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11月は毎日『007』放送! ファン人気投票の結果から愛される所以を考察(とっておきトリビアつき!!)

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11月は毎日『007』放送! ファン人気投票の結果から愛される所以を考察(とっておきトリビアつき!!)
UNITED ARTISTS / Allstar Picture Library / Zeta Image

そんな『ロシアより愛をこめて』のトリビアだが、アバンタイトルでロバート・ショウ演じるレッド・グラントはボンドのお面をかぶった暗殺訓練の相手を1分52秒で始末する。もはやファンの間では都市伝説のような話だが、実はこの時間、いよいよ実戦となったオリエント急行での格闘時間と全く同じである。ストップウォッチ片手にボンドのアタッシュケースが催涙ガスを噴出したときから、グラントが息絶えるまでの時間を測ってみて欲しい。編集を担当したピーター・ハントが仕込んだ洒落なのか、奇跡的な偶然なのか。

『007/カジノ・ロワイヤル』ベニスを爆破してクレームが!?

第2位の『007/スカイフォール』(2012年)も順当な結果だろう。シリーズ最高の世界興行収入であり、本作をもって『007』は芸術作品に昇華できることをサム・メンデス監督は証明したのだ。

第3位に『007/カジノ・ロワイヤル』。決して番外編の1967年版ではない。筆者としてはダニエル・クレイグ四部作(最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年公開)で五部作となるが)では圧倒的に好きである。ヴェスパーとの別れのシーンは何度見ても泣ける。ベニスで水没する運河沿いの建物があまりにリアルで、「歴史的な建造物を破壊するとは何事だ!」と映画を見た人からクレームが入ったらしいが、精巧に作られた模型である(それでもかなり大きな野外セットを組んで撮影が行われた)。

「ウルトラセブン」で円谷プロが『007は二度死ぬ』にオマージュ!

第4位の『007は二度死ぬ』(1967年)は、今回の投票での最初のサプライズだ。かつては国辱映画とこき下ろされ、トンデモB級映画と揶揄する評論家が今でも圧倒的に多い本作が、見事ベスト10入りしたことに感動を覚える。しかし『007』シリーズであることを一旦忘れて単体映画として見たときに、これほど日本をフェアに扱っている欧米映画はないだろう。皆さんには昨今流行りの聖地巡礼、ロケ地訪問をお勧めする。そして、当時出演されたニンジャ役の皆さんや撮影スタッフの生の声を聞いたら、きっと本作の苦労、そして素晴らしさが理解できるはず。筆者は日本人として『二度死ぬ』の名誉挽回のために、これからも努力を惜しまないつもりだ。

トリビアとしては、ヘンダーソンの殺し屋として「帰ってきたウルトラマン」(1971年)のスーツアクターとして有名なきくち英一さんが出演しているのは、もはやボンドファンには常識だろう。そのきくちさんが、1968年の正月に放送された「ウルトラセブン」の第14・15話「ウルトラ警備隊西へ 前編・後編」でセブンのスーツアクターとして出演している。キングジョーが神戸港で大暴れしたり、謎の外国人スパイが出てくるのは円谷プロが『二度死ぬ』に捧げたオマージュであろう。

ムーア版ボンド『美しき獲物たち』のランクインは最大のサプライズ!?

第5位の『007/ゴールドフィンガー』(1964年)も、ベスト10選出の際には常連作品なので順当といえる。プッシー・ガロアを演じたオナー・ブラックマンは先日逝去された。彼女を悼み放送を楽しみにしているファンも多いことだろう。

第6位の『007 スペクター』(2015年)は最新作の公開が近いこともあり、レア・セドゥも続投していることから復習の意味で見直すのも一考だ。ディズニーの『リメンバー・ミー』(2017年)と並んでメキシコ・シティの“死者の日”を全世界に広めた功績は計り知れない。いま話題の韓流ドラマ「梨泰院クラス」(2020年)の第2話でもハロウィンの仮装でガイコツ姿の若者が登場するが、筆者は『スペクター』を意識していたと信じている。

第7位の『007/ゴールデンアイ』(1995年)もピアース・ブロスナン四部作の中ではダントツに好きだ。権利問題のゴタゴタで、ファンは『007/消されたライセンス』(1989年)からシリーズ最長の6年も待たされたが、ハンサムなブロスナンのアクションのキレが抜群で、宇宙スケールの壮大な物語は熱狂的に受け入れられた。いまや大物俳優のショーン・ビーンやファムケ・ヤンセンの出世作でもある。

第8位の『007/美しき獲物たち』(1985年)は今回最大のサプライズだ。仮にロジャー・ムーアの作品までの14作の中で選ぶとしたらベスト10に入る可能性もあるだろうが、シリーズ全24作の中で8位に食い込んだとは、もはや“事件”である。一般的にムーアの作品から選ぶなら『007/私を愛したスパイ』(1977年)が順当だろうから、海外のファンもこの結果に驚くはずだ。若きクリストファー・ウォーケンの熱烈なファンの組織票が入ったのだろうか? 投票者のコメントをすべて拝見させて欲しいくらいだ。

ところで、いまや若者のウィンター・スポーツといえばスノボだが、本作でボンドは35年前に超絶テクニックを披露している。2020年にイギリスでドラマ化されたスパイ・アクション『アレックス・ライダー』にも同じように即席スノボでのアクション・シーンが用意されているので、ぜひ見比べて欲しい。また、ボンドが女性に手料理を振る舞うシーンも珍しい。まるで「私の家政夫ナギサさん」(2020年)を見るようで、なんとも微笑ましいではないか。

『ドクター・ノオ』当時32歳のコネリーの貫禄! 映画界における奇跡の瞬間を見よ

同じく第8位の『007/リビング・デイライツ』(1987年)も順当にベスト10入りした。二作だけで降板したが、硬派で優しいティモシー・ダルトンの魅力が最近見直されているのはファンとして喜ばしい。ダニエル・クレイグのボンドの原型とも言えるが、時代がやっとダルトンのボンドに追いついてきたと言えるだろう。

第10位には、記念すべきシリーズ第一作『007/ドクター・ノオ』(1962年)が滑り込みランクイン。ショーン・コネリー作品が4本選ばれたのは初代ボンドの面目躍如といったところか。カジノのシーンでタバコをくわえながら「ボンド、ジェームズ・ボンド」と名乗る、当時弱冠32歳のコネリーの貫禄といったら! この年齢であの雰囲気を醸し出す俳優は後にも先にも彼しかいないであろう。

彼がこの世に存在したからこそ、その後『007』シリーズが58年も続いたと言える。映画界における奇跡の瞬間を皆さんも、とくとご覧いただきたい。

文:村井慎一(ボンド命)

『007』シリーズはCS映画専門チャンネル ムービープラスで11月放送

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