【第46回トロント映画祭】『デューン/砂の惑星』からエドガー・ライト新作、意外なオスカー本命作など注目映画集結!

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ライター:斉藤博昭
【第46回トロント映画祭】『デューン/砂の惑星』からエドガー・ライト新作、意外なオスカー本命作など注目映画集結!
『ディア・エヴァン.ハンセン』01 Courtesy of TIFF

トロント最高賞=オスカー受賞本命

2021年9月9日から9月18日の9日間にわたって第46回トロント国際映画祭が開催された。2020年に続き、新型コロナウイルスの影響で映画祭への参加も実地とオンラインの2つの選択肢を用意。ただ、トロントのワクチン接種率などで状況が改善し始めたこともあって、プログラム数やゲストの参加は、2年前の通常の規模に近くなった。

それでもプレスが現地へ行くのは、まだかなりハードルが高く、海外から参加したジャーナリストは限定的。会期中、48時間ごとのPCR検査などが要求されるので、トロント在住でも「面倒なのでオンライン参加にする」と決めたジャーナリストもいたと聞く。本格的な復活は2022年以降だろう。

とはいえトロントは、これからアカデミー賞に向けた秀作がいくつも上映されるので今年も注目度は高い。最高賞である観客賞(ピプルズ・チョイス・アワード)を受賞すれば、アカデミー賞への道が開けたも同然だからだ。観客賞受賞作を2020年からさかのぼれば、『ノマドランド』(2020年)『ジョジョ・ラビット』(2019年)『グリーンブック』(2018年)『スリー・ビルボード』(2017年)『ラ・ラ・ランド』(2016年)……と、その後アカデミー賞作品賞受賞またはノミネートにつながっている。

ケネス・ブラナー監督最新作が賞レース本命に躍り出る

その観客賞、2021年は「本命不在」と言われていた。2020年の『ノマドランド』は、直前のヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞しての勢いだったが、2021年の同賞受賞作『Happening(英題)』はトロントでの上映はナシ。ヴェネチアで監督賞受賞の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(Netflixで2021年11月より独占配信)はトロントでも上映された。カンヌ国際映画祭のパルムドール『Titane(原題)』は、トロントではミッドナイト・マッドネス部門で上映。キャデラック(車)を相手に妊娠するホラーテイストも濃厚な作品なので、このミッドナイト・マッドネス部門で観客賞を受賞した。

『Belfast』01 Courtesy of TIFF

そんな本命不在のなか、メインの観客賞に輝いたのはケネス・ブラナー監督の『Belfast(原題)』だった。1960年代後半、宗教対立が激化する北アイルランド・ベルファストで、ひとつの家族を少年の目線で描く、主人公の少年にブラナーが自身を投影した半自伝的作品。シリアスなイメージだが、ベルファスト出身のヴァン・モリソンのロックがガンガン流れ、モノクロの映像美、軽やかな展開で、ブラナーの演出の技が冴えわたる。この観客賞受賞で、『Belfast』はアカデミー賞までの賞レースで一気に主役の一本に躍り出た。

やっぱり最注目はドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『DUNE/デューン 砂の惑星』!?

ジェーン・カンピオンの『パワー・オブ・ザ・ドッグ』も観客賞3位だったので、こちらも賞レースをにぎわせそう(2年前は『パラサイト 半地下の家族』が3位だった)。賞レースでいえば『The Survivor(原題)』で、アウシュヴィッツの収容所でボクシングの試合を強いられる囚人役のベン・フォスターの演技がスゴすぎて、主演男優賞の噂も出始めている。

『The Survivor』01 Courtesy of TIFF

観客賞以外で最も注目が集まった作品といえば、やはり『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021年10月15日より公開)だろう。トロントのIMAXシアターで異例の3回上映が行われたほか、モントリオールのIMAXでも上映。特大スケールの映像で多くの観客を酔わせた。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督はカナダ出身ということもあり、やはり『DUNE』はトロントでは特別な作品なのだろう。『DUNE』は1984年のデヴィッド・リンチ監督による映画化が賛否両論だったが、今回はヴェネチア、トロントでお披露目され、絶賛評が多い。サンドワーム(モンスター)や宇宙船などに畏怖を感じさせる、ヴィルヌーヴの映像センスは誰もが認めることだろう。ヴィルヌーヴは今年のトロントで、ジェシカ・チャステイン、ベネディクト・カンバーバッチらとともにトリュビュート・アワード(名誉賞のようなもの)を受賞。映画祭にも出席した。

『DUNE/デューン 砂の惑星』01 Courtesy of TIFF

エドガー・ライト監督『ラストナイト・イン・ソーホー』評判上々!

もうひとつ、今年のトロントで映画ファンの期待を高めたのは、『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021年12月公開)。前作『ベイビー・ドライバー』(2017年)が圧倒的な支持を受けたエドガー・ライト監督作だ。ファッションデザイナーを夢見てロンドンの中心地・ソーホーに来た主人公がアパートで眠りにつくと、1960年代のソーホーで別の女性の姿になって奇妙な体験をする。夢なのか? 超常現象なのか? 音楽やファッションの使い方も含め、過去のどんな映画とも違うテイストで、こちらも評判が上々。

『ラストタイム・イン・ソーホー』01 Courtesy of TIFF

音楽といえば、今年のオープニング作品となったのが、ミュージカル映画の『ディア・エヴァン.ハンセン』(2021年11月26日公開)。孤独な高校生が、セラピーのために自分宛てに書いた手紙。それを勝手に持ち帰ったクラスメートが自殺……という一見シビアな物語を、『ラ・ラ・ランド』『グレイテスト・ショーマン』(2017年)の作詞・作曲コンビが手がけた曲でつづる。青春映画として胸を締めつける一作に仕上がっていた。この『ディア・エヴァン・ハンセン』は、2021年10月30日から始まる東京国際映画祭のクロージング作品に決定。前述の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』『ラストナイト・イン・ソーホー』、さらに『タミー・フェイの瞳』(日本公開日未定)など、トロントの作品が2021年の東京国際でも上映される。略すと同じ「TIFF」という縁はあるが、これだけいっぱい東京と重なるのも、それはそれでうれしい限り。

『ディア・エヴァン.ハンセン』01 Courtesy of TIFF

ネトフリ、アマプラ……配信作品にも驚きの収穫あり!

相変わらず配信系会社の作品もトロントでは目立つ存在で、Netflixからは『パワー・オブ・ザ・ドッグ』『ムクドリ』(配信中)のほか、意外に高評価だったのが『THE GUILTY/ギルティ』(2021年9月24日より公開中)。映画ファンを夢中にさせた2018年の同名デンマーク映画を、山火事が広がるロサンゼルスに舞台を移し、ほぼ忠実にリメイク。監督がアントワン・フークア、主演がジェイク・ギレンホールとくれば、そのテンションは期待どおり。

『THE GUILTY/ギルティ』01 Courtesy of TIFF

そしてアマゾンからは、『社会から虐げられた女たち』(Amazon Prime Videoで配信中)などとともに、2021年のアカデミー賞で主演男優賞候補になったリズ・アーメッド主演の『Encounter(原題)』が、虫を媒介にしたエイリアン侵略に始まり、予想外のドラマへなだれ込み、最後は感動も届けるという驚きの収穫だった。

『Encounter』01 Courtesy of TIFF

そのほか「掘り出し物」という点で、『ダンケルク』(2017年)の英国若手スターたちが、男同士の愛欲をセンセーショナルに演じた『Benediction(原題)』、台湾の青春群像を、こちらも衝撃的なエピソードも盛り込んで一気に見せる『Terrorizers(原題)』、そしてタイで洞窟に閉じ込められたサッカー少年たちと救出のダイバーたちの、知られざる真実に迫った『The Rescue(原題)』がドキュメンタリー部門で観客賞を受賞……と、日本での公開も切望したい作品が、相変わらずたくさん見つかるのがトロント国際映画祭の魅力だ。

『The Rescue』01 Courtesy of TIFF

ただ日本映画の出品は『ドライブ・マイ・カー』『犬王』(共に2021年)のわずか2作(2年前は新海誠、是枝裕和、黒沢清、三池崇史、深田晃司らの新作が上映された)と、コロナ前と比べると、まだラインナップの華やかさは物足りなかったので、2022年の「完全復活」に期待したい!

『Benediction』01 Courtesy of TIFF

取材・文:斉藤博昭

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