第93回アカデミー賞を大予想! 今すぐ観られる作品多数!!『ノマドランド』『ミナリ』アジア勢ダブル快挙なるか?

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ライター:齋藤敦子
第93回アカデミー賞を大予想! 今すぐ観られる作品多数!!『ノマドランド』『ミナリ』アジア勢ダブル快挙なるか?
『ノマドランド』© 2020 20th Century Studios. All rights reserved.

あの最多ノミネート作品は期待薄?

第93回アカデミー賞のノミネート作品が2021年3月15日に発表になった。コロナ禍により例年よりも2か月遅れ、したがって授賞式も2か月遅れる。今回の特徴はコロナの影響がはっきり現れたこと。昨年来の映画館の閉鎖で、公開された作品が激減し、配信作品を含めても対象となる作品が少なかった。

その結果、よく言えば粒ぞろい、悪く言えばどんぐりの背比べ的な顔ぶれになった。最も顕著な現象は、配信が映画界の中心になったことだ。近年、映画のデジタル化でフィルムが消えると共に、映画業界の形態が徐々に変わりつつあったが、このコロナ禍で堰が切れたようにオンライン化が進み、もう元に戻れないところにまで来ている。

最多10部門ノミネートを果たしたのは、デヴィッド・フィンチャー監督のNetflixオリジナル作品『マンク Mank』だった。マンクとは、オーソン・ウェルズの名作『市民ケーン』(1941年)の脚本家ハーマン・J・マンキウィッツのこと。ケーンのモデルとなった新聞王ランドルフ・ハーストとマンキウィッツの対立を軸に、夢の工場ハリウッドの現実を活写していく。ただ、同年2月28日のゴールデングローブ賞で最多ノミネートながら無冠に終わっていることからも分かるように、満遍なく票はとれるが、突出した部分が見当たらない。

『マンク』に続くのは、6部門ノミネートの『ノマドランド』『シカゴ7裁判』『ミナリ』『ファーザー』『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』『Judas and the Black Messiah(原題)』の6作品だ。

大本命『ノマドランド』『ミナリ』のアジア対決

『ノマドランド』(2021年3月26日より公開中)は、2020年の第77回ヴェネツィア映画祭で金獅子賞を受賞。主演のフランシス・マクドーマンドが主演とプロデュースを兼ね、マクドーマンド自身が実際に車上生活者=ノマドとなって本物のノマドたちと作り上げた、いわゆるドキュドラマ。今回の作品賞と主演女優賞の本命だ。主演女優賞の最多受賞はキャサリン・ヘプバーンの4度だが、マクドーマンドが受賞すれば3度目で、メリル・ストリープの2度を抜き、歴代2位となる。

『ミナリ』(2021年3月19日より公開中)は監督のリー・アイザック・チョンが荒れ地に入植して辛酸を舐めた自分の家族の物語を映画化したもの。チョンの演出はオーソドックスで手堅いが、最も有力なのは韓国映画界きっての名女優ユン・ヨジョンの助演女優賞だろう。

『シカゴ7裁判』(Netflixで独占配信中)は、1968年のシカゴで開かれた民主党大会で起きた騒乱事件の首謀者とされた反戦活動家7人の裁判を、名脚本家アーロン・ソーキンが自ら映画化。出演者の中から唯一サーシャ・バロン・コーエンが助演男優賞にノミネートされているが、さすがに受賞は難しいだろう。

ベテランから若手まで甲乙つけがたい実力派男優陣

『ファーザー』(2021年5月14日公開予定)は、フロリアン・ゼレールが自分の戯曲を映画化したもの。日本でも2019年に橋爪功主演で「Le Père 父」の題で上演された。認知症で次第に周囲が分からなくなっていく父親の視点で老いを描くもの。父親をアンソニー・ホプキンス、娘をオリヴィア・コールマンというアカデミー賞受賞コンビが演じている。

『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』(Amazon Prime Videoで独占配信中)は、耳の聞こえなくなったドラマーがインプラント手術で聴力を取り戻そうとする姿を通して、聞こえること/聞こえないことの意味を問う。リズ・アーメッドが主演男優賞に、手話演技の第一人者ポール・レイシーが助演男優賞にノミネートされた。

ダークホースといえるのは『Judas and the Black Messiah(原題)』(日本公開日未定)だ。ブラックパンサー党の指導者フレッド・ハンプトンの暗殺事件を描いた実録もので、題名はハンプトンを黒人の救世主(メシア)、警察の手先となってハンプトンに近づくウィリアム・オニールを裏切り者(ユダ)に例えたもの。ハンプトン役のダニエル・カルーヤとオニール役のラキース・スタンフィールドが揃って助演男優賞にノミネートされたが、主演でなく助演というところが謎だ。

この6作に続く5部門ノミネートが英国の女優/脚本家、エメラルド・フェネルの監督デビュー作『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2021年夏公開予定)で、未来を奪われた“前途有望な若い女性”キャシーが男たちに復讐するブラックコメディ。フェネルが監督賞と脚本賞、キャリー・マリガンが主演女優賞にノミネートされている。

アカデミー賞にも社会的・政治的問題への発言が求められている

さて、私の予想で最も確実と思われるのはNetflixオリジナル作品『マ・レイニーのブラックボトム』(Netflixで独占配信中)でトランペット奏者を演じたチャドウィック・ボーズマンの主演男優賞。2020年8月に癌で亡くなったボーズマンを抑えて、他の誰かが受賞するのは至難の業だ。

続いてフランシス・マクドーマンドの主演女優賞、ダニエル・カルーヤの助演男優賞、ユン・ヨジョンの助演女優賞、『TENET テネット』(U-NEXTほか配信中)の視覚効果賞、トマス・ヴィンターベア監督『アナザーラウンド』(2021年9月3日公開予定)の国際長編映画賞、『ソウルフル・ワールド』(ディズニープラスで独占配信中)の長編アニメ賞だ。

作品賞と監督賞は『ノマドランド』対『ミナリ』のアジア対決になるはずだが、作品を見た上で判断すると、2賞とも『ノマドランド』に軍配を揚げる。

『ノマドランド』© 2020 20th Century Studios. All rights reserved.

2021年のノミネート作品を見ると、2017年から始まった#MeToo運動の女性問題、2020年5月のジョージ・フロイド事件をきっかけに再燃するBlack Lives Matter(BLM)の黒人差別問題、そしてごく最近、コロナ禍で深刻化してきたアジア系住民への迫害という3つの政治的要素が影を落としていることがわかる。アカデミー賞にも社会に向かって発言することが求められており、その責任を意識していることの現れだろう。

文:齋藤敦子

第93回アカデミー賞は2021年4月25日(日本時間26日)開催

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