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山田涼介×浜辺美波『サイレントラブ』はチャップリン『街の灯』オマージュも?山ちゃんが見せた“演じること”への意志と敬意

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ライター:#関口裕子
山田涼介×浜辺美波『サイレントラブ』はチャップリン『街の灯』オマージュも?山ちゃんが見せた“演じること”への意志と敬意
© 2024「サイレントラブ」製作委員会
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2023年も、活躍が続いた山田涼介と浜辺美波。『BAD LANDS バッド・ランズ』の撮影終了後、ドラマ『俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?』を撮り、『サイレントラブ』の撮影に入った山田、ドラマ『ドクターホワイト』終了後、『ゴジラ-1.0』を経て、『サイレントラブ』に入った浜辺。主演級の役を矢継ぎ早に演じる2人の姿を見ていると生き急いでいるようにも感じてしまう。

たださまざまな人物を生きることは、彼らの血肉となり、次の役へと確実に受け継がれていることがわかる。マイナスでは決してない。特に迷いの中を生きる『サイレントラブ』の蒼と美夏を演じるにあたっては、その忙しさがプラスになっていたようにも感じられた。

© 2024「サイレントラブ」製作委員会

蒼と美夏、レスリングとワンピース

『サイレントラブ』は、『ミッドナイトスワン』(2020年)の内田英治監督の最新作。主人公は、過去の事件をきっかけに声を発することをやめた青年・蒼(山田)と、事故によって視力を失いピアニストへの道が危うくなった音大生・美夏(浜辺)。彼らがマイナスだと感じるピースが、2人を出会わせ、距離を縮めさせ、ついには恋に発展させる、切なくも生きる力に富んだラブストーリーだ。

© 2024「サイレントラブ」製作委員会

内田監督が、キャラクターの特徴形成に、彼らの自我の象徴を利用しているのが興味深い。過去に起こした事件によって、生きる意味を失っている蒼。彼の日常から、幼少期より十分に与えられることが稀な人生だったことが想像できる。だが、彼は常に何かを与えようとする。彼の場合の与えるという行為は、だれかを守ろうとするアクションだ。

蒼は、音楽大学の清掃係として、多くの学生が行き交う校内で、存在感を消して働く。彼が “人”として生きるのは、強い絆を持つ幼なじみのなかでだけ。ただし唯一、気を吐く瞬間がある。レスリングを習う時間だ。たぶんさまざまなものを守りたいという意思を持ったときから、彼はその武器を、自分の肉体だけと決めたのだろう。作品全体のなかで、このレスリングシーンは特に印象的に描かれる。内田監督が観客に印象付けたかったのは、蒼という人物の意思なのだと思った。

© 2024「サイレントラブ」製作委員会

一方の美夏にもそれがある。彼女はピアニストを目指している。学内トップの成績だが、アーティストとしてはまだ確固たる自信があるわけではない。だからこそ揺れる。そして視力を失った美夏を心配する、ライバルや親に悪態をつく。エスコートを断り、白杖をついて一人で行動し、事故前と変わらない服装であるワンピースを着る。

美夏のワンピースは、ふわりとしたジョーゼットのオーバーサイズ。どこかに引っ掛かる可能性があるし、転んだ際にも無防備だ。視力の低下を受け入れ、目的をはっきり持っているのであれば、自然とその目的を達成するのに即した服装になっていくかもしれない。でも美夏は、頑なに変えようとしない。美夏の選ぶ服は、彼女の心情を表現する1つのツール。内田監督は、ファッションで変化する美夏の気持ちを印象付ける。

© 2024「サイレントラブ」製作委員会

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『サイレントラブ』

声を捨て、毎日をただ生きているだけの蒼。ある日、不慮の事故で視力を失い絶望の中でもがく音大生・美夏と出会う。何があってもピアニストになるという夢を諦めない美夏に心を奪われた蒼は、彼女をすべてから護ろうとする。だが、美夏に想いを伝える方法は、そっと触れる人差し指とガムランボールの音色だけ。蒼の不器用すぎる優しさが、ようやく美夏の傷ついた心に届き始めた時、運命がふたりを飲み込んでいく――。

出演:山田涼介 浜辺美波
   野村周平 / 吉村界人 SWAY 中島歩 円井わん 
   辰巳琢郎 / 古田新太

原案・脚本・監督:内田英治
共同脚本:まなべゆきこ
音楽:久石譲
主題歌:「ナハトムジーク」Mrs. GREEN APPLE(ユニバーサル ミュージック / EMI Records)

制作年: 2023