バーフバリは踊りと破壊の神!?インド人が胸を高鳴らせたシーンとは/マヒシュマティ王国編(1/2)

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ライター:松岡環
バーフバリは踊りと破壊の神!?インド人が胸を高鳴らせたシーンとは/マヒシュマティ王国編(1/2)
『バーフバリ 伝説誕生』 ©ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.
インド映画は、人口の約8割を占めるヒンドゥー教の基礎知識を知っているとさらに楽しめる!『バーフバリ』の下敷きになったインドの古代叙事詩「マハーバーラタ」と共に、いろんな神様のキャラクターやエピソードについて、アジア映画研究者の松岡環さんが解説してくれた。

ヒンドゥー教の神を彷彿とさせるバーフバリ!

『バーフバリ 伝説誕生』 ©ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.

インド映画を見る時に、知っておくといろいろ楽しめるのがインドの宗教についての知識だ、ということを以前(インド映画の世界が広がるキーワードは?)書いたのだが、その中でも中心になってくるのがヒンドゥー教の基礎知識。ヒンドゥー教徒が幼い時から親しんできた神話や神様は、日本で言えば昔話のようなもの。桃ちゃん、金ちゃん、浦ちゃんの登場するCMが楽しめるのも、我々が日本の昔話に親しんでいるからだが、同様のことが『バーフバリ』2部作にも言える。『バーフバリ』が下敷きにしたインドの古代叙事詩「マハーバーラタ」と共に、いろんな神様のキャラクターやエピソードを知っておくと、さらに面白く『バーフバリ』の世界に入っていける。

シヴァ神がつかさどるマヒシュマティ王国

『バーフバリ 伝説誕生』(2015年)と『バーフバリ 王の凱旋』(2017年)は、架空の王国マヒシュマティが舞台となっている。このマヒシュマティ王国は、いろんな点から見ていくと、シヴァ神を信仰する人々の国ということがわかってくる。

ご承知のように、インドのヒンドゥー教には三大神―シヴァ神、ヴィシュヌ神、そしてブラフマー神が存在する。その中で、現在のインドで人気を二分するのがシヴァ神とヴィシュヌ神で、ヒンドゥー教徒はシヴァ派とヴィシュヌ派に大別される、と言っても過言ではない。『バーフバリ 伝説誕生』で最初に登場するのは赤ん坊を抱いた高貴な女性だが、のちに彼女の名前はシヴァガミだと呈示される。「シヴァガミ」とは、“シヴァ神の妻”または“シヴァ神に帰依する女性”という意味になる。

神が乗り移った大迫力の冒頭シーン

『バーフバリ 伝説誕生』 ©ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.

冒頭では、シヴァガミがその命と引き替えに赤ん坊を村人に托し、川に沈んでいくが、村長の妻サンガは助け上げた赤ん坊を「シヴドゥ」、つまり「シヴァ」と名付ける。シヴァ神は破壊をつかさどる神なので、この赤ん坊シヴドゥは、大きくなったら何かを破壊する運命を背負っていると推測がつく。

成人したシヴドゥはまず、育ての母サンガの願掛けの灌頂(かんじょう/水を頭頂に注ぐ儀式)を助けようとして、巨大なシヴァリンガを持ち上げ、滝の下に移すという一種の破壊行為をする。そうすれば、半永久的にシヴァリンガに水が注がれ、灌頂が続いて母の願いが叶うからだ。

シヴァリンガというのは、男性性器をかたどった突起と女性性器をかたどった受け皿からなる豊穣のシンボルで、シヴァ神像と同じように人々の信仰対象となる。岩場に固定されていたシヴァリンガの基礎を破壊し、怪力で持ち上げ、滝の所まで運んでいくシーンは、シヴドゥの身にシヴァ神が乗り移ったかと思えるような大迫力で、『バーフバリ 伝説誕生』開始早々の大きな見どころだ。

激しい踊りはまさに踊りの王を表現している

残念ながらインターナショナル版ではカットされているのだが、シヴァリンガを据え付けたあと、シヴドゥはその場で踊る。岩場を飛び跳ねるようにして踊るシヴドゥの姿は、ターンダヴァという激しい踊りを踊るシヴァ神を思い起こさせる。シヴァ神の別名、「ナタラージャ(踊りの王)」を彷彿させるシヴドゥの姿に、インド人観客は胸を高鳴らせたに違いない。

その後、運命に導かれるように、シヴドゥは幼い時からの懸案だった滝登りに挑戦して見事成功、マヒシュマティ王国へと歩を進める。シヴドゥは自分の本当の名前、マヘンドラ・バーフバリを取り戻したあと、カッタッパの語りによって過去の出来事を知り、バラーラデーヴァに戦いを挑む。『バーフバリ 王の凱旋』のラストでの熾烈な闘いで彼が破壊した物は、最後に滝の上から落下していき、かつてシヴドゥが据え付けたシヴァリンガの足下に流れ着く。何とも含蓄のあるエンディングである。

あちこちにちらばめられたシヴァ神のイメージ

『バーフバリ 伝説誕生』 ©ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.

『バーフバリ 伝説誕生』では、シヴドゥが聞かされる亡き父アマレンドラ・バーフバリの逸話がフラッシュバックで登場するが、アマレンドラと従兄のバラーラデーヴァが外敵カーラケーヤ族と戦うシーンでは、戦いの女神像が登場する。これはシヴァ神の妃である女神ドゥルガーに模してあり、シヴァ派を意識させると共に、女神のパワーを感じさせる登場となっている。シヴァ神の妃は、穏やかさを象徴するパールヴァティーを筆頭に数多くいるが、過激さを象徴するのがドゥルガーとカーリーで、ともに女神信仰のシンボルとして信者を集めている。また、『バーフバリ 王の凱旋』の冒頭では、山車に乗った象神ガネーシャも姿を現す。ガネーシャはシヴァとパールヴァティーの間の息子で、父親のシヴァ神よりも人気がある。こんな風に、シヴァ派の様々なアイコンを知っているだけでも、『バーフバリ』は倍楽しくなる。

文:松岡環

<2/2に続く>

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『バーフバリ 王の凱旋』

数奇な運命に導かれた伝説の戦士バーフバリ。祖父、父、息子、3代に渡る、宇宙最強の愛と復讐を描くインド史上最大ヒットの大河アクション超大作。

制作年: 2017
監督:
脚本:
出演:
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