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『007』のサントラにハズレなし! 初期シリーズを数々の名曲で彩った作曲家たちのイイ仕事&トリビアを紹介

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ライター:#早川優
『007』のサントラにハズレなし! 初期シリーズを数々の名曲で彩った作曲家たちのイイ仕事&トリビアを紹介
UNITED ARTISTS / Allstar Picture Library / Zeta Image

『007』映画シリーズの中で『007/ロシアより愛をこめて』(1963年)は常に人気上位を誇り、歴代ベストに挙げるファンも多い。かつて本作が賛否両論だったことも今は昔。原作ファンの中には、東側に配慮して敵側の黒幕にスペクターを設定した趣向に失望を表明した向きも少なくなかったのだ。

しかし、冷戦も過去の歴史となった現代の視点からは、クラシック・ボンド映画の決定版として各種の人気投票で安定して上位を占める作品となった。皆さんもご存じの通り、CS映画専門チャンネル ムービープラスで行われた人気投票でも堂々の1位を獲得。それは、強靭な肉体をもった好敵手、危険な香りを纏ったボンドガール、魅力的な特殊装備など、その後のボンド映画のベースとなった基本要素によるところが大きい。そして、音楽に関しても然り。第1作で提示された『007』サウンドの胚芽は本作で大きく花開き、「『007』映画のサントラに外れなし」という安心のブランドへと成長していく。

『007』の音楽といえば? J・バリーやM・ノーマンらが残した名曲たち

第1作『007/ドクター・ノオ』こと『007は殺しの番号(公開時邦題)』(1962年)で、英国の秘密探偵ボンド氏とともにテーマ音楽として銀幕デビューを果たし、あっという間にボンド映画の名刺代わりとなったモンティ・ノーマン作曲の「ジェイムズ・ボンドのテーマ」は本作でも健在。前作では、当初ミステリアスなシーンの背景音楽として僅かに用いられていた断片から、映画の公開直前にジョン・バリーが招かれて、イキのいいビッグ・バンド・スタイルにアレンジしてみせた経緯がある。ちなみに本来ノーマンが想定していたボンドのテーマ音楽は、サントラ盤で聴くことができる。

次に、本作では明確な主題歌を設定。作詩と作曲は舞台音楽出身のライオネル・バートに委ねられた。歌うはイギリスを代表するシンガー、マット・モンロー。実力派歌手、もしくは話題の歌手にテーマソング歌唱を委ねるパターンは、大物俳優に白羽の矢を立てる敵役とともに、シリーズの定番要素となる。歌手にモンローを推挙したのは、シンガーソングライターでありモンローのマネージメントも行っていたドン・ブラック。バリーともかねてからの知り合いで、後に『007/サンダーボール作戦』(1965年)の作詩も手掛けることになるほか、ブラック、バリー、モンローのトリオは『野生のエルザ』(1965年)の主題歌「ボーン・フリー」でアカデミー主題歌賞を手に入れることになる。

主題歌の編曲は、イオン・プロにとって『ロシア~』の一つ前の作品であり、本作中に映画看板が登場する『腰抜けアフリカ博士』(1963年)でモンティ・ノーマンと組んだジョニー・スペンス。プロデュースは英EMIでザ・ビートルズを担当し、後に『007/死ぬのは奴らだ』(1973年)でボンド・コンポーザーに就任するジョージ・マーティンである。

本曲は劇中のボンドのデートシーンとエンディングで流れるが、『007/ゴールドフィンガー』(1964年)からは、映画題名が歌われるのに合わせてタイトルが映し出されるタイトル・バックと、エンディング・クレジットに流れることが定番となる。なお、ライオネル・バートは、この後『サンダーボール作戦』の主題歌のコンペにも参加しているが、未採用に終わっている。

以上、二つのモティーフを中心に、その他の劇中音楽の作曲、編曲、指揮の一切を担当したのは、もちろんジョン・バリー。前作の公開直前にアレンジャーとして「ジェイムズ・ボンドのテーマ」を生み出し、山椒を振りかけるがごとく作品をピリッと引き締めた功労者として、ボンド映画になくてはならない最重要スタッフの一人となる。ボンドがイスタンブールに到着するシーンでは、「ジェイムズ・ボンドのテーマ」の「ボンドとボンゴ」と題されたニュー・アレンジを披露。前作で録音したオリジナル・バージョンもホテルにチェックインするくだりでたっぷり聴かせてくれる。

アレンジャーにとどまらないジョン・バリーによる名曲群! あのアーティストによる日本語カバーも……?

特筆すべきは、バリーがボンドのためのセカンド・テーマとして「007」を描き下ろしたこと。ティンパニーの規則的な連打に始まる本曲は、金管の軽快なパッセージを経て、やがて流麗なメロディをオーケストラが奏でていくスケール感にあふれたナンバーだ。バリーにとって、便利なアレンジャー役にとどまらず、作曲家としてボンド映画に爪痕を残さんとするような熱意に満ちた1曲であり、本作のジプシー・キャンプの襲撃シーンと、レクター強奪シーンに使用された。後々、『サンダーボール作戦』、『007は二度死ぬ』(1967年)『007/ダイヤモンドは永遠に』(1971年)、そして『007/ムーンレイカー』(1979年)で、集団戦や乗り物系の秘密兵器を駆使したボンドの活躍シーンを彩った。ノーマンのテーマが冒頭のガンバレル以下、ボンドの活動再開を静かに告げるプロローグ曲であれば、「007」はいよいよ始まる壮大なアクションシーンの音楽という位置づけであり、二つのテーマは絶妙に差別化を図られて用いられているのだ。

バリーはその他、敵組織スペクターのためにハープとビブラフォンがアンニュイに共鳴するテーマ曲を用意。ジプシー・キャンプでのキャット・ファイト・シーンに書かれた「ガール・トラブル」も印象深い。主題歌のメロディに関しては、ボンドとタチアナのラブシーンでは甘く、ケリムの死では弦がむせび泣くような哀しいアレンジで、と変幻自在に随所に配する職人技をみせる。

一方、印象的に残るシーンながら、ボンドとグラントの死闘シーン用に音楽が作曲されるも最終作品ではオミットされてもいる。現実音だけに絞った方がよりサスペンスを盛り上げるという演出側の配慮だろう。このシーンのために書かれた「グラントの死」はサントラ盤で聴くことが出来る。また、クライマックスのボンドのベニスへの脱出シーンでは、ヘリコプターを狙撃するくだりと敵ボートが炎に包まるくだりで、『ドクター・ノオ』でノオ博士が絶命する場面のノーマンによる音楽が再使用されている。

レコードについて見ていくと、『ドクター・ノオ』では「ジェイムズ・ボンドのテーマ」が評判を呼び、ジョン・バリーがサントラとは別に再録音したシングル盤がリリースされた。サントラ・アルバムに関しては映画のヒットを受けて、アメリカで『ロシア~』公開直前に発売された経緯がある。打って変わって本作の関連レコードは本国イギリスでも活況を呈し、映画の公開に合わせて主題歌シングルがEMIのパーロフォン・レーベルから、サントラ・アルバムが配給元のユナイテッド・アーティストのレコード部門から、そしてバリーの自作自演盤シングルがディレクター契約をしていたエンバーからリリースされた。

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主題歌がドラマティックな甘いバラードということで、全世界で様々なアーティストが歌入り/インストにかかわらずカバー録音。現時点で130種類ほどの録音が確認されている。日本では日本語カバーとしてキングレコードの紀本ヨシオ盤がある。これはヒライワ・タカシが訳詞を、日本のジャズ・アレンジャーの草分けでありテレビ映画「怪獣王子」(1967年)も手がけた半間巌一の編曲による。そして、今や映画から生まれたスタンダード・ナンバーのひとつとして世界中で親しまれている。

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<Part 2>へ続く

文:早川優

『007』シリーズはCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年11月放送

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