フィクション作品が国家を動かした! ドイツの暗部を暴き世界に衝撃を与えた『コリーニ事件』

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ライター:BANGER!!! 編集部
フィクション作品が国家を動かした! ドイツの暗部を暴き世界に衝撃を与えた『コリーニ事件』
『コリーニ事件』© 2019 Constantin Film Produktion GmbH

ドイツを代表する小説家であり現役バリバリの弁護士でもあるフェルディナント・フォン・シーラッハによる同名ベストセラーの映画化作品『コリーニ事件』。原作小説の出版後、同国の法務省が“過去の過ち”への処罰を改めて検討することになったというから、文字通り“国を動かした”歴史的作品の映画化である。揺るぎないはずの“正義”の定義を屁理屈によって歪めることで、無茶や不正をまかり通そうとする不埒な行為が目立つ昨今、ぜひ観ておきたい法廷サスペンスの傑作だ。

『コリーニ事件』© 2019 Constantin Film Produktion GmbH

新米弁護士が請け負った殺人事件の裁判がドイツを揺り動かす!

本作の舞台となるのは、おそらく2000年代初頭あたりのドイツ。ある凄惨な殺人事件の国選弁護人に指名された新米弁護士のライネンは、事件の被害者が幼少時代に実の父親のように慕っていた恩人であることを知り衝撃を受ける。ところが、被告人のコリーニは殺害の動機どころか一切について黙秘を続け、このままでは最高刑待ったなしの状況だった。

被害者のマイヤーには大きな借りのあるライネンだったが、何を問うても「ムダだ」と言うだけで一切の証言を拒否するコリーニの態度に納得がいかない。しかし、ある証拠品にヒントを見つけたライネンは審理の中断を請求し、コリーニの生まれ故郷イタリアへ向かうことに。そこで衝撃的な事実を掴んだライネンは再び公判に挑むが……。

『コリーニ事件』© 2019 Constantin Film Produktion GmbH

ミステリー要素強めの燃える法廷エンタメとしても一級品!

ストーリー的にはミステリー要素強めの法廷サスペンスのような感じだが、当然ながらそんなに単純なお話ではない。本作は第二次世界大戦下におけるドイツの暗部=ナチスの問題を改めて炙り出しつつ、過去の過ちと真摯に向き合ってきたとされるドイツ国民ですら見逃していた“恐ろしい抜け穴”を突きつけてくるのだ。それにしても、ドイツ人の“過去の過ちを自らの記憶に刻み込む行為”には本当に頭が下がるし、贖罪の一言では片付けられない責任感と悔悟の念を感じさせる。

『コリーニ事件』© 2019 Constantin Film Produktion GmbH

こんなふうに書くと、重苦しい映画はちょっと……と避けられてしまいそうだが、本作はめちゃくちゃ燃える法廷エンタメとしても秀逸なのでご安心を。コリーニの出自を調査するシークエンスからはミステリー要素がぐっと強まり、ライネン自身がトルコ系の血を引いている=マイノリティであることや複雑な親子関係を絡め、さらに助手に起用するピザ屋のファンキーな店員も加わって“チームもの”のカタルシスまで用意してあるという気の利きようだ。

『コリーニ事件』© 2019 Constantin Film Produktion GmbH

殺人事件の調査が、いつの間にか歴史の闇の扉を開いてしまい……という展開には心のザワザワが止まらないが、とはいえ“先が読めないスリル”とかいうものとも少し違う。かつて我々と同じ人間が行った、あまりにも非人道的な行為に対して“直視するのがキツい”という精神的な拒絶反応が引き起こされ、もはや動悸がしてくるレベル。ゴア描写があるとかではないが、このシークエンスを丁寧に描いたことは本作にとってかなり重要なポイントと言えるだろう。もちろん、フランコ・ネロら意外性のあるキャスト陣の鬼気迫る演技にも心を揺さぶられる。

活かすも殺すも民次第! ドイツから学ぶ“法”の重要性と危険性

物語終盤、ライネンたちが掴んだ衝撃的な事実によって静まり返る法廷。しかし、ラストにはさらなる衝撃と嗚咽待ったなしの号泣展開が用意してあるので、心して鑑賞に挑んでほしい。法の落とし穴、いや正確には人間の“過ちの繰り返し”を描いた本作は、やたらと都合のいいように憲法をいじくろうとする政権下で生きる我々にも学ぶところが多いはずだ。

『コリーニ事件』© 2019 Constantin Film Produktion GmbH

他国の事情を通して自国を省みることは、いま世界中を席巻しているBlack Lives Matter運動に対する理解・共感が薄いと言われる日本人にとって、特に積極的に意識していくべき義務であろうとすら思う。「ナチに学んでみては」とか堂々のたまったどこぞの副ソーリは本作を観たら、はたして何を思うだろうか?

『コリーニ事件』は2020年6月12日(金)よりロードショー

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『コリーニ事件』

新米弁護士ライネンは、ある殺人事件の国選弁護人に任命される。だが被害者は少年時代からの恩人だった。動機について一切口を閉ざす被告人だったが、事件を調べるうちにドイツ史上最大の司法スキャンダルへと発展―。ドイツ国民の誰もが知りたくなかった真実に向き合うことになる。

制作年: 2019
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