【追悼】千葉真一が「隻眼の剣豪」を演じた超豪華時代劇アクション『柳生一族の陰謀』と苛烈な戦国トリビア

【追悼】千葉真一が「隻眼の剣豪」を演じた超豪華時代劇アクション『柳生一族の陰謀』と苛烈な戦国トリビア
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忘れ得ぬ千葉真一との握手

2021年8月、私の大好きな俳優である千葉真一さんがお亡くなりになられた。実は私は3年ほど前、赤坂にあった若山騎一郎さん(若山富三郎さんのご子息)がやられているお店で、一度だけ千葉さんと初めてお会いして、紹介していただき、大ファンです! と握手をさせてもらっているのだ。ご高齢とはいえまだまだお元気で、大スターのオーラに感銘を受けたのだが、まさか新型コロナウイルスで亡くなられるとは、ショックを隠せない。

千葉さんの作品については以前にもこのコラムで書かせてもらっているが、私が初めて千葉真一という俳優さんに魅了されたのが、小学校2年生の時にテレビで放送されて観た『戦国自衛隊』(1979年)だった。まだ子供の私にとって、この映画はどの場面も衝撃的で脳裏に焼きついた。当然、次の日には学校で早速、折り畳んだ傘をライフルに見立て、千葉さんが演じられた伊庭三尉の役になりきって、戦国自衛隊ごっこをやっていた。その時に口ずさんでいたのが、映画で流れていた戦国自衛隊のテーマ。これがいい曲で、いまだにカラオケで歌っているぐらい、大好きな曲なのだ。しかし、子供の頃の私はサントラのレコードも持っておらず、もちろん歌詞も知らない。テレビで流れた曲を、耳だけを頼りに聞いたままをを歌っていたのだが、実はおもいっきり歌詞を間違えて歌っていた。

実際には「♪サ~ン ゴ~ズ ダウン サ~ン ゴ~ズ ダウン もう日が暮れるから~」と歌っているのだが、滋賀の田舎のバカな小学生の耳には「♪せ~んごくだ~ せ~んごくだ~」に聞こえ、間違ったまま声高らかに歌っていた。タイトルが『戦国自衛隊』だもの、そう聞こえてもしょうがないが、いま思い返してみても恥ずかしいかぎりだ。

子供の頃はこんなことがよくあった。私の幼馴染のHくんは中学生の頃、当時大人気だったロックバンド、BOOWYの「1994 レベル・オブ・コンプレックス」という曲の中で、ボーカルの氷室京介さんが歌う「ほんの4マルクだけの夢」という歌詞を、彼はどう聞いたのか「ほんまヤンバルクイナベイべー」と歌っていた。BOOWYの氷室が突然関西弁で、沖縄の新種の鳥のヒナのことを歌うはずがない。ただHくんの耳にはそう聞こえ、なんの迷いもなく彼は歌っていたのだ。

他にも私の先輩、浅草キッドの水道橋博士は実家の岡山にいた頃、浜田省吾さんの「MONEY」という曲で、この歌はいつか大金(ビックマネー)を掴んでやるぜ! という歌なのだが、「純白のメルセデス プール付きのマンション 最高の女とベッドでドンペリニヨン」という歌詞を「最高の女とベッドで丼食おう♩」と歌っていたそうだ。金持ちがベッドで丼物はまず食わないと思うのだが、岡山の田舎の水道橋博士少年はドンペリニヨンなど飲んだこともないのだから仕方のないことだ。昭和のあの頃はすぐにスマホで調べることができなかったが、それはそれでいい時代でもあり、懐かしくも思えてくる。

話を元に戻すが、今回はそんな私の大好きな千葉真一さんが出演された作品をオススメしたい。1978年公開のお正月映画、『柳生一族の陰謀』だ。

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深作欣二監督の超豪華時代劇アクション『柳生一族の陰謀』

『柳生一族の陰謀』は主演の萬屋錦之介さんが柳生家頭領・柳生宗矩(むねのり)役で、その息子の柳生十兵衛を千葉さんが演じられている。千葉さんは柳生十兵衛を何度もやられているが、この作品が最初なのだ。

物語は、徳川家三代将軍の座をめぐって兄の家光と弟の忠長を中心に、それぞれの家臣たちの様々な思惑が入り乱れ、陰謀や謀略が繰り広げられる権力闘争の話しなのだが、とにかくこの作品はストーリー展開が面白い! スピード感もあって、いま見ても見事な脚本である。さらに当時、東映が威信をかけて12年ぶりに本格時代劇を制作しただけある、重厚な作品なのだ。

出演者も豪華ラインナップで、松方弘樹、西郷輝彦、原田芳雄に丹波哲郎。夏八木勲に成田三樹夫、山田五十鈴、芦田伸介、大原麗子に三船敏郎……と、お正月映画だけあって当時のスターが勢揃いしている。そして監督は、私の尊敬する『仁義なき戦い』シリーズ(1973年ほか)でお馴染みの深作欣二さんという完璧な布陣で、東映の並々ならぬ意気込みを感じる。勿論、志穂美悦子さん、真田広之さんとJACのメンバーも勢揃い。

しかし、なんといっても千葉さん演じる<隻眼の剣豪>柳生十兵衛がカッコイイ! 刀の鍔を片目にあてがったあの出立ちは、何度見ても惚れ惚れする。流石に抱かれたいとまでは言わないが、千葉さんの十兵衛におもいっきり斬られたいと、いまでも私は思っている。

そんな千葉さんが兎に角かっこいい作品なのだが、この映画で目を見張るのがもうひと方、萬屋錦之介さん。東映時代劇の黄金期を支えた大スターの錦之介さんは、東映が時代劇の製作を止め、任侠やヤクザ映画路線の作品を中心に作り始めた頃、現場の組合闘争などもあって東映を去られているのだ。それから12年の時を経て、久々に東映から時代劇のオファーが来た錦之介さんは心にぐっとくるものがあったかもしれないが、快く出演を承諾される。

そして製作発表の後に撮影に入るのだが、監督の深作さんは昔ながらの時代劇ではなく、新しい時代劇を作ろうと脚本から演出、撮影までこだわっていた。なので俳優陣の台詞回しは比較的、現代人に近い言い回しで演出されていたのだが、錦之介さんだけは歌舞伎を彷彿させるようなセリフの言い方だった。深作さんは悩み、錦之介さんに「もう少し現代風にやってもらえませんか?」と伝えると、錦之介さんは「他の方は知りませんが、私はこれでやらせていただきます」と返答され、周りの俳優から浮くほどの、過剰すぎると言われかねない、一世一代の大見得芝居を貫き通されたのだ。錦之介さんの役者としての意地を感じる。

しかし映画のラストシーン、 錦之介さん演じる柳生宗矩が首を持って「夢でござ~る!」の演技は重厚感があって見事にハマる! 見ていて鳥肌ものなのだ。そのあたりも是非、ご覧になっていただきたい。

生々しい! 戦さにおける「首取り」トリビア

さて今回の戦国雑学は時代劇や、戦国物でよく登場する物の一つに、<首>、いわゆる生首について書いてみよう。戦さの時、戦場で敵を倒すと、腰に刺してある脇差(短い刀)で、相手の首を取る。その首をどうするのかご存知だろうか? それは自分への恩賞、報酬の対象になる首を、首実検という儀式で自分の主君や上司に見せるのである。この儀式にはいろいろ作法もあって、首実検の時は全員鎧甲冑で行い(これは敵が首を奪いに来た時に対応できるようにするためだそう)、板の上に乗せた生首の両方の耳の穴に、親指を入れ差し出したり(これは首が飛んでいかないように)、見る側は、横目で見たり、両サイドに弓矢を構えた武将を置いたり(これは首が襲いかかってきたときのため、らしい)など様々なしきたりがある(かなり生首に怯えている感があると思うが……)。そして、その首が敵の誰々の首だと認められると、決められた恩賞にありつけるのだ。

雑兵や足軽の首は恩賞は安く、侍大将の様な兜首は恩賞が高い。そのため皆この兜首を取ろうと戦さで励むのだ。そして首実検に出す前には首を洗い、泥を取り髪を整えて綺麗にして差し出すのである。この時、中には少しでも位の高い首にするため、お歯黒をつけて差し出す者も出てくる。さらには、この首を綺麗にして死化粧を施すことを商売として代行してやってくれる業者まで現れるのである。余談だが、実は戦場には様々な業者がいて、供養をする僧侶、怪我人を診る医者、討ち取られた武将の武器を買い付けに来る武器商人など様々な職種の人がいたのである。

そして首実検が終わると、多数の首をその場で埋葬し供養するのだ。そのため全国の古戦場のそばには「首塚」と呼ばれる場所があり、現在では供養塔が立っている場所もある。こんな場面はなかなか映画やドラマには出てこないので誰も知らないと思うが、首を取るという現代では野蛮な行為も、実は最後には討ち取った相手を丁寧に埋葬し供養していたのである。

今回の雑学は少し生々しかったが最後に、千葉真一さんに哀悼の意とご冥福をお祈りいたします。千葉さん、数々の素晴らしい作品をありがとうございました。

文:桐畑トール(ほたるゲンジ)

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『柳生一族の陰謀』

権力に生きる柳生一族の存続を賭けた壮大なドラマを映画演劇界の豪華スターを配し、巨大なスケールで描く本格時代劇。深作欣二監督が初めて時代劇のメガホンをとった意欲作。

制作年: 1978
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