独裁者を爆殺し損ねた男の真実の物語『ヒトラー暗殺、13分の誤算』

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ライター:BANGER!!! 編集部
独裁者を爆殺し損ねた男の真実の物語『ヒトラー暗殺、13分の誤算』
『ヒトラー暗殺、13分の誤算』©2015 LUCKY BIRD PICTURES GMBH, DELPHI MEDIEN GMBH, PHILIPP FILMPRODUCTION GMBH & CO.KG

悪名高き独裁者の真の姿を描いた『ヒトラー ~最期の12日間~』(2004年)のオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督が、再びナチス・ドイツをテーマに描いた『ヒトラー暗殺、13分の誤算』(2015年)。ごく普通のドイツ国民による独裁者暗殺計画……つまり歴史を“変え損ねた”男を全世界に紹介する、事実に基づく衝撃作である。

『ヒトラー暗殺、13分の誤算』
発売中
価格:DVD ¥1,143+税/Blu-ray ¥2,000+税
発売・販売元:ギャガ
©2015 LUCKY BIRD PICTURES GMBH, DELPHI MEDIEN GMBH, PHILIPP FILMPRODUCTION GMBH & CO.KG

実話ベースながら驚き満載! 暴力装置と化した国家に戦いを挑んだ男の物語

本作の主人公は、家具職人として働くゲオルク・エルザーという男性。物語はナチス・ドイツが第二次大戦を引き起こした1939年、ヒトラーが演説をぶっていた会場でゲオルクが仕掛けた爆弾が爆発するシーンから始まる。ヒトラーがいつもより13分早く演説を切り上げたためこの暗殺計画は失敗に終わるのだが、そこから逮捕~尋問~拷問のシーンを通して、ゲオルクがヒトラー暗殺を企てるに至る経緯を描いていく……というのが基本構成だ。

『ヒトラー暗殺、13分の誤算』©2015 LUCKY BIRD PICTURES GMBH, DELPHI MEDIEN GMBH, PHILIPP FILMPRODUCTION GMBH & CO.KG

実話なのでネタバレもなにもないのだが、この遡り(&交互)構成がゲオルクという人物への興味を掻き立て、また平和だった頃のキャッキャウフフな描写で胸を抉ってくる。そして素人仕事とは思えない精巧な爆弾と綿密な計画に対し、ナチスが“背後関係”を徹底的に疑ったこと、しかし結局はたった一人の男が成し遂げた行為だったことなど、史実とはいえ驚きの事実が満載だ。

『ヒトラー暗殺、13分の誤算』©2015 LUCKY BIRD PICTURES GMBH, DELPHI MEDIEN GMBH, PHILIPP FILMPRODUCTION GMBH & CO.KG

メルケル首相が公式に追悼! たった一人でナチズムに抵抗したゲオルク・エルザーの真実

「ヒトラーがもっとも恐れた男」という本作の謳い文句は刺激的だが、これはハッタリでも大げさな惹句でもない。過激な政治思想がなく、ましてや敵対国の諜報員や無差別なテロリストなんかでもなく、いちドイツ国民による犯行……つまり極端な形での“良心”の発露であったこの事件は、彼のような国民が増えれば国の根幹を揺るがすことになるのだから、ナチス・ドイツにとって脅威そのものだったはずだ。この事件を長らく隠されていた理由もそこにあるだろう。

『ヒトラー暗殺、13分の誤算』©2015 LUCKY BIRD PICTURES GMBH, DELPHI MEDIEN GMBH, PHILIPP FILMPRODUCTION GMBH & CO.KG

ゲオルクはかなり早い段階で戦争の激化を予想していたことになるが、終戦間近、敗戦が決定的になってから起こった“いまさら”なクーデターに対しては、冷ややかな感情を抱いているドイツ国民が多いという(本作でもSSのアルトゥール・ネーベとのやり取りや悲惨な最期を通してその感情が理解できるようになっている)。2014年にはメルケル首相が<ドイツ抵抗記念館(German Resistance Memorial Center)>でゲオルクを公式に追悼し、改めて人種差別や過激なナショナリズムの撤廃を訴えたことからも、たった一人で抵抗したゲオルクが後世に残した影響が伺い知れる。

『ヒトラー暗殺、13分の誤算』©2015 LUCKY BIRD PICTURES GMBH, DELPHI MEDIEN GMBH, PHILIPP FILMPRODUCTION GMBH & CO.KG

中盤以降、精神的にやられてしまい茫然自失といった態度を見せるゲオルクの描写は、『白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々』(2005年)として映画化もされたショルら反ナチスの英雄との比較を狙っているようにも見える。だがヒルシュビーゲル監督が本作で、名誉回復の運動が始まるまでに数十年を要してしまったゲオルクに改めて光を当てようとしたことは間違いない。

この暗殺行為の是非を問う資格はあるか? 殺人に大義名分を与える戦争の恐怖を改めて刻み込む

やり方は両極端だしプロテスタントとカトリックという違いもあるが、鋼の意志による抵抗という意味では、テレンス・マリック監督の『名もなき生涯』(2019年)の主人公フランツと共通する部分もある。どちらも極度に暴走した政権に対して“否”を訴えることの重要さと困難を描いていて、徹底した拒絶を選んだフランツに対し、本作のゲオルクはドラスティックな方法を選んだというだけだ。

『ヒトラー暗殺、13分の誤算』©2015 LUCKY BIRD PICTURES GMBH, DELPHI MEDIEN GMBH, PHILIPP FILMPRODUCTION GMBH & CO.KG

本作では、ゲオルクが最初は暴力的な解決策を望んでいなかったことも描かれる。酒場でのケンカすら嫌う平和的な青年が、なぜ爆弾による暗殺という最終手段を選んだのか?「いくら独裁者だからって暗殺未遂行為を称賛するのはちょっと……」という意見はごもっともだが、本作は非人道的なユダヤ人迫害の描写はもちろん、国家社会主義=ナチズムに傾倒していくドイツ国内で起こった“抵抗”に関しても優れた教科書になってくれるので、ゲオルクを通して人類の負の歴史を刻み込むつもりで鑑賞してほしい。

『ヒトラー暗殺、13分の誤算』はAmazon Prime Videoほか配信中

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『ヒトラー暗殺、13分の誤算』

1939年11月8日、ドイツのミュンヘンにあるビアホールで、毎年恒例のミュンヘン一揆記念演説を行っていたアドルフ・ヒトラーは、悪天候のためにいつもより早く切り上げた。その後、ホールに仕掛けられていた時限爆弾が爆発──ヒトラーが退席して13分後のことだった。

8人を死に至らしめた爆破装置は精密かつ確実、計画は緻密かつ大胆。その手口から、独秘密警察ゲシュタポはクーデターや英国諜報部の関与を疑ったが、逮捕されたのは、田舎に暮らす平凡な家具職人、ゲオルク・エルザーと名乗る36歳の男だった。あまりにも信じがたい現実――。大物の黒幕の存在を確信したヒトラーは、決行日までに彼が歩んできた人生のすべてを徹底的に調べるように命じる。

単独犯だというエルザーの主張は本当なのか? 誰かをかばっているのか? スパイである真偽は? 所属する政党もなしにどんな動機があるというのか?

音楽やダンス、恋に興じ、家具職人として働く平凡な男から語られる真実とは――?

制作年: 2015
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