凶悪な性犯罪、無能な警察やマスコミによる心なき二次加害 Netflix実話ベース映画『ロストガールズ』『私を信じて』の衝撃

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ライター:BANGER!!! 編集部
凶悪な性犯罪、無能な警察やマスコミによる心なき二次加害 Netflix実話ベース映画『ロストガールズ』『私を信じて』の衝撃
Netflixオリジナル映画『ロストガールズ』独占配信中

実話ベース映画の意義

いま世界中のNetflixで、実話を基にした映画/ドラマシリーズがたくさん製作/配信されている。多くは感動の実録ドラマ的なものだが、女性が精神的・肉体的に傷を負わされた、殺害されたという過去の禍々しい事件をベースにしたサスペンス/スリラーも多く、しかも優れた作品ばかりなのだ。

性犯罪は有罪となる確率が圧倒的に低いことはご存知かと思うが、自分よりも力の弱い相手を腕力や暴言で苦しめようとする、人として最低限の尊厳すら失くしたゴキ●リ以下の糞尿ゴミクズ汚泥野郎が登場する映像作品だけに、軽い気持ちで観ることができないというのが正直なところ。

Netflixオリジナル映画『ロストガールズ』独占配信中

ということで今回は、いまこそ観るべき実話ベースのNetflix配信作品を紹介。<性犯罪>がジャンル的に確立されてしまっている事実に暗澹たる気持ちになるが、ここに共通して“とことん無能な警察”というストレスが加わるものだから、ますます闇の深さを思い知らされる。それでもこれらの作品は、今こそ観るべき価値があると断言したい。

家では性的虐待、外にはレイプ魔……『私を信じて -リサ・マクヴェイの誘拐-』

『私を信じて -リサ・マクヴェイの誘拐-』(2018年)の主人公リサ(17歳)は愛想もよく働き者で、バイト先のドーナツ屋の看板娘。しかし、それは外の世界で気丈に振る舞う姿であり、帰宅すれば祖母の彼氏からの性的暴力に耐える毎日。あまりに辛く苦しい毎日に、思わず「この世に逃げ場がないのなら……」と遺書めいたものまでしたためるが、あるときバイト帰りにレイプされ、そのまま誘拐されてしまう。幸い(?)命は奪われず開放されるのだが、それは新たな地獄の始まりだった。

性犯罪に遭った少女の孤独な戦いを描く本作は、いわゆる毒親ものでもあり、根底にはアメリカ社会の複雑な家庭環境が根を張っている。経験のない人間が軽々しく言えたものではないが、信頼できる拠り所がないというのは、犯罪に遭うのと同じくらいつらく恐ろしいものだろう。しかも、命を守るために機転をきかせたリサの冷静な行動に対し、「どうせ遊びたい年頃の少女のウソだろう」と断じるクソ刑事は、もはや第二の加害者である。この絶望感に心が折れそうになるが、女性刑事までが「そんな状況で詳細を覚えているはずがない」「刑事ドラマが好きなんじゃない?」みたいな態度で、もう……。

目の前に性被害を訴える少女がいるのに、そのハナから穿ったような態度はなんだッッッ!!?? と腹立たしさのあまり叫びたくなるので、特に高血圧の方は要注意(書いていて怒りが再燃しています)。唯一、リサの証言を真摯に受け止める性犯罪捜査班長のラリーの存在が救いだが、ここからは封じ込めたい記憶を呼び覚まし、心に刻まれたトラウマと対峙し、野放しになっている犯人の恐怖との戦いに突入していく。

名の通ったキャストこそいないが、おかげで感情移入度が半端じゃない本作。辛い日常に耐えていたことで冷静に犯人の特徴を捉えることができた、という難役を見事に演じきったケイティ・ダグラスは心身ともに大変だったはずで、小柄な彼女の奮闘に最大級の拍手を贈りたい。なお実際の事件の顛末はエンディングでも触れられるが、「Lisa McVey」で調べれば知ることができる。

娘はどこに消えたのか? 母の執念に心震える『ロストガールズ』

冒頭の「アメリカの ある未解決事件」というテロップに、早くも心がずーんと重くなる。『ロストガールズ』(2020年)の舞台は2010年のニューヨーク州エレンヴィル。マンハッタンから車で走れば2時間くらいだが、美しい山あいに佇むなかなかの田舎町だ。本作の主人公は被害者自身ではなくメアリー・ギルバート(演:エイミー・ライアン)というシングルマザーで、行方不明になった娘を見つけ出すための孤独な戦いが描かれる。

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メアリーはお世辞にも“完璧な母親”とは言えないが、懸命に働いて娘たちを育てていて、強気な性格の裏にある繊細さを隠せない人間くささがある。あるとき、離れて暮らしている長女シャナンの行方を確認するような電話が重なり、不審に思ったメアリーは次女シェリー、三女サラとともに独自に娘を探すことに。しかし、ニューヨーク州を走り回った彼女たちがたどり着いたのは、女性セックスワーカーを狙った連続殺人事件だった……。

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メアリーの執念によってシャナンの身に起こった事実が次第に明らかになっていくわけだが、合間に挿入される実際の事件映像の生々しさが楽観的な予想を拒絶する。最初に発見された4人の被害者の中にシャナンは含まれていなかったものの、事件の残虐性と、被害者が皆セックスワーカーだったことからスキャンダラスに報じられ、メアリーたちを精神的に追い詰めていく。他の遺族たちに対し「私の娘は死んでいないから」と接触を避けていたメアリーだったが、その交流はメディアの前で公に議論を促すことで事件の風化を阻止し、彼女の決意を支える連帯をも育んでいくのだった。

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そうして中盤あたりから、メアリーを含む女性たちの視点が強く盛り込まれていく。なにしろこの事件、女性の存在は被害者側に著しく偏っていて、捜査関係者やマスコミ側はなぜか男性的な立ち位置からの、見下ろしたような視点での言動ばかりなのだ。痛みや後悔を抱えた母親たち~残された姉妹ら家族への配慮が完全に欠落していて、捜査ミスの原因もそこにあったのではないかと感じてしまうレベル。実際、本作の大きな怒りポイントは、自らの捜査不備を棚に上げてメアリーをモンスターペアレント扱いする刑事たちだ。

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被害者を売春婦呼ばわりし、形式的なやり取りに終始したあげくマスコミに対する口封じまでしようとする警察の厚かましさには反吐が出る。さらに、まるで『ウィンターズ・ボーン』(2010年)のような田舎町特有の閉鎖的コミュニティがシャナンの足取りを覆い隠し、彼女が精神疾患を抱えていたことが示唆され、どこか陰謀論めいた協力者まで登場。やがて有力な容疑者が浮かび上がり、ついに捕物パートか!? と身を乗り出したところで、冒頭の「未解決事件」というテロップが頭をもたげてくるのだった……。

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被害者目線のスリルフルな描写はないが、そのぶん遺族たちの心理描写が真に迫っていて胸が締め付けられる。終盤は、このままなにもかも迷宮入りしたほうが救われるのでは……と思ってしまうほど重苦しい展開だが、母親版『プリズナーズ』(2013年)という喩えすら生易しく感じる、愛と執念、そして絶望に満ちたサスペンスドラマの傑作だ。なお、エンディングで明かされるギルバート家のその後は映画本編よりもさらに壮絶なので、最後の最後まで気が抜けない。

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ちなみにシェリーを演じているのは『ジョジョ・ラビット』(2019年)で注目を浴び、シャマラン監督の最新作『オールド』(2021年8月27日より公開中)にも出演しているトーマシン・マッケンジーである。

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監督はニーナ・シモンのドキュメンタリー映画でアカデミー賞にノミネートされ、Amazon Prime Videoで配信中の『すべてをかけて:民主主義を守る戦い』(2020年)も手がけているリズ・ガーバス。本作は彼女をはじめ、多くの女性スタッフによって制作された映画ということを意識して観ていただきたい。

左:リズ・ガーバス監督/右: エイミー・ライアン
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『私を信じて -リサ・マクヴェイの誘拐-』『ロストガールズ』はNetflixで独占配信中

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