「マヒシュマティ王国は存在した」字幕監修者が解説!史実・神話・伝説が入り混じる『バーフバリ』の世界(1/3)

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ライター:BANGER!!! 編集部
「マヒシュマティ王国は存在した」字幕監修者が解説!史実・神話・伝説が入り混じる『バーフバリ』の世界(1/3)
『バーフバリ 王の凱旋』 ©ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.
『バーフバリ』シリーズの大ヒットにより、ここ日本でもマヒシュマティ王国の民(ファン)が急増中!ということで、同シリーズの字幕監修を務めた茨城大学人文社会科学部教授/インド文化研究家・山田桂子先生にインタビューを敢行! 『バーフバリ』の文化・歴史的背景を解説して頂いた。

神話の中には“嫉妬”や“裏切り”など、ドロドロした物語も

『バーフバリ 伝説誕生』 ©ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.

―『バーフバリ』の作品のモチーフについて解説して頂けますか?

S・S・ラージャマウリ監督もしばしば言っていますが、インドの神話とか説話には「マハーバーラタ」とか「ラーマーヤナ」といった有名な作品がいくつかあって、それは”戦争もの”なんですよ。その叙事詩にはメインのストーリーがあって、そこから枝分かれする物語がたくさんあります。枝物語の一つ一つは割と本筋と全然関係ない脱線した話もいっぱいあるんですが、インドではそういうものを子どもの頃から聞いて育っている。面白いのは、“嫉妬”とか“裏切り”とか、なんかそういうドロドロしたものがそのまんま物語になっていたりして。

子どもの頃から触れているので、すごく影響があるみたいです。ラージャマウリ監督は無神論者で、熱心なヒンドゥー教徒でもないんですけど、物語としては面白いと思うみたいですね。精神的な“原風景”って言うんですかね。原体験にそういう壮大な、宿命とか運命を背負って粛々と悲劇を生きていく人々、そういう話を子どもの頃から聞いて、泣いたり喜んだり感動したりする。あまりにも刷り込まれているので、みんなそこから逃れられないっていうのはあると思うんですよね。

もう1つは、神話は完全にフィクションじゃないですか。それ以外に実際に実在した歴史上の話もあって。例えば(『バーフバリ 伝説誕生』で)アスラム・カーンがカブール(アフガニスタン)の刀鍛冶に作らせた剣を売りに来ますよね。ああいう話なんかは結構史実というか、優れた剣が現れるんだけど結局は、カッタッパのインド製の剣のほうが切れ味抜群だったというお話です。何故なら、古代インドでダマスカス鋼という世界で最も切れる剣に加工できる鋼を産出していたからです。

『バーフバリ 王の凱旋』 ©ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.

―武器に対するこだわりがあるんですね。

そうそう、ダマスカス鋼の製法は今ではもう失われているんですよ。どうやって作ったかは謎なのですが、それが形骸化したものが、現在の包丁とかで波々の模様が入ってるものです。 あれがダマスカス模様なんです。失われた技術なんですがインド人はダマスカス鋼の存在を知っているので、歴史上のトリビアとして混ぜ込んでいるんですね。そういう史実の部分と、伝説や神話の部分と、いろんなものがごっちゃになっていて。人の名前とかも同じで、あとは地域の名前とか。

―“マヒシュマティ王国”は存在したんですか?

かつてマヒシュマティと呼ばれていた王国はあったんですよ。でも時代とかは全く別で、あと“クンタラ”もあったんです。歴史上にあったものを名前だけ持ってきて適当に散りばめてって感じなんです。それを日本史でやるとどうなっちゃうんだろう? と思うんですが、ちょっと変に聞こえますね。でもインド人にしてみると、どこかで聞き覚えのあるものが何らかの形で出ていくのって、面白いんでしょうね。

ただ時代設定的には銃が発明される前、つまり弓と剣の時代で、なおかつイスラム教徒がいるので大体13~15世紀くらいの間の話だと特定できる。あと地域的にも、光景としては砂漠みたいな荒涼としたところにこつ然とマヒシュマティの城郭がありますよね。あれはデカン高原の風景で、ちょっと荒涼としたところ。だから地域も大体ここら辺かな? っていうのは少しは特定できるんですね。

『バーフバリ 王の凱旋』 ©ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.

―インド文化が色濃く反映されていると感じるシーンはありますか?

『バーフバリ 王の凱旋』で、クンタラ王国がピンダリに襲われて戦いになりますよね。そのときにバーフバリが堤防を決壊させて洪水を起こしてクンタラを救うじゃないですか。あの堤防から大量に水が放出されるっていうのは、実際にインドで見られる光景なんですよ。インドにはものすごい巨大なダムがあって、雨期になると普段せき止めているところを全開にするんです。その大量の水が放流される光景があまりにも迫力があるので、観光資源になってるんですね。だからあれを見ると「あそこのダムでああいうの見たな」って、インド人だったらだいたい分かるんですよ。

あとバーフバリの黄金像についても、「こんな30メートルもの黄金像は今までなかった」っていうセリフがあるんですが、黄金ではないもののインドには30メートルを超える像が85個くらいあるんですよ。そういうものを建てるの好きなんですね。かなり奇想天外な設定ではあるんですが、インド人にとってはある程度既知のものなんです。だから『バーフバリ』のような映画が作れるし、それを見たことがない日本人にとっては新鮮に感じる。ということで、背後には現実味のあるインドが反映されているんです。

山田桂子先生とラージャマウリ監督/『バーフバリ 王の凱旋』完全版 PR来日時の写真

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『バーフバリ 王の凱旋』

数奇な運命に導かれた伝説の戦士バーフバリ。祖父、父、息子、3代に渡る、宇宙最強の愛と復讐を描くインド史上最大ヒットの大河アクション超大作。

制作年: 2017
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