園子温、ニコラス・ケイジの「ハリウッドをたっぷり吸った顔」にときめいた!『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』インタビュー【後編】

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ライター:遠藤京子
園子温、ニコラス・ケイジの「ハリウッドをたっぷり吸った顔」にときめいた!『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』インタビュー【後編】
『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』メイキング写真©︎2021 POGL SALES AND COLLECTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

ニコラス・ケイジを主演に迎えた最新作『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』でハリウッドデビューを果たす園子温監督。それ以前に海外進出作として監督を務めるはずだった『ロード・オブ・カオス』(2019年)などの話題も含め、ハリウッドへの憧れ、ハリウッドスターへの想いを聞いた。

『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』©︎2021 POGL SALES AND COLLECTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

「憧れの世界で映画を撮ってみたい」

―インディーズ、通常の邦画、Netflix、ハリウッドと、監督はすべて経験してこられましたが、それぞれの映画での作りやすさとやりにくさはどんなところでしたか。

どれがいちばんやりやすいとか、どれがやりにくかったとかは比べようがないですね。それぞれの困難とやりやすさがあるので。ただ僕はもう年ですし、やっぱり映画館でかかる映画が好きなんですよ。もしも自分のハリウッドデビュー作がNetflixでしか配信されない映画だったら、全然デビューした感がなかっただろうなと思うんですよね。自宅にいて自分のパソコンをオンにしたら「ああ今日からやってんだ」みたいなのは(笑)。「これ別にハリウッドじゃなくてよくね?」みたいな感じで。

配信ものは、なんかダイナミックな感じじゃないですよね。『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』は2021年の9月から全米の映画館で上映が始まったわけですけど、それこそ残念なことにコロナのおかげで映画館で観客と一緒に体感することができなかった。でもやっぱり映画館でかかっている姿を見て、ポスターも出て……やっぱり、そういうのがちゃんと「デビューしたな」っていう気にさせてくれるので。昔から活動してるミュージシャンだったら絶対に配信じゃなくてCDで出ないと嫌だなとか、もっと言えばアルバムが出たほうがいいとか、それと似たようなことを言ってるわけだけど、配信で映画館での公開がないのは寂しいっていうのはあって。やっぱりフィルムで撮って映画館でかかるのが最高ですよね。

『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』メイキング写真©︎2021 POGL SALES AND COLLECTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

―ハリウッドでのやりがいは、とくにどんなところにありますか。

ハリウッドでなにが素晴らしいって、僕の憧れ。もう小さいころから最高の映画を、『ジョーズ』(1975年)とか『インディ・ジョーンズ』(1984年ほか)、『ゴッドファーザー』(1972年)とか、もう記念碑的な映画を見まくってるわけですよ。だから憧れが強いんですよね。その世界で映画を撮ってみたいっていうのがすごくあって、ニコラス・ケイジを撮影中にモニターで見たときに、すごくときめいたんですよね。実際には忙しすぎて、ハリウッド映画を撮ってるとかそういう意識も何もないまま撮影に入って、初めてニコラスをカメラで撮っている時に、モニターの彼を見て「これってハリウッド映画だよね!」って当たり前なんだけど、びっくりしちゃったんです。「ああ、俺ってやっぱりハリウッド映画撮ってんじゃん!」みたいな、すごい高まってエキサイティングだった。

『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』©︎2021 POGL SALES AND COLLECTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

やっぱりニコラスがすごくて……うーん、やっぱり若手じゃダメなんだよね。歴史重層的な、ハリウッドの歴史をたっぷり吸い込んだあの顔が、この映画に出ている。ニコラス・ケイジがいるからこそ。アル・パチーノとか、そういう部類ですよね。ダメなんです、若手じゃ。それなりにハリウッドをたっぷり吸った顔がモニターに映ったときに、これはまさしくアメリカ映画だなと。ニコラス・ケイジっていう本当の伝説の俳優が出てくれたおかげで、よりハリウッド感が出た。

『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』メイキング写真©︎2021 POGL SALES AND COLLECTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

―今後、どんな俳優さんやスタッフの方とお仕事したいと考えてらっしゃいますか。

あて書きはしていないので、なかなか難しいですけどね。生きてるうちにアル・パチーノとかデ・ニーロとかとは仕事したいけど、そのためにはご老人の設定映画のシナリオ書かなきゃいけないんで、それはそれで難しいかもしれない。いや若手はね、僕もうそんなにドキドキはしないです。そんなにときめかないというか。

『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』©︎2021 POGL SALES AND COLLECTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

―ご自分が青年として見ていたときに仰ぎ見ていたスター、ということでしょうか。

そう、それにあの当時のスターって誰でも知ってるでしょう。そのへんの八百屋のおじさんだって、例えばライアン・ゴズリングは知らないけどニコラス・ケイジは知ってるんですよ。田舎のおばちゃんもニコラスのことは知ってる。やっぱり昔のスターって知名度がちょっと違うよね。映画好きだけじゃなく、映画を見てなくても知ってる。そういう意味では、いまの若手スターってやっぱり映画ファンじゃないと名前が出ないと思うんですね。そういう違いがある。

―「あの映画の人!」という感じですね。

そうそう、「見たことある!」とかさ。

『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』©︎2021 POGL SALES AND COLLECTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

「今後も年に一本くらいはアメリカで映画を撮っていきたい」

―ハリウッド以外で仕事をしてみたい国はありますか? 韓国、インド、中国など。

インドはなんか金になりそう(笑)。 韓国はそんなに。15年くらい前は盛り上がってて仕事したいなと思ったけど、いまはもうちょっと違うんじゃないかな。ディスってるように聞こえるから、あんまり言いたくないんですけどね。中国はハンパなかったですけど……。僕がなんのために映画を撮ってるかって言ったら、野球で言えばメジャーに行きたかったから、というのに近い。だからハリウッドに行くのはやっぱり筋かな、自分にとって。僕もう今年で60ですから。これが35歳くらいだったら中国でもインドでも「映画撮りてえなー」とか軽く言えるけど、そんなことやってたら日が暮れそうなので、ハリウッドだけに絞らないとね。

『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』©︎2021 POGL SALES AND COLLECTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

―園監督は『愛のむきだし』(2008年)の満島ひかりさんや『ヒミズ』(2011年)の二階堂ふみさんなど、有望な新人を次々と育ててこられたわけですが、いま気になっている新人の方や撮りたい方はいらっしゃいますか?

さっき言ったように僕は、若手っていうのはアメリカも日本もあんまりわからなくて。そもそも満島ひかりを見つけたのも、飲み会で隣に座ったんですよ。「あれ、この子おもしろいな」って。オーディション会場じゃないところで会うケースが多いので、映画を見て「この子を使いたい」ということではなかった、二階堂も。吉高(由里子)に至っては、僕の映画がデビュー作でプロフィールが真っ白だった。だからいつも「あの人と一緒に仕事をしたい」っていうより、僕が最初に見かけて……ということばかりなので、スクリーンに映っている役者を見て、というのはあまり経験してきていないんですよ。そういう意味では知識もあまりない。いまでこそ映画を見て調べ上げて、ということもやってますけどね。ハリウッドでまた次の映画を撮らなきゃいけないので一生懸命、勉強するようになりました。

『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』©︎2021 POGL SALES AND COLLECTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

―次回作は、もう構想なども決まっているんでしょうか。

構想というより、年に一本くらいはアメリカで映画を撮っていきたい、頑張っていきたいっていうのがいまの気持ちですね。

『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』メイキング写真©︎2021 POGL SALES AND COLLECTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

『ロード・オブ・カオス』降板の経緯は……?

―色々な方から同じ質問があったと思うんですが、『ロード・オブ・カオス』で海外進出されるはずだった件について伺ってもよろしいですか?

あれは準備段階でもいいところまで行って、俳優を決めたりする段階までやってたんですけど、どうしても資金繰り、つまりプロデューサーが金集めができなくて解体しちゃったんです。そこで僕は離脱しちゃったので……。

これまでにも、そういう台本が無数にあります、SFからコメディから不倫ラブロマンスからホラー映画まで、いろんな台本が目の前を過ぎていきました。『ロード・オブ・カオス』はその中でも一番いいところまで行ったんですけど、結局途中で頓挫しちゃったケースです。それで皆さんご存知の結果になっちゃったんですけど、ほかにもたくさんの映画がありました。だからもう、正直どんな映画でもいいからハリウッドでデビューしたいっていう意味では、本当にやっとここまで来たかなと、それはすごくよかったなと思います。もしかしたら不倫ロマンス映画になって『危険な情事』(1987年)みたいな映画を作っていたかもしれないし、いろんなパターンがあったんですけど。

―ハリウッドデビューを目前に控えて、その当時との心境の変化はありますか?

いや、思ったよりも別に普通なんですよね。まあ取材だから「感慨深い」とか「やっとデビューできて自分もここまで来たな」なんて言ってますけど、じつを言うと、ちょっと努力してそう言ってるところもあって、それほどでもないんですよ。これを例えれば、ずっと見ていてすごく好きだった彼女と、やっと念願のデートにこぎつけたけど、実際デートしてみたら大したことなかった、まあこんなもんか……みたいな。何かが足りないというか、思ったほどでもない。だから思うに、まだこれから先が多すぎて、これからどんどんハリウッドに立ち向かっていかなきゃいけない状況なので、そう考えると(本作が)節目にはなっていないのかもしれないですね。

園子温

取材・文:遠藤京子

『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』は2021年10月8日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

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『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』

悪名高き銀行強盗ヒーローは、ある日、相棒のサイコとともにサムライタウンの銀行を襲撃するが、少年が差し出したガムボールをきっかけに捕まってしまう。投獄され、フンドシ一丁で手錠を掛けられるヒーロー。

サムライタウンではこの世界のすべてを牛耳る悪徳ガバナーがいつも女を侍らせていた。傍らにはいつも用心棒のヤスジロウと少女のようなスージーをおいてご満悦だ。

ある日、ステラ、ナンシーとともにガバナーの魔手から逃げたガバナーお気に入りのバーニスを連れ戻すことを条件にヒーローは自由を手に入れる。ただし、5日以内にバーニスを連れ戻さねば、爆弾を仕掛けられたボディスーツが爆発してしまう。

バーニスが消息を絶った不思議な街ゴーストランドへヒーローもまた足を踏みいれる。ゴーストランドとは、入ったら最後、二度と出られない街。そこには、動かなくなった車を修理し続けるラットマン、人間をマネキンに閉じ込めるキュリ、すべてを見つめる男ナベたちがいた。ゴーストランドの住人達は言う。「ガバナーがいる限り、我々は時計を止めねばならない。そうしないと世界は爆発する」と。

果たして、ヒーローはバーニスを見つけられるのか。ゴーストランドを脱出することはできるのか。そして、サムライタウンはガバナーの手に落ちたままなのか。

制作年: 2021
監督:
出演:
  • BANGER!!!
  • 映画
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