もし妻に「立派なヒゲ」が生えたらどうする?多毛症を受け入れた実在の女性が“美”を拡張する『ロザリー』
女性もヒゲが生える。そんな当たり前のことに気づくのは思春期の頃か、あるいはまったく意識することのない人もいるかもしれない。それは“一般的な価値観”という名のスティグマにより、人知れず処理するものだとされているからだ(ホルモンバランスの関係等は一旦置くとして)。
もちろん男性向けの脱毛を推奨する広告などを目にしたこともあるだろう。みっともない青ヒゲとサヨナラ、ツルリと清潔感あふれるイケメンに云々、といった羞恥を煽るような謳い文句で“ヒゲなし”の優位性を主張する。実際、ヒゲがないほうが有利に作用する局面が多いことは誰もが知るところだ。
実在した〈ヒゲの貴婦人〉描く『ロザリー』
5月2日(金)より全国公開中の映画『ロザリー』は、ヒゲにまつわる物語である。モデルとなったのは、19~20世紀のフランスに実在した“ヒゲの貴婦人”ことクレマンティーヌ・デレ。たっぷりとしたヒゲをたくわえた女性とその夫、周囲の人々との関係を通して、個人の資質とは関係のない偏見や中傷との向き合い方を描くことで、しっかりと現代性を備えた人間ドラマに仕上がっている。
『ロザリー』© 2024 – TRÉSOR FILMS – GAUMONT – LAURENT DASSAULT ROND-POINT – ARTÉMIS PRODUCTIONS
生まれた時から多毛症に悩まされるロザリーは、その特別な秘密を隠して生きてきた。
田舎町でカフェを営むアベルと結婚し、店を手伝うことになった彼女はある考えがひらめく。
「ヒゲを伸ばした姿を見せることで、客が集まるかもしれない」
始めは彼女の行動に反対し嫌悪感を示したアベルだったが、その純粋で真摯な愛に次第に惹かれていく。
果たして、ロザリーは本当の自分を愛される幸せと真の自由を見つけられるだろうか――。
『ロザリー』© 2024 – TRÉSOR FILMS – GAUMONT – LAURENT DASSAULT ROND-POINT – ARTÉMIS PRODUCTIONS