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『チャリチョコ』原作者×ゼメキス×デル・トロ! A・ハサウェイ主演『魔女がいっぱい』はダークなクリスマス・ファンタジー

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ライター:#齋藤敦子
『チャリチョコ』原作者×ゼメキス×デル・トロ! A・ハサウェイ主演『魔女がいっぱい』はダークなクリスマス・ファンタジー
『魔女がいっぱい』©2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

クリスマスはファンタジーである。何しろサンタクロースという太った白髪のおじいさんが、トナカイの引くソリに乗って世界中の空を駆け巡るのだから。嬉しいのはキリスト教徒でなくても、デコレーションケーキを食べたり、あわよくばプレゼントを貰えたりすること。クリスマスは心が広いのだ。

映画業界にはクリスマス映画というジャンルがあって、昔からシーズンに合わせて“心温まる”ファミリー向けの映画がたくさん作られてきた。古くはニューヨークのメイシーズ百貨店に本物のサンタが現れる『三十四丁目の奇蹟』(1947年)や、ビング・クロスビーの歌う主題歌が大ヒットした『ホワイト・クリスマス』(1954年)から、『ダイ・ハード』(1988年)や『ホームアローン』(1990年)なども広い意味でクリスマス映画に入るだろう。

『魔女がいっぱい』は“ファンタジスタ3人衆”夢の顔合わせによるダーク・ファンタジー

ロバート・ゼメキスの新作『魔女がいっぱい』もまた、クリスマス・シーズンに家族で見るのにぴったりのファンタジー映画だ。ただし、監督がゼメキスだし、小さな子どもなら泣きだしてしまいそうな怖い場面もあるのでご用心。

『魔女がいっぱい』©2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

物語はこんな風に始まる。交通事故で両親を失った“ぼく”(ジャジール・ブルーノ)は、母方のおばあちゃん(オクタヴィア・スペンサー)に引き取られる。ショックで心を閉ざしたぼくを、おばあちゃんはあの手この手で慰め、友達代わりにと白ネズミをペットに飼ってくれる。おばあちゃんは民間療法に通じ、魔女に詳しい。この世には大勢の魔女が潜んでいて、大嫌いな子どもをネズミに変えてしまうのだと言い、魔女に目をつけられたぼくを連れ、つてを頼って南部のホテルへ。

『魔女がいっぱい』©2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

ところが、事なかれ主義の支配人ミスター・ストリンガー(スタンリー・トゥッチ)のいる、その豪華リゾートホテルに、大魔女グランド・ウィッチ(アン・ハサウェイ)に率いられた大勢の魔女たちが乗り込んでくる。ホテルの大広間で世界中の子どもをネズミに変えるための集会が開かれるのだ。うっかり大広間に入りこんだぼくは、ついに見つかってネズミに変えられてしまうのだが……。

『魔女がいっぱい』©2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

原作は、ティム・バートンの『チャーリーとチョコレート工場』(2005年)やウェス・アンダーソンの『ファンタスティック Mr.FOX』(2009年)などで知られる作家のロアルド・ダールだ。ダールは1916年イギリス生まれで(1990年没)、第二次大戦中は空軍のパイロットだった。パイロットで文学者というと「星の王子さま」のアントワーヌ・ド・サン=デグジュペリと同じだが、サン=テグジュペリは撃墜されて戦死し、ダールは不時着、生還して、そのときの体験を書いた短編で作家デビューした。ダールの小説にはブラックで奇妙なユーモアがあるが、子ども向けに書かれた童話にもその持ち味が引き継がれ、”めでだしめでたし”では終わらない、不思議なテイストが持ち味になっている。

ロバート・ゼメキスは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3部作(1985~1990年)や『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994年)などを次々ヒットさせていたスター監督の時代から、CGと実写を融合させた作品に取り組んできた。最近ではフィギュアの世界と現実がクロスする『マーウェン』(2018年)のような奇妙な映画を撮っている。

『魔女がいっぱい』は特撮の経験豊かなゼメキスに、『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017年)のギレルモ・デル・トロが脚本と製作で助っ人に加わった。デル・トロといえば少女の夢の世界に現実の悪夢が忍び込む『パンズ・ラビリンス』(2006年)という傑作があり、このダール×ゼメキス×デル・トロという“ファンタジスタ3人衆”の夢の顔合わせによってダークな味わいが倍増した、“本当は怖い”おとぎ話になったと私は思う。

『魔女がいっぱい』©2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

アン・ハサウェイ&オクタヴィア・スペンサー! 名女優たちが貫禄の演技で物語を支える

映画の見どころは、何と言っても大魔女を演じるアン・ハサウェイにある。きれいな人が怖くなると本当に怖いということがよく分かる。それにしても、こんな怖ろしい役(しかも特殊メイクは、さぞ大変だったろう)をよくも楽しげに演じられるものだ。彼女の役者根性には脱帽する。

『魔女がいっぱい』©2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

対するのは、おばあちゃんを演じた名女優オクタヴィア・スペンサー。『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』(2011年)で第84回アカデミー賞助演女優賞受賞、『シェイプ・オブ・ウォーター』でもその演技が絶賛された。何事にも動じず、理解があり、頼りになるおばあちゃん役にぴったり。そして、支配人役のスタンリー・トゥッチは、映画と舞台で活躍する名優で、監督作もあり、料理本もベストセラーという才人。アン・ハサウェイとは2006年の『プラダを着た悪魔』でも共演している。

『魔女がいっぱい』©2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

アン・ハサウェイというと、私は『レイチェルの結婚』(2008年)がコンペに出品された第65回ヴェネツィア映画祭でジョナサン・デミが彼女を絶賛していたことを思い出す。『プラダ~』では駆け出しのファッション誌編集員、『レイチェル~』では家族の厄介者だった彼女が、今や世界中の魔女の頂点に立つ大魔女を貫禄で演じている。天国でデミもさぞ目を細めていることだろう。

文:齋藤敦子

『魔女がいっぱい』は2020年12月4日(金)より全国公開

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『魔女がいっぱい』

60年代――とある豪華ホテルに現れたおしゃれな美女の集団。中心にいる、最も美しく世界一恐ろしい大魔女<グランド・ウィッチ>は、そこであるとてつもない秘密の計画があることを明かす。偶然ある少年は魔女集会に紛れ、その企みを知ってしまう。大魔女が少年をネズミに変えたことで、物語は世界中の魔女を巻き込んで思いもよらぬ方向へ――。

制作年: 2020
監督:
出演:
声の出演: