『バーフバリ』字幕監修者が語る“音が美しい”テルグ語の魅力(3/3)

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ライター:BANGER!!! 編集部
『バーフバリ』字幕監修者が語る“音が美しい”テルグ語の魅力(3/3)
『バーフバリ 王の凱旋』 ©ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.
インドには全く違うたくさんの言語があります。今回は『バーフバリ』シリーズの字幕監修を務めた茨城大学人文社会科学部教授/インド文化研究家・山田桂子さんに、南インドの「テルグ語」を中心にお話を伺いました。

『バーフバリ』のイメージと違って、テルグの人はすごく控えめ

ラーナー・ダッグバーティさん(写真左)、山田桂子先生(写真右)

―インドから来日された俳優のラーナーさんとお話しされてみて、いかがでしたか?

気さくな好青年だなと思いました(笑)

―ラーナーさんは外国でインド人ではない人からテルグ語で話しかけられるということに、すごくビックリされていたようでしたね。

そうですね。テルグの人たちって「自分たちはマイナーな言語を喋っている」と思っているんですね。でも、テルグ語自体は多分、いま9,000万人くらいの話者人口がいるので、けっこうな大言語なんです。話者のほとんどがインド人で、アメリカや南アジアなどに移民がいます。人口的には多いのに、彼らは人前に出たときに「自分はテルグ語が母語です」とか普通は言わないですね。

面白かったのは、『バーフバリ』を観て「テルグの人ってああいうアクションが好きで、どっちかっていうとケンカっ早くて、なんか猛々しい人たちなんじゃないか?」と思った人たちがいたようで、そういう人たちに「いやいや、テルグの人たちはすごく慎み深いし、どっちかというと引っ込み思案で、自分から進んで『私はテルグ語を喋ります』とかめったに言わないし、すごく控えめなんですよ」っていう話をすると、みんな驚きますね。

―テルグ語と他のインドの言語との大きな違いとは?

まずは“文字が違う”というのがあります。独自の文字を持っている。そのうえで文法も独自でタミル語とも、ヒンディー語とも全く違う。でもインドの言語は全部そうなんですが、日本語と語順が同じなので、そこは日本人にはわかりやすい。ヒンディー語もタミル語も同じです。

―ラーナーさんとのお話の中で「テルグ語が一番美しい言語だ」というお話が出ていました。

16世紀に南インドにはヴィジャヤナガル王朝のクリシュナデーヴァラーヤという王様がいまして、とても文芸が好きで文学や音楽、舞踊などが繁栄した時代でした。王様自身が詩人だったんですが自分が作った詩の中で「あらゆる言語の中でテルグ語が一番美しい」と書いてるんですね。それがテルグ人にとってはすごく誇りで。

なぜそう言われたのかというと、母音と子音の組み合わせがリズムよくセットになるんです。なので詩や音楽に適していて、南インドの古典声楽はほぼテルグ語なんです。音が美しい、つまりイントネーションとかリズムとかも“芸術的”ということになるみたいです。

ラーナー・ダッグバーティさんと山田桂子先生

―ボリウッド(ヒンディー語、ウルドゥー語)とテルグ語映画の特徴や違いとは?

テルグ語映画の方が断然、娯楽性は高いです。ボリウッドの方が、アクションやバイオレンスは少ないですね、あまり見せないようにしているのかもしれません。テルグ語映画はよく他の地域の映画界からは暴力的で悪趣味だと批判されるんです。でもそれは映画観の違いでしょうね。ベタでむき出しの大衆娯楽じゃなきゃ映画じゃないくらいに思ってるんじゃないでしょうか。テルグ映画人たちは。

―『バーフバリ』をきっかけにテルグ語に興味を持ったファンがいたそうですね。

実はテルグ語勉強会をすでに1回やったんですよ(笑)。“あまや座”で『バーフバリ』と『マガディーラ 勇者転生』を上映したときに、私がトークのゲストとして登壇していまして、そこで民たち(バーフバリファン)と初めて会ったんです。その後水戸映画祭で『バーフバリ 王の凱旋』完全版が上映された時にも来てくれて、上映後のオフ会でテルグ語を習いたい人たちが少なからずいるという話が出て。そこで、私がみなさんの暇と経済状態が許せば、水戸に来てくれればやりますよって言ったら、その中にかなり発信力のある方がいて。彼女が「それはいい!」っていうことで、Twitterで受講生を募集したんです。2018年11月の最初の土日月曜日、3日間連続で14人に教えました。私が書いた『基礎テルグ語』テキストを使って、最初から。書き取りから始まって、あとは本の使い方を最後に教えました。

―そもそも山田先生がテルグ語に出会って、その道を選んだ経緯は?

私は大学時代にインドの歴史を専攻しました。インドは面積的には西ヨーロッパくらいあるんですけど、広すぎるのでどこか自分の専門地域を持つことが多いんですね。どこにしようかと思ったときに、南インドのどこかを選ぼうと思ったんですよ。南インドの方が北インドより知られていないぶん面白そうかなって。私の性格として、ちょっと異質かもしれないっていう方が興味を感じるんです。自分と似てるとか、自分がよく知ってるところよりも知らないところの方が興味が向くので、それで一番知らないところに(笑)。そこから大学院に入り、博士課程在籍中に3年間インドに留学しました。

―そこから教授の道に?

そうですね。ですから私の専門は歴史なんです。イギリスの植民地時代の歴史で、民族運動時代の近代史。論文を書くために現地の資料を読む必要に迫られてテルグ語を習得したっというのが本当のところです。今は、茨城大学で、インドの歴史と世界史を教えています。いまの高校生って世界史をやらないで大学生になってしまう子もいるじゃないですか(笑)。だから1、2年生向けに世界史概論みたいなものをやって、ちょっと上にいくと南アジア史、いわゆるインド史をやって。それより上になると、ゼミでインド史をやっています。

-『バーフバリ』でインド映画や文化に興味を持った皆さんへ最後に一言お願いします。

『バーフバリ』をきっかけにいろんなインド映画を楽しんでほしいし、またインド映画からインドそのものへ興味を広げて楽しんでもらえたらいいなぁと思います。実はみなさんからの要望があるうちに、またテルグ語勉強会を開催できないかと考えています。正直『バーフバリ』が公開される以前、研究上の付き合いを別にすれば、テルグ文化の四方山話で盛り上がれる話相手は夫くらいしかいませんでした(笑)。でもそれが突如こんなに大勢のバーフバリファンが現れて、全員と友だちになりたいくらいです(笑)。目下いろいろ調整しているので告知までしばしお待ちください、って、最後は宣伝でした。(笑)

山田先生よりお借りした、貴重なテルグ映画に纏わる写真を大公開!

山田桂子先生のご自宅の障子はなんとテルグ語映画『バブーをさがせ!』(1998年)のインド版ポスター!ご自宅からもテルグ語愛が伝わってきます。

「あまや座さん応援企画」として カンパと引き換えに行った『バブーをさがせ!』インド版ポスター抽選会の様子。

テルグ語映画『愛と憎しみのデカン高原』(1997年)と『バブーをさがせ!』の日本での上映フィルム<『バーフバリ』字幕監修者が明かす!人気キメ台詞の誕生秘話など翻訳作業の舞台裏(2/3)

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