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山田涼介×浜辺美波『サイレントラブ』はチャップリン『街の灯』オマージュも?山ちゃんが見せた“演じること”への意志と敬意

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ライター:#関口裕子
山田涼介×浜辺美波『サイレントラブ』はチャップリン『街の灯』オマージュも?山ちゃんが見せた“演じること”への意志と敬意
© 2024「サイレントラブ」製作委員会
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壁を隔てた2人

蒼と美夏の距離は、当初、とても離れていた。具体的にいうと、まず彼らを阻んだのは、旧講堂の壁。構内に入り、美夏の傍にやすやすと立つことができる講師の北村(野村周平)にもやもやした気持ちを抱えつつ、蒼は汚れた窓ガラスを手で拭い、ピアノを弾く美夏の姿を少しでもはっきり見えるようにするのがやっとだった。

© 2024「サイレントラブ」製作委員会

視力を失った美夏と、声を出さない蒼には、お互いの思いを確認する術がない。しかし、いつしかその壁は取り除かれていく。それに貢献したのは、ガムランボールというきらめく音色を持つ美夏の御守り。ひょんなことからそれをもらった蒼は、声の代わりにガムランボールを鳴らして存在を示し、美夏もその音色によって、いまの自分を肯定する存在が近くにあることを確認する。それが誤解を生むこともありながら。

ちなみにガムランボールは、バリの民族楽器であるガムランとの関係はなく、ケルト民族のドルイド僧が持つドルイドベルがルーツなのだそう。

© 2024「サイレントラブ」製作委員会

チャップリン『街の灯』と、『サイレントラブ』

視力を失った女性を献身的に支える物語といえば、チャップリンの『街の灯』(1931年)が思い出される。行動範囲を1人で歩ける訓練を自分に課す美夏が、障がい物に困らないよう、前に立ち、後ろに回り、彼女に気づかれないよう訓練を手伝う。そして、蒼本人は名乗らず、ピアニストである北村を自分だと思わせる。どれも『街の灯』と似ている。ストーリーは本作の原作通りなのだろうが、その描き方に、内田監督の『街の灯』へのオマージュとリスペクトが感じられた。

街の灯(字幕版)

© Roy Export Company Establishment.

 

映画がサイレント(無音)からトーキーへと移りつつある頃に作られた『街の灯』。台詞で物語を語ってしまうことを良しと思っていなかったチャップリンが、音楽と効果音は使用しながらも、あくまで映像での見せ方で勝負しようと試みたところなど。

蒼をある部分ではユーモラスに演じた山田涼介にもそれは感じられた。彼もたぶん『街の灯』を見ているのだろう。生きる目的を失った蒼の“死んだ魚のような目”ばかりが話題になっているが、この作品の山田の、演じるという仕事、俳優という存在をリスペクトし、本気で取り組んでいることを感じさせる演技にこそ注目してほしいと思った。

© 2024「サイレントラブ」製作委員会

あるとき、彼はこんなことを言っていた。「演じること一本で仕事をしている人の足を引っ張らないように……」。彼は自身が、アイドルという存在であり、俳優でもあるということを自覚している。もちろん足を引っ張ることなどないのだが、彼のその意識が、一緒に作品を作る人々を奮い立たせ、彼を仲間として支えようという気持ちにさせ、作品をより高いクオリティに昇華させるのだろう。ここ数本の作品での山田の演技、取り組む姿勢が、それを感じさせた。

© 2024「サイレントラブ」製作委員会

文:関口裕子

『サイレントラブ』は2024年1月26日(金)より全国公開

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『サイレントラブ』

声を捨て、毎日をただ生きているだけの蒼。ある日、不慮の事故で視力を失い絶望の中でもがく音大生・美夏と出会う。何があってもピアニストになるという夢を諦めない美夏に心を奪われた蒼は、彼女をすべてから護ろうとする。だが、美夏に想いを伝える方法は、そっと触れる人差し指とガムランボールの音色だけ。蒼の不器用すぎる優しさが、ようやく美夏の傷ついた心に届き始めた時、運命がふたりを飲み込んでいく――。

出演:山田涼介 浜辺美波
   野村周平 / 吉村界人 SWAY 中島歩 円井わん 
   辰巳琢郎 / 古田新太

原案・脚本・監督:内田英治
共同脚本:まなべゆきこ
音楽:久石譲
主題歌:「ナハトムジーク」Mrs. GREEN APPLE(ユニバーサル ミュージック / EMI Records)

制作年: 2023