あの“ショットガン自殺”バンドの衝撃実話を映画化!『ロード・オブ・カオス』が描く北欧ブラックメタル界の暗黒史

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あの“ショットガン自殺”バンドの衝撃実話を映画化!『ロード・オブ・カオス』が描く北欧ブラックメタル界の暗黒史
『ロード・オブ・カオス』© 2018 Fox Vice Films Holdings, LLC and VICE Media LLC

ブラックメタルの暗黒史を映画化!

映画『ロード・オブ・カオス』のベースになった事件については、2008年のドキュメンタリー『ライト・テイクス・アス~ブラックメタル暗黒史~』で知りました。今回『ロード・オブ・カオス』の鑑賞後に、どうにかあのドキュメンタリーをもう一度観られないものかと探してみたところ、現状日本では配信等はされていない模様。あの事件の衝撃は深く脳裏に焼き付いているけれど、劇映画である『ロード・オブ・カオス』も同じくらいの衝撃でした。

『ロード・オブ・カオス』© 2018 Fox Vice Films Holdings, LLC and VICE Media LLC

音楽をテーマにした映画を観ると、“音楽があって人がある”のではなく“人があって音楽がある”のだなぁと、つくづく思う。その音楽ジャンルに詳しくなくてもいいし、ジャンルの好き嫌いは観た後で判断すればいい。この『ロード・オブ・カオス』も“ブラックメタル”の映画じゃなくて、“人”の映画なんです。って、『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』(2019年)の記事でも同じようなことを書いてしまったけど……(祝アカデミー賞ノミネート!)。

『ロード・オブ・カオス』© 2018 Fox Vice Films Holdings, LLC and VICE Media LLC

ロリー・カルキン&ジャック・キルマーが実在のブラックメタラーに!

本作は1980年代末から1990代前半にかけてのノルウェー、首都オスロが舞台。バンド「メイヘム」のギタリスト、ユーロニモス(ロリー・カルキン)を中心として、原作のノンフィクション「ブラック・メタルの血塗られた歴史」を映画化した作品です。「インナーサークル事件」と聞けばピンとくる人も多いはず。

ロード・オブ・カオス 復刊 ブラック・メタルの血塗られた歴史 (ele-king books)

主人公のユーロニモスを演じるのはマコーレー・カルキンの実弟、ロリー・カルキン。準備に1年かけて役になりきったらしい。あの髪は地毛だったのか!(そこ!?)。そして、ユーロニモスほかメンバーたちがその才能とイカれ具合に感化されるデッド役に、ジャック・キルマーを起用。ジャックはオジー・オズボーンの「Under the Graveyard」のミュージックビデオで若きオジーを演じているが、彼の父親は『ドアーズ』(1991年)でロック界のカリスマ、ジム・モリソンを演じたことで知られるヴァル・キルマー。なんかこれを知ったら一気にグッときてしまった(笑)。

『ロード・オブ・カオス』© 2018 Fox Vice Films Holdings, LLC and VICE Media LLC

ブラックメタル畑出身の監督がゴア描写まで忠実に再現!

監督のジョナス・アカーランドは、“ブラック・メタルの父”と言われる伝説的バンド「バソリー」の元ドラマーであり、数々の有名アーティストのMVを手掛けてきた才人。当時のブラックメタル・シーンの内部にいた人物だからこその、リアルな世界観がしっかり表現されています。

『ロード・オブ・カオス』© 2018 Fox Vice Films Holdings, LLC and VICE Media LLC

本作はスリラー映画とかスラッシャー映画と紹介されていますが、そういった過激なパートは全体の2割にも満たないのに、なぜ? それは、そのわずかなシーンがヘタなスラッシャー映画よりもよっぽど過激だから! 『血の祝祭日』(1963年)などで知られるスプラッター映画の始祖、ハーシェル・ゴードン・ルイス監督もビックリのゴア描写……!!

アカーランド監督はインタビューで「できるかぎり現実に近づけました。警察の報告書を読み、それを忠実に再現しようとしたし、リアルで生々しいものにしたかった」と語っています。撮影では、昔ながらのゴム製の義肢装具と血液ポンプを使ったとのことで、その生々しさにはホラー好きの僕も驚愕しました。そりゃR18指定にもなるわ!

『ロード・オブ・カオス』© 2018 Fox Vice Films Holdings, LLC and VICE Media LLC

余談ですが、劇中でエンペラーというバンドのドラマー、ファウスト(演じるのはあのスカルスガルド家の五男、ヴォルター・スカルスガルド)が『ブレイン・デッド』(1992年)と『死霊のはらわた』(1981年)を観ていたのにグッときました!

『ロード・オブ・カオス』© 2018 Fox Vice Films Holdings, LLC and VICE Media LLC

バンドを始めたばかりの若者に観てほしい狂気の実話!

僕が18歳の頃に幼馴染と組んだバンドは、どちらかと言うと閉鎖的なバンドだった。自分たちの音楽が1番カッコいいと思ってて、それは悪いことじゃないんだけど他のバンドを下に見てるところがあって、ライブ終わりにメンバーと友人と公園に行き、朝まで馬鹿みたいなことをしたり他のバンドの悪口を言ったりしていた。今ならわかるけど、他の音楽を受け入れる器がなかったんですね。馬鹿なことして目立とうとしたりもしたし。

『ロード・オブ・カオス』© 2018 Fox Vice Films Holdings, LLC and VICE Media LLC

本作を観終わって考えるのは、もしかしたら僕も彼らみたいになってたかもしれない、ということ。彼らの行為は明らかにやり過ぎだけど、自分に自信がないから仲間を作って、居場所を作って、誰かになりきって、無茶苦茶なことをしてまで世界に自分を知らしめたかったんだな、と共感してしまいました。もちろん多くの人に観てほしいけど、とくにバンド活動を始めたばかりの若者に観てほしいと感じました。

『ロード・オブ・カオス』© 2018 Fox Vice Films Holdings, LLC and VICE Media LLC

文:ゾニー(KING BROTHERS)

『ロード・オブ・カオス』は2021年3月26日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次公開

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『ロード・オブ・カオス』

1987 年、ノルウェー・オスロ。19 歳のギタリスト、ユーロニモスは、ヴォーカルのデッドたちとともに「真のブラック・メタル」を追求する全く新しいバンド「メイヘム」の活動に熱中していた。デッドは、ライヴ中に自身の身体を切り刻み、観客にその血をかけた上、豚の頭を投げるなどの行為を繰り返し、その過激さもあって「メイヘム」は熱狂的にブラック・メタル・シーンに受け入れられる。しかしある日、デッドはショットガンで頭をブチ抜き、自殺を果たした……。発見者のユーロニモスは、親友の脳漿が飛び散る遺体の写真を撮り、頭蓋骨の欠片を友人らに送付し、喧伝することでカリスマ化。レコードショップ「ヘルヴェテ(地獄)」を根城に、“誰が一番邪悪か”を競うインナーサークルを作り、王として君臨するようになる。しかし、メンバーのヴァーグが起こした教会放火を契機に、主導権争いは熾烈化。歯止めが効かなくなった果て、彼らですら想像しえなかった狂乱が待ち受けていた。

制作年: 2018
監督:
出演:
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