1990~2000年代のハリウッドを牽引した「ZAZ」チーム
作り手の側にも目を向けてみよう。『裸の銃を持つ男』シリーズは『POLICE SQUAD!』からずっと変わらず、デヴィッド・ザッカー、ジム・エイブラハムズ、ジェリー・ザッカーの幼馴染トリオ、人呼んで“ZAZチーム”によって製作され、脚本もこの三人。監督は第2作目まではデヴィッドが担当し、第3作のみ後に『ナッティ・プロフェッサー2 クランプ家の面々』(2000年)や『リベンジ・マッチ』(2013年)を撮るピーター・シーガルが務めている。
Happy birthday to Jerry Zucker, born this day in 1950. Zucker was one third of the comedy and filmmaking trio also known as ZAZ. The trio met as students at the UW-Madison and went on to produce the slapstick films ‘Airplane!’ and ‘Naked Gun.’ #HBD https://t.co/CBvIqFWlDO pic.twitter.com/6VThXlnDTQ
— Jewish Museum MKE (@JewishMuseumMKE) March 11, 2021
彼ら三人の出世作は、ジョン・ランディスが監督を務めた『ケンタッキー・フライド・ムービー』(1977年)で、同じZAZチームで『トップ・シークレット』(1984年)、『殺したい女』(1986年)などのコメディをヒットさせた。のちにエイブラハムズは『ホット・ショット』シリーズ(1991年、1993年)などパロディ映画を手掛けている。
一方で、ザッカー兄弟の方はパロディも手掛けつつ、兄弟でキアヌ・リーヴスの『雲の中で散歩』(1995年)を製作したほか、デヴィッドは単独でコリン・ファレル主演の『フォーン・ブース』(2002年)を、ジェリーは単独で『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990年)、『マイ・ライフ』(1993年)、『ベスト・フレンズ・ウェディング』(1997年)といった大ヒット作で監督や製作を務めるなど、1990年代から2000年代にかけてのハリウッドを牽引した立役者の感がある。
「O・J・シンプソン事件」を乗り越えて……
さて、シリーズが第3作『裸の銃を持つ男PART33 1/3 最期の侮辱』をもって終了してしまった背景には、同作品のアメリカ公開(1994年3月)と日本公開(1994年8月)の間に起こった、世に言う“O・J・シンプソン事件”が強く影響している。
O・J・シンプソンは、アメリカン・フットボールの殿堂入りしたスーパースターで、映画俳優になってからは『タワーリング・インフェルノ』(1974年)、『カサンドラ・クロス』(1976年)などの大作で存在感を示した。プロのアスリートから映画俳優に転向した人としては、1950年代のブルックリン・ドジャースの選手からTV『ライフルマン』(1958~1963年)の主演に転身して大成功したチャック・コナーズ以来の成功を収めていたと言ってよい。
そのO・J・シンプソンが元妻とその友人を殺害したかどで逮捕されたのが1994年6月で、カーチェイスしながら車で逃走する様子が全米生中継され、また捜査員が過去に人種差別的言動があったことが明らかになるなど、その逮捕後の法廷での様子も含めて全米が固唾をのんで注視する大事件だった。
結果的には刑事裁判では無罪が確定したものの、民事裁判では有罪となり、またその後も強盗容疑で逮捕されるなどしたため、もはやコメディに出ているシンプソンは冗談では済まされなくなったのだ。ZAZチームは代わりに『最終絶叫計画』(2000年)に始まる新シリーズ(第3作・第4作ではレスリー・ニールセンも大統領役で出演)をヒットさせたが、シンプソン抜きでの『裸の銃を持つ男』シリーズを、もうちょっと見てみたかったものだ。
文:谷川建司
『裸の銃(ガン)を持つ男』『裸の銃(ガン)を持つ男2 1/2』『裸の銃(ガン)を持つ男PART33 1/3/最後の侮辱』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「裸の銃(ガン)を持つ男 イッキ観!」で2023年12月放送
『裸の銃(ガン)を持つ男』『裸の銃(ガン)を持つ男2 1/2』『裸の銃(ガン)を持つ男PART33 1/3/最後の侮辱』
CS映画専門チャンネル ムービープラス「裸の銃(ガン)を持つ男 イッキ観!」で2023年12月放送