『バーフバリ』字幕監修者が明かす!人気キメ台詞の誕生秘話など翻訳作業の舞台裏(2/3)

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ライター:BANGER!!! 編集部
『バーフバリ』字幕監修者が明かす!人気キメ台詞の誕生秘話など翻訳作業の舞台裏(2/3)
『バーフバリ 王の凱旋』 ©ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.
『バーフバリ』シリーズの大ヒットうけ、ここ日本でもマヒシュマティ王国の民(ファン)が急増!同シリーズの字幕監修を務めた茨城大学人文社会科学部教授/インド文化研究家・山田桂子さんにインタビューを敢行し、カラオケ字幕やキメ台詞がどのようにして生まれたのか教えてもらった。

カラオケ用の歌詞は研究室を閉めて“1人カラオケ状態”で作った(笑)

『バーフバリ 王の凱旋』 ©ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.

―2018年は『バーフバリ』によって色々な変化があったかと思います。

そうですね、印象深い1年でしたね。そして、とても忙しかったですね。こんなことになるとは思っていなかったんです。『バーフバリ』シリーズだけなく、『マガディーラ 勇者転生』の字幕監修作業もありました。実は、『バーフバリ 王の凱旋』のIMAX上映版は2つ3つセリフが違うんです。どうしてそうなったのかは分からないんですが、別に編集しているということなんでしょうね。増えたシーンには字幕も付け足しました。『バーフバリ 伝説誕生』の完全版も、同じ場面を同じように撮っていると思いきや、違っているところもあったりして。そういう細々とした作業がずっとありましたね。

―サントラやカラオケの詩も監修されたそうですが

サントラは歌を聴いて、映画の字幕と同じところは同じ字幕を付けるのですが、サントラにしかない歌詞とかもあるんですよ(笑)。映画だと1番しか歌ってないけどサントラだと2番がある、とか。

カラオケも結構あなどれなくて、映画本編だと実際長く喋っているのだけれども字幕だと短くなっていて、そこまで細かく聞き取れなくてもいいやっていうのがあるんですね。だけどカラオケだと聞こえづらいところまで全部カタカナで起こさなきゃならない。そして、カタカナにした歌詞を本当に歌えるかどうか自分で歌って確かめるでしょ? 研究室を閉めて1人カラオケ状態(笑)。何やってるんだろうって思いましたよ(笑)。

あとは雑誌の原稿とか、映画館でのトークショーなどがあったり。茨城放送というラジオにも2回出ました。2018年は、3月末からすごく忙しかったです。

山田桂子先生/『バーフバリ 王の凱旋』上映後のトークショー@映画館「あまや座」

―『バーフバリ』の日本語字幕を監修された経緯を教えてください。

2016年に『バーフバリ』が京都ヒストリカ国際映画祭で上映され、その後一般公開が決まった際に、アジア映画研究者の松岡環さんからご連絡を頂きました。松岡さんは配給会社ツインから公開にあたってのアドバイスを求められて、藤井美佳さんの字幕は英語とヒンディー語からの翻訳なので、テルグ語の監修者を付けるべきだ、と強く進言し、私の名前を伝えたそうなんです。彼女は私に『バーフバリ』は絶対に日本でヒットすると言っていて。後編もあるから、ぜひ引き受けてくれと(笑)。

私は松岡さんがそんなに言うんだったらと思って引き受けたら、本当に大ヒットして。自分の生きている間に、茨城に1軒しかないミニシアターの、1時間に1本も電車が来ないところでテルグ映画がかかる日が来るとはまさか思っていなかったので、そういう意味では本当に感無量ですね。

サントラにしても、テルグ語映画のサントラが日本仕様で発売されるなんて、もしかすると『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1995年)以来なんじゃないでしょうか。そういう意味では本当に皆さんに感謝ですよね。おかけで私はすごく楽しい思いをさせてもらっています(笑)。

-字幕監修とは具体的にどんなことをされていますか?

日本語字幕が適切になっているかをチェックするために、配給会社が専門家に点検を依頼するのが字幕監修という仕事です。字幕監修者は字幕担当者が作った日本語字幕を見て、専門用語の訳語やカタカナ表記が正しいか、日本語が原語の意味から離れていないかなどをチェックします。バーフバリでは藤井美佳さんが英語字幕とヒンディー語版の脚本を参考にして日本語字幕を作りました。私はそれに対してまずテルグ語のカタカナ表記をチェックし、次に元の意味から離れている日本語を指摘して修正案を出すなどしました。このようなやりとりを配給会社さんを交えて2~3回やり、最終字幕が完成します。ちなみにSF映画や医療関係の映画では専門的な科学用語や医学用語の監修が入ると思います。

『バーフバリ 王の凱旋』 ©ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.

-どういったところに気をつけて作業していますか?

インド映画は当然ながらインドの観客向けに作られるので、インド特有の宗教文化や社会制度、歴史をよく知らない日本人にはなんのことか良くわからなかったり、ヘンに感じるシーンは良くあります。日本人の観客が違和感なく最後まですんなり見続けられるように、セリフの意訳はもちろん実際にはない日本語を足したりするなどして、全体として「わからないところがない」ようにすることが、一番気を付けているところです。

―ファンに人気の“キメ台詞”など、字幕担当者の藤井美佳さんとはどんなやり取りをしましたか?

ファンの方たちの中で人気の“キメ台詞”が、例えば「この宣誓を法と心得よ」とか「結願(けちがん)」「成満(じょうまん)」とかありますよね。あれは元の言葉にはないんですよ、実は。

あれは藤井さんが上手だった。私はどっちかっていうと「そんなこと言ってないからやめろ」って言う役割(笑)、原語と違うから。例えば『バーフバリ 王の凱旋』の最初の方の場面で、シヴァガミが火鉢を頭に乗っけて歩くシーンがあります。で、象がパオーと出てくるときに「歩みを止めれば結願しない」と字幕が出て、それからシヴァガミが山車の下をうまく通り抜けたときに「発願は成就する」って出るんですけど、そこはそれぞれ「歩みを止めれば願いが叶わない」、「やった通れた」って言ってるだけなんですよ。そこは藤井さんの言語的センスが成功したんです。

<「マヒシュマティ王国は存在した」字幕監修者が解説!史実・神話・伝説が入り混じる『バーフバリ』の世界(1/3)>

<『バーフバリ』字幕監修者が語る“音が美しい”テルグ語の魅力(3/3)

『バーフバリ 王の凱旋』

数奇な運命に導かれた伝説の戦士バーフバリ。祖父、父、息子、3代に渡る、宇宙最強の愛と復讐を描くインド史上最大ヒットの大河アクション超大作。

制作年: 2017
監督:
脚本:
キャスト:
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