市原隼人が明かす「自分の賞味期限」の真意とは? 殺人鬼を追う刑事を熱演『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』

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ライター:SYO
市原隼人が明かす「自分の賞味期限」の真意とは? 殺人鬼を追う刑事を熱演『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』
市原隼人

市原隼人が赤裸々に明かす、役者としての危機感とプレッシャー

映画デビュー作『リリイ・シュシュのすべて』から20年。俳優・市原隼人はいま何を思い、何に取り組んでいるのか?

ドラマ&映画『おいしい給食』(2019年)や『太陽は動かない』(2020年)、映画『ヤクザと家族 The Family』(2021年)ほか、近年ますます幅広いジャンルの作品に挑戦し、板垣李光人の写真集に写真家として参加するなど、多才ぶりを見せつけている市原。2021年6月18日(金)に公開される映画『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』(以下、『リカ』)では、高岡早紀演じる純愛モンスター・リカを追うなかで、彼女の魅力に囚われていく刑事・奥山に扮している。本作は2019年から続くドラマシリーズの劇場版。今回新たに加わった市原がもたらす“色”にも、注目だ。

『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』©2021映画『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』製作委員会

若きベテランの風格漂う市原だが、彼がインタビュー中に口にしたのは「役者としての賞味期限」というシリアスなワード。しかしそこには、自身の在り様をしっかりと見つめ、さらに上のステージへと踏み出さんとする挑戦心が詰まっていた。自分の意志を、言葉にして伝えるということ。「プレッシャーと共に生き続けるのが役者」という市原の含蓄ある語りを、じっくりと読み込んでいただきたい。

市原隼人

答えを出さずに演じるスリリングさが、『リカ』の世界観に通じる

―今作で市原さんが演じた奥山は、内面が描かれないキャラクターかと思います。どのように解釈し、補完していったのでしょう?

まず、リカをどのように捉えて演じていけばいいのかが最初の課題でした。そのなかで、リカは一見偏った人間に思えるけれど、実は極めて普遍的な“人間の本質”をさらけ出した姿なのではないか、と考えるようになりました。誰もが選択を間違えてリカのようになってしまう、彼女がたどったような運命を手繰り寄せてしまう可能性がある。

『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』©2021映画『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』製作委員会

奥山という人間も最初はリカに対して深い恨みを抱いていたのですが、彼女が「サイコパス」「猟奇殺人犯」と呼ばれるようになった理由を探るうち、彼女の幼いころの環境を知って以前のように恨むことが難しくなっていくんです。いわば奥山は常に逡巡の中にいる人間で、そういった人物を演じるにあたり、答えを出さずに行間で芝居することは難しかったです。

『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』©2021映画『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』製作委員会

奥山は警察官という立場ですから、中立的に人を見る。そんな人間がボーダーラインがわからなくなって、何が当たり前で普通で基準なのかを喪失してしまう。そうさせてしまうリカが恐ろしいと同時に、世の中は善も悪も表裏一体だと思わされました。善のために悪になるのが人間ですし、ルールにしたって人が決めたものですよね。法律や秩序は、人間が社会を形成してその中で生活していくために必要なもの。ただ、それが完全無欠の“答え”ではないと思うんです。答えがない中での危うさを演じる、そのスリリングさが実に『リカ』らしいなと感じました。

『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』©2021映画『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』製作委員会

役者としての「賞味期限」に対する危機感

―「答えのなさ」は市原さんの役者論と通じるかと思ったのですが、いかがでしょう?

役者って、音楽のように「チャート何位」といった指標があるわけじゃないので、だからこそ、僕は全ての人の芝居が正解だとも思っているんです。そのぶん、自分で目標を立ててアイデンティティを追求していかなければならない職業でもある。そうした意味で、おっしゃる通り常に答えがないし、迷いの中で生きていますね。

―市原さんは小学生から芸能活動をされていますが、そうした意識はどのようにして培ってきたのでしょうか。

役者という仕事とちゃんと向き合えてからです。「役者が何のためにあるのか」を実感したときに、自分がやらねばならないこととプレッシャーが一気に押し寄せてきました。そこから自分の人生が変わったように思います。

市原隼人

―プレッシャーを感じながら、どうやってこれほどまでの長い期間を表現し続けてきたのか、非常に気になります。

今でさえ、プレッシャーを乗り越えられているかどうかわからないんです(笑)。答えがないなか、プレッシャーと共に生き続けるのが役者だと思うんです。よく分からない涙が出てきたり、プレッシャーに押しつぶされそうになることなんてしょっちゅうですから。

ただ、それだけのものを抱えられているのは、ぜいたくな悩みだとも感じています。それは、自分の居場所があるということでもありますから。この居場所を大切にできるかどうかは自分次第だと思っているので、難しいけれど面白いですね。

市原隼人

―本作をはじめ、近年の市原さんは作品の内容的にも様々なチャレンジをされていると感じています。意識的に幅を広げているのでしょうか。

はい、自分で広げようとしています。20代前半に自分が納得できない仕事を断り続けていた時期もあり、気が付くと芝居から離れた時間がありました。今は、自分の考え方をもっと柔軟にして、どんなことでも挑戦し続けて吸収しなければならないと考えるようになってから、作品選びも変わっていった気がします。

同時に、仕事をいただくだけではなく自分で写真の個展の準備を始めたり、映像作品の企画を考えたりするようになったことで、やっと少し俯瞰で見られるようになってきたことも大きいです。そうなったときに、自分の賞味期限を感じるようになりました。

―賞味期限、ですか?

「まだまだだよ」と言ってくれる人もいますが、実際体力的にも感覚的にもできなくなってくることはたくさんあるんですよ。だからこそ、今、もっとアクションもやりたいなと感じています。身体的にも技を綺麗に見せられるのは、あと2~3年だと感じています。身体的な賞味期限が来る前に自分が納得できるアクションをできなければ、その後の役者人生も一生後悔するでしょうし、まだそれほどまでに追い込んだアクション映画に出会えていないと思っています。自分でも企画してはいますが、早くそうした全てをかけて燃え尽きる様な作品に挑みたいです。

―市原さんの限界突破アクションを観たいと思うと同時に、表現者としての危機感が伝わってきます。

僕は「芸術は爆発だ!」という感覚で日々生きているんですが、映画制作もぶつかり合っていいものを作ろうとする、熱や勢いが大切だと感じていまして。ただ、年を取っていくごとにだんだん小さく収まるようになってきてしまった。そのことも、危機感を抱いている要因ですね。その一つが、システムを理解しすぎてしまったことです。

市原隼人

自分自身の想いを発信できる場所を作っていく

―なるほど……。僕も市原さんと同い年なので、非常によく分かります。社会の中での自分の立場を把握しすぎると、聞き分けがよくなるぶん爆発力が失われてしまうんですよね。

特に僕らの世代は、昔だったら根性論で通ってきたものがなくなってきて、「もっと人間よりもビジネスを見よう」という感覚にスライドしてきたところがありますよね。そうすると人間くささが薄れてきて、それはそれで悔しい部分があります。

業界に入ってから20年間で、色々なものが変わってきました。労働基準法の改正がまず大きいですよね。会社も人や規範や色々なものを守らなくてはならなくなって、それは大事なことなのですが、ものづくりにおいては必ずしもプラスにならない変化も生まれてしまった。効率化を推し進めた結果、エンターテインメントの場において集団で詰め続けることが少なくなってきていたり。分かりやすいところでいうと、「ものづくりに没頭して2時間しか寝られない」という状況が許されなくなった。顔を合わせて話すことが少なくなってくると、全員で「この山に登る」という情報共有がなかなかできなくなってきますよね。

これからもどんどんコンプライアンスが叫ばれるようになって、表現できる場所も少なくなっていくような気がする。それが悪いと言っているわけではなく、僕らはもっとそこを考えて動いていかなければならない。

市原隼人

―いまの市原さんにとって、ご自身が「目指す先」は、明確に見えているのでしょうか。

見えているものもあります。特に、“自分”をどう伝えていくかをずっと考えています。

たとえばメディアを通して自分が何かを発信するときは、その作品についてや、役柄を通してお話させていただくことが多いですが、そうすると作品を通しての自分しか伝えられないし、「役者」としての話になります。そうではない場で自分が思っているものをしっかり提示できる機会がほしいと思い、写真に言葉を載せたような展示会を今は考えています。

―面白そう! ぜひ拝見したいです。そして、作品の取材以外の「想いを聞く・届ける場」はライターとしても切望しています……。

もっと話ができる機会があるといいですよね。お互いに色々なものを提示して、様々なテーマを話すことで本質が見えてくることも多いから、そういう風に僕らも関われたら、もっと面白いことができる。色々と試していきたいですね。

今回お話しした内容には、やっぱり大前提として「お客様に楽しんでいただきたい」があるんですよ。どうしたらもっと楽しんでもらえるのか、そこを第一にもっともっと考えて、挑戦し続けていきたいです。

市原隼人

取材・文:SYO
撮影:川野結李歌

『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』は2021年6月18日(金)より全国公開

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『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』

山中でスーツケースに入った死体が発見された。被害者の身元は、3年前、逃走犯の雨宮リカに拉致され行方不明になっていた本間。警視庁捜査一課の奥山は、潜伏中のリカをおびき寄せるため、偽名を使いマッチングアプリでリカを探し出すことに成功。次第に“純愛モンスター”リカにのめり込んでいく。

「やっと会える、雨宮リカ」―捜査と共にリカにのめり込んでいく奥山を心配する婚約者の孝子は、同僚の尚美と共に彼の部屋へと向かうのだが……。

制作年: 2021
監督:
出演:
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