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マーベルで働くきっかけは? スパイダーマンを描いてる超人気アメコミ作家にインタビュー!

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ライター:#傭兵ペンギン
マーベルで働くきっかけは? スパイダーマンを描いてる超人気アメコミ作家にインタビュー!
『Sex Criminals』で数々の賞を受賞し、現在マーベルで様々な作品を手掛けるカナダ出身のアーティスト、チップ・ズダースキー氏

2019年11月に開催された「東京コミコン2019」のアーティストアレイの様子については以前レポートしましたが、今回は出展アーティストの一人、チップ・ズダースキー氏のインタビューを前編・後編の2回に渡ってご紹介します。

チップ・ズダースキー氏はカナダ出身のコミックアーティスト。マーベル・コミックスでスパイダーマン関連誌「スペクタキュラー・スパイダーマン」(2017年)や、映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)にもちょっとだけ出てきたアヒル人間が主人公の「ハワード・ザ・ダック」などのライター(ストーリー担当)として知られる作家です。

コミック「ホークアイ」(2012年)等で知られるライターのマット・フラクションと協力して(アートを主に担当)作り上げた代表作、イメージ・コミックスの「Sex Criminals」は、セックス等で絶頂を迎えると時間を止めることができる能力者のカップルが銀行強盗を図り、ディルドで武装したセックス警察と戦うというユーモラスな話を主軸に、性の悩みや鬱の苦しみを描く傑作ラブストーリー。

同作の単行本はアメリカで凄まじい売上を叩き出しているだけでなく、著名な漫画賞である<アイズナー賞><ハーベイ賞>の両方で入賞を果たした作品で、ドラマ化も決定。まさにアメコミの最前線で大活躍しているトップ作家です。

今回はそんな彼に、コミック制作のプロセスやドラマ版の話、「Sex Criminals」の誕生秘話などなど、たっぷりお話を伺って参りました!

東京コミコン2019 アーティストアレイ

大ヒット作のきっかけはオンラインのコミュニティ

―なぜ今回、東京コミコンに来ることになったのでしょうか?

本当は友達と旅行に来たんだけど、たまたまこの時期に東京コミコンをやってるってことを知って、せっかくだから行ってみよう!ということになったんです。そしたら東京コミコン側が招待してくれて、親切にもブースを用意してくれました。

―アーティストにとってのコミコンの魅力とは?

コミック制作は孤独な作業なので、丸1日、誰とも会わないことが多いし、なによりこういった会場に来ることで、自分の本を読んでくれる人がいるんだと思い出せることが大事ですね。

個人的には、アートを担当してる「Sex Criminals」はデジタルで描いているので、筆とインクを使った伝統的なスタイルで描けるというのが、いい機会になっているんです(注:当日はコミッションを受け付けていました)。

チップ・ズダースキー氏の出展ブースにはスケッチのコミッションを求めるファンで長蛇の列が出来ていた

―ずっとデジタルでやらてきたのですか?

僕はすごく年寄りだから、絵を描きはじめた若い頃は鉛筆とマーカーで始めて、つけペンも使っていましたが、個人的に使い心地のいい筆に切り替えました。ただ、今はデジタルでやるのが好きです。ミスを修正するのが簡単ですからね。

―最初に描いた絵を覚えていますか?

6歳くらいの時に描いたスパイダーマンですかね。当時アニメを放送していて、スパイダーマンがすごく好きで、母親が人形を買ってくれたり、誕生日にはスパイダーマンのケーキを用意してくれて、ハロウィンでもスパイダーマンの格好をしたのを覚えています。

―それが今やマーベルでスパイダーマンのストーリーを作ったり、絵を描いたりすることになりました。

不思議な気分ですよ。僕は子供のままなのかもしれません(笑)。

―コミックを仕事にしようと決めたのはいつ頃ですか?

子供の頃はコミックを仕事にしたいと思っていましたが、高校を卒業して進学するとなった時に、仕事としてはやっていけないなと感じて、新聞や雑誌に掲載するイラストレーションが学べる学校に行くことにしたんです。なので、卒業後は新聞社で働くことになりました。そこではイラストだけでなくデザインやコラムを書いたりと、いろいろやりましたね。昼はそうやって新聞社で働きながら、夜は自分のコミックを作っていました。コミックを作るのが好きなら、どんな状況でも作るものなんだと思います。

そんな具合に新聞社で働いて10年くらい経った頃、ライターをやっていた友達のマット(・フラクション)がマーベルの仕事から離れて、他のところでコミックを作りたいということで、話しをしていくなかで「Sex Criminals」が生まれ、イメージ・コミックスで出版することになりました。

そこから僕のキャリアは一変しましたね。「Sex Criminals」の最初の1年くらい、だいたい第7号くらいまでは新聞社で働きながら作っていたのですが、限界になってしまって新聞社を辞めることにしたんです。でも、そこからマーベルでライターとして仕事をするようになったので、結果的に新聞社時代と同じような状態になっていますね。

―コミックを仕事にしていく上で、影響を受けたアーティストはいますか?

子供の頃に観たアート全てから影響を受けていると思うので特定するのは難しいですが、まずはウォルター・サイモンソン(マーベルで80年代に「マイティ・ソー」を担当)、ジョン・バーン(DCで80年代に「スーパーマン」を担当)ですかね。

マーベル/DC以外の路線だと、「ゴーストワールド」のダニエル・クロウズですね。彼の大ファンで、自分と絵のスタイルも似ています。あと、たまにカイル・ベイカー(「Why I Hate Saturn」)っぽい絵にしようと挑戦していますが、無様に失敗しています(笑)。

―マット・フラクション氏と出会ったきっかけは?

2000年代の始めの頃に、ライターのウォーレン・エリス(「Transmetropolitan」「アイアンマン:エクストリミス」)がインターネット上でフォーラムを運営していて、そこで出会いました。マットや、後にマットと結婚するケリー(・スー・デコニック。「Bitch Planet」「キャプテン・マーベル」のライター)、あとキーロン・ギレン(「スター・ウォーズ:ダース・ベイダー」「The Wicked + The Divine」「DIE」のライター)やジェイミー・マッケルビー(「The Wicked + The Divine」「ヤング・アベンジャーズ:スタイル>サブスタンス」のアーティスト)、サム・ハンフリーズ(「Green Lanterns」「ゴリアテ・ガールズ」のライター)とか、色んな人がいましたね。

ただ、その参加者の多くはまだ実際にプロのコミック作家になっていたわけではありませんでした。そこでマットが僕のコミックを気に入ってくれて、僕もマットを気に入って、それから10年くらい交友が続いたんです。お互いに何か新作ができると見せあっていました。その中で、お互いのユーモアのセンスなどが似たところがあることに気づいて、最終的に一緒にコミックをやろうということになったんです。

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アメコミ作家の日々の仕事スタイルは?

―「Sex Criminals」の大ヒットもあって非常に忙しい日々を送っていらっしゃると思いますが、現在どれくらいの作品を抱えているんですか?

いま出ているものに加えて、まだ言えない来年の作品が4作品あるので、だいたい8作品です。あと、もちろん「Sex Criminals」もあります。あと6号で終わりですね。

―いったいどうやってスケジュールをこなしているのですか?

いまは「Sex Criminals」も再開しているので(注:多忙すぎて一時期休止していた)、朝6時半に起きたら、まず「Sex Criminals」を1ページ描き終わるまで朝食を食べません。それで完成したら朝食を食べ、今度は別の作品のストーリーライティングをします。午前中は作画、午後は執筆といった具合で、それを毎日繰り返しています。

―1ページ仕上げるのにどれくらい時間をかけていますか?

朝にメールのチェックとかウォーキングをしなかったとして、簡単なページを描くだけだったら3時間くらいですね。難しいページだったら5~6時間はかかります。ただ、レイアウトやポーズの参考にしたりする写真の撮影がすでに終わっている状態の話なので、実際はもっとかかっています。

チップ・ズダースキー氏

―業界的にもかなり早いほうなのでは?

「Sex Criminals」を始めた頃は8時間くらいかかっていましたが、早くなりました。ただ「Sex Criminals」は自分でカラーリングからレタリング、デザインもするので、1号で6~7週間くらいかかっています。

―マーベルで毎月刊行するコミックの場合、どれくらいの時間を脚本の制作に当てられるのですか?

全体的な計画は別として、自分の場合はだいたい1号で3~4日ですね。ただ毎月とはいえ、例えば「Daredevil」でも“今月は2冊出す”なんて企画が起こります。アーティストによって描くのにかかる日数が違うので、ストーリーの順番とは関係なく、時間がかかるアーティストに担当してもらう部分の脚本を先に仕上げたりすることもあります。だいたい、コミックショップなどに新刊が並ぶ週には次の号を印刷中、といったスケジュールですね。およそ1ヶ月先のものまで完成しています。

―絵を描くのとストーリーを作るのでは、どちらが楽だと感じますか?

絵は時間はかかりますが、終わったら“終わった!”という気がするので楽ですね。執筆のほうは、終わっても終わったような気がしないので大変です。どこかが気になって直し続けることができてしまいますから。

<後編に続く>

取材・文:傭兵ペンギン

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