恐ろしい実話と少女の夢想が魂レベルで融合! 切なく不思議で美しい恋を描く『シシリアン・ゴースト・ストーリー』

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ライター:BANGER!!! 編集部
恐ろしい実話と少女の夢想が魂レベルで融合! 切なく不思議で美しい恋を描く『シシリアン・ゴースト・ストーリー』
『シシリアン・ゴースト・ストーリー』©2017 INDIGO FILM CRISTALDI PICS MACT PRODUCTIONS JPG FILMS VENTURA FILM
「マフィアと言えば?」「シチリア!」……そう、映画ファンには『ゴッドファーザー』のコルレオーネ一家でお馴染み地中海の美しい島・シチリアで起こった残虐な実話をベースに、ある少女と少年が紡いだ儚い恋を描く『シシリアン・ゴースト・ストーリー』。現実と幻想の境界線をあえて曖昧に表現した、ちょっと不思議でかなり切ない、文字通り“魂の”ラブストーリーだ。

ある日いきなり彼氏候補が失踪!? 実はヤバい事件に巻き込まれていた……

『シシリアン・ゴースト・ストーリー』©2017 INDIGO FILM CRISTALDI PICS MACT PRODUCTIONS JPG FILMS VENTURA FILM

物語の舞台はイタリア、地中海の島シチリア。主人公は勝ち気でちょっぴりエキセントリックな少女ルナと、豪邸で暮らし乗馬なんかも嗜んじゃう美男子ジュゼッペ、共に13歳の中学生だ。

放課後に林の中や湖の畔で密かにキャッキャする二人は、友達以上恋人未満といった関係だろうか。ルナは明らかにラブレターっぽいものを渡したりしているし、ジュゼッペもまんざらではない様子。なんとも微笑ましい光景だが、思わず「あれっ、 なに観に来たんだっけ!?」と混乱してしまいそうなほど長閑で平和なオープニングである。

ところが帰宅するや、超厳しい教育ママが遅くまでほっつき歩いていたルナを激しく叱責。しかも、ルナが手紙を渡したその日から、なぜかジュゼッペは学校に来なくなってしまった。病気? 家庭の事情? 突然いなくなった理由を誰も説明してくれないし、家を訪ねても彼のママは幽霊みたいに無反応でなんか怖いし、身内らしきオッサンには「二度と来るな!」と追い返されてしまう。

絶対におかしい! 彼の身に何かあったんだ! ……そう、実はジュゼッペのパパがマフィアの情報を警察に提供したため、報復として息子である彼が誘拐・監禁されてしまったのだ。この時点で、マフィアものの映画が好きな人は頭を抱えて絶望するだろう、これは絶対ダメなパターンだ……! と。

しかし、ルナはそう簡単には諦めない子だった。髪を真っ青に染めてジュゼッペ失踪チラシを作って街で配り歩き、愛しい彼の捜索活動を独自に開始するのだ。一方、どことも知れない小屋の中で絶望と戦っていたジュゼッペの唯一の心の拠りどころは、こっそり持ってきたルナからの手紙だった。

最初にキャッキャウフフしてる様子を見せつけられているものだから、このシーンがもう悲しくて悲しくて、うう……(泣)

実際に起った残虐な事件と空想のヒロインがリンクする!?

『シシリアン・ゴースト・ストーリー』©2017 INDIGO FILM CRISTALDI PICS MACT PRODUCTIONS JPG FILMS VENTURA FILM

物語の中盤に差し掛かってもまったく希望が見いだせない展開にもかかわらず、映像の方は青い空と緑の木々、たおやかな湖など、透き通った涼しげな空気が漂っているものだから、観ていて逆に落ち着かない。……のだが、ここからがこの映画のスゴいところ。いきなりルナが幻覚の中にジュゼッペを見つけ、猛進したあげく危うく命を落としかけたりするのである。前情報を入れずに観たら「ちょ、まっ、え!!??」となること間違いなしの超展開だ。

とはいえ13歳の人間には、びくともさせられない残酷な現実、社会の恐ろしい裏側を受け入れ乗り越えるのは難しいだろう。それでも「ジュゼッペに会いたい!」という強い想いがルナに見せたもの、囚われ絶望に伏したジュゼッペが見たもの……。過剰なファンタジー表現はなく、現実との境目も曖昧なのだが、大胆かつ繊細な“魂レベルの交流表現”が、観る者の心を鷲掴んでぐわんぐわん揺さぶってくる。

果たしてルナはジュゼッペと再び会えるのか? それは“どう観るか”によって解釈が分かれるところかもしれないが、ひとつ心苦しい情報をお伝えしておくと、この作品は90年代に同地で実際に起こった“ある事件”が題材になっている。「ジュゼッペ・ディ・マッテオ」でググッてもらえれば詳細を知ることができるが、凶悪なマフィアによる凄惨な事件なので、心臓の弱い方にはオススメできない。

事件を風化させまいとする監督の想い、そして自然豊かなイタリアへの回帰

『シシリアン・ゴースト・ストーリー』©2017 INDIGO FILM CRISTALDI PICS MACT PRODUCTIONS JPG FILMS VENTURA FILM

実際のジュゼッペくん誘拐事件の犯人は、シチリア出身のジョヴァンニ・ブルスカという男である。ブルスカは、マフィアに厳しい姿勢を示したジョヴァンニ・ファルコーネ判事を爆殺した「カパーチの虐殺」(1992年)と呼ばれる事件で知られる凶悪な殺し屋で、首謀者はサルヴァトーレ・リイナという大物マフィアだった。これら一連の残虐行為によって、マフィアの悪名が世界中に知れ渡ることになったそうだ。

監督のファビオ・グラッサドニアとアントニオ・ピアッツァは、2014年のイタリア映画祭で日本でも上映された『狼は暗闇の天使』でカンヌ国際映画祭批評家週間でグランプリを獲得した、シチリア出身の脚本家/監督コンビ。彼らも当時この事件にショックを受け、忘れ去られないようにと本作を撮ったという。劇中であるキャラクターに代弁させたりする“美しい自然への回帰”を謳うことも目的のひとつだろう。

ルナとジュゼッペの強く想い合う気持ちがもたらした奇跡のラストシーンは、そんな両監督から少年への鎮魂の祈りが込められているようにも感じられた。さり気なくも号泣必至の、とても切なく、震えるほど美しいシーンだ。

『シシリアン・ゴースト・ストーリー』は12月22日(土)より 新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー。

『シシリアン・ゴースト・ストーリー』公式サイト

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