の殺陣」として、岡田准一の名前がクレジットされている。

本作品は、歴史的事柄が非常に淡々と描かれているが、娯楽作品としての魅力も失っていない。その理由として、チャンバラシーンの迫力とともに、土方歳三のキャラクターが魅力的であることが挙げられる。司馬遼太郎は、土方歳三を「芸術家が芸術そのものが目標であるように、喧嘩そのものが目標で喧嘩をしている」と評した。これといった政治思想も持たず、さながら芸術的興奮を求めるように戦い続けたその生き様を、「喧嘩師」と形容したのだ。

『燃えよ剣』©2020「燃えよ剣」製作委員会

土方歳三の思想をあえて述べるとすれば「いちど主君と決めた人間を何があっても裏切らない」ということだけである。そんな単純明快さが物語に爽快感を、そして頑固者の悲哀が共感性を生んでいる。また新選組の仕事が「暗殺」であることも、作品に妖しい魅力を加えている。味方である剣士・芹沢鴨を、軍規に背いたために暗殺するシーンは、残酷なディテールで描かれていて印象的だった。

『燃えよ剣』©2020「燃えよ剣」製作委員会

大作であり、多くの個性的な俳優が出演しており、それぞれ競い合うように魅力的な演技をしている。その中から誰か1人挙げるとすれば、前述した芹沢鴨を演じた伊藤英明のインパクトが大きかった。禍々しさ、ヤバさ、色気がある。これは、優等生な岡田准一では出せない個性だろう。

『燃えよ剣』©2020「燃えよ剣」製作委員会

最後に、本作品で土方歳三がタイマン勝負した、チャンバラシーンBEST3を発表して終わりにしたい。

第3位:vs藤堂平助(はんにゃ・金田哲)
第2位:vs岡田以蔵(村上虹郎)
第1位:vs芹沢鴨(伊藤英明)

やっぱり芹沢鴨、かっこいいな。

文:椎名基樹

『燃えよ剣』は2021年10月15日(金)より全国公開

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『燃えよ剣』

江戸時代末期。黒船が来航し開国を要求した。幕府の権力を回復させ外国から日本を守る佐幕派と、天皇を中心に新政権を目指す倒幕派の対立が深まりつつあった激動の時代-。 武州多摩の“バラガキ“だった土方歳三は、「武士になる」という熱い夢を胸に、近藤勇、沖田総司ら同志と共に京都へ向かう。徳川幕府の後ろ盾のもと、芹沢鴨を局長に擁し、市中を警護する新選組を結成。土方は副長として類まれな手腕と厳しい法度で組織を統率し、新選組は倒幕派勢力の制圧に八面六臂の活躍を見せる。お雪と運命的に出会い惹かれあう土方だったが時流は倒幕へと傾いていき……。

制作年: 2021
監督:
出演:
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