特撮リブートの魅力を考察!『仮面ライダーBLACK SUN』 80年代バブル期から混沌の令和に蘇ったヒーローの意義

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ライター:ナカムラリョウ
特撮リブートの魅力を考察!『仮面ライダーBLACK SUN』 80年代バブル期から混沌の令和に蘇ったヒーローの意義
『仮面ライダーBLACK SUN』©️石森プロ・東映 ©︎「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

『BLACK』の衝撃

『仮面ライダーBLACK』。現在アラフォーあたりの世代にとっては、リアルタイムで触れた初めての仮面ライダーとして特別な思い入れがある人も多いのではないだろうか。1987年~1988年にかけて日曜朝に放映されていたこの番組を、当時未就学児だった自分もドキドキしながら観ていたことをうっすら記憶している。

個人的な話をすれば、その後同じ特撮でも平成ゴジラシリーズやウルトラマンなどの、いわゆる“巨大特撮”に傾倒していったこともあって、ライダーシリーズを熱心に追っていたわけではない。それでも大人になってこの『BLACK』を改めて観返したとき、かなり度肝を抜かれた。陰影が強調されたソリッドな絵作り。手に汗握るスリリングなカメラワーク。そして、なかなかにハードなストーリーテリング。これが毎週末、さわやかな朝の食卓で流れていたのだから、そりゃ子供心に緊張感ある時間だったろうなあと追想する。

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そこに突然現れた漆黒のライダーのインパクトは、相当なものだっただろう。

その後、番組のヒットを受けて『仮面ライダーBLACK RX』(1989年)が製作されただけでなく、特撮コンテンツ全体を見渡してみれば『ゴジラVSビオランテ』(1989年)、『ウルトラマンG』(1990年)など往年のビッグコンテンツの新作が相次いで生まれ、結果的に90年代は優れた特撮作品が次々と送り出される時代へと変わった。過去作品の引用や再解釈をふんだんに盛り込んだ、いわゆる“リブート”ものが盛んに製作されるようになったのもこの頃からだ。

『仮面ライダーBLACK』は、その大きな流れの先駆けとなった作品と解釈しても大袈裟でないように思う。

そんな作品が令和の時代に『仮面ライダーBLACK SUN』としてリブートされる。この第一報には自分も胸が躍り、あの幼少期のドキドキを思い出しながら作品の完成を待ったのだった。

『シン』2作のリブートの方向性

ところで、 そもそも“リブートの魅力”っていったい何だろう?

技術革新による映像表現の向上、新世代によって息を吹き込まれ再構築される物語、作品自体の普遍性の再発見……いろいろと挙げられるだろうが、個人的には「その時代なりの色を映し出しながら、改めて作品が紡がれること」に大きな意義を感じる。

特撮作品はいつも合わせ鏡のように時代を映し続けてきた、という持論については、以前こちらの記事でも書かせていただいた。

まず、特撮作品というのは基本的に「嘘っぱち」である。大嘘である。ただ、ほんの一瞬でもその嘘をいかにして「現実の出来事」に錯覚させるか? という命題と常に向き合い続けてきたジャンルでもある。

もちろん、その温度感は作品によって異なるし、はなからリアリティなど求めず楽しんでいるファンもおられるだろう。ただ少なくとも自分にとっては「明日の朝、目が覚めたらこんな世界になっているかもしれない」と夢想させてくれること、これが特撮作品の醍醐味のひとつだと感じている。

その実現のためには、映像的な演出のクオリティを高める必要性はもちろん、「嘘っぱちの世界に没入できるだけの説得力ある仕掛け」が重要だ。これが実に難しいし、製作者の腕の見せ所でもあるが、そこで「時代性」というのはひとつの大きなファクターになる。

例えば近年の例を挙げると、『シン・ゴジラ』(2016年)は実際に日本が直面してきた昨今の巨大災害や原子力の脅威をゴジラのイメージに反映し、それが迫りくる過程を擬似ドキュメント的タッチで描くことで、怪獣ファン以外の人々も世界観に入り込みやすい作品だった。

これは原点である『ゴジラ』(1954年)が内包する戦争や水爆への恐怖といった要素を、2010年代の日本をベースに翻案した見事なリブートであった。

また、今年公開された『シン・ウルトラマン』(2022年)はより空想性が高い内容であったが、冒頭で『シン・ゴジラ』と地続きかのようなプロローグを一気呵成に描くことで、飛躍したフィクションの世界に力尽くで引きずり込んでしまうような仕立てだった。

宇宙時代に突入した『ウルトラマン』(1966〜1967年)放映当時の希望とロマンに満ちたトーンを踏襲しつつ、現代的に再解釈した空想科学作品としてまとめられていた。

信じる奴が正義? 令和のヒーローとしての説得力

では、『仮面ライダーBLACK SUN』はどうか。

本作品においてその仕掛けにあたるもの、それは“怪人が人間と当たり前のように共存している現代社会”という舞台設定だ。

『仮面ライダーBLACK SUN』©️石森プロ・東映 ©︎「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

しかも、怪人たちの多くは必ずしも人間を大きく凌駕するほどの能力を持っているわけではなく、むしろその容姿や独特の匂いから一部の人間たちに忌み嫌われ、迫害を受けながら、自分たちのコミューンを形成して暮らしているという設定だ。このあたりの描写には、実際に現在の日本のみならず世界中に蔓延っているレイシズムや移民問題などが色濃く反映されており、率直なところ、エンタメ作品としてはだいぶ攻めに攻めた切り口だ。

『仮面ライダーBLACK SUN』©️石森プロ・東映 ©︎「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

ストーリーの核にあるのは原点『BLACK』と同様、ブラックサン・南光太郎と親友のシャドームーン・秋月信彦が運命に翻弄され、争いの道を辿っていく顛末。ただ、そんな彼らもまた怪人の出自であるという側面が強調して描かれ、いわゆる完全無欠のヒーローという佇まいからは程遠い。

『仮面ライダーBLACK SUN』©️石森プロ・東映 ©︎「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

そして本作における悪の枢軸は、暗黒結社ゴルゴムではなく、その裏で糸を引く人間側の権力者であることもはっきりと描かれている。

いわば物語の主語が明らかに怪人側にあり、彼らのパーソナリティーに眼差しが向けられるのが印象的だ。そして怪人が抱える痛み、苛立ち、やるせなさといったものが決して絵空事の対岸の火事とは割り切れないあたりに、現在の時代性を強く思わされた。

『仮面ライダーBLACK SUN』©️石森プロ・東映 ©︎「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

かつて『BLACK』のオープニングテーマでは「信じる奴が正義(ジャスティス)!」と歌われたが、今となってはなかなかそうも無邪気に叫べない世の中である。

ひとつの信念を掲げれば、すぐに相反する「敵」が生まれる。そして真実だと信じて疑わなかった事柄が、時にいとも容易く覆る。

『仮面ライダーBLACK SUN』©️石森プロ・東映 ©︎「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

自分自身に視点を戻してみても、とくに近年デジタルメディア、SNSの中心にそんな光景が目に飛び込んでくることがずいぶんと増えた。この「現在進行形の息苦しさ」が、本作には終始漂っているように思う。

『仮面ライダーBLACK SUN』©️石森プロ・東映 ©︎「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

それでも日和見してばかりはいられない。何かを信じなければならない。そして信じた「正義」に立脚して、行動しなければならない。

物語の中盤、そんな決意に突き動かされるように、南光太郎が初めて「変……身!!」と叫ぶ瞬間は、本作のひとつのハイライトであろう。

常に痛みを抱えながら戦うその姿に、令和のヒーローとしてひとつの説得力を感じた。

『仮面ライダーBLACK SUN』©️石森プロ・東映 ©︎「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

特撮作品の王道、特撮表現の可能性

80年代後半に生まれた『BLACK』は、まるでバブル景気に浮き足立ったムードにアンチテーゼを唱えるかのように、煌びやかなネオンの狭間に落ちた影の奥から現れる。

『BLACK SUN』は、もっとストレートな問題提起や怒りを抱えた作品として、『BLACK』をリブートした。その思いもよらない結末も含め、正直全ての人から諸手を挙げて賛美されることは初めから前提としていないかもしれない。だがエンターテイメントにそういった側面を持たせることができるのもまた、特撮作品としてひとつの王道と言えるだろう。

『仮面ライダーBLACK SUN』©️石森プロ・東映 ©︎「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

実際、配信開始以来さまざまなかたちで話題と議論を呼び、多くのネットミームまで生み出している本作は、今後の特撮史に確かに残っていくに違いない。

これをきっかけに、さまざまなクリエイターが特撮表現の可能性について改めて考え、より自由で幅広いアプローチの作品を投げかけてくることを、いち特撮ファンとして願ってやまない。

たとえそれがファンタジーだとしても、夢を見続けていたいからだ。

『仮面ライダーBLACK SUN』©️石森プロ・東映 ©︎「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

文:ナカムラリョウ

『仮面ライダーBLACK SUN』はPrime Videoにて全10話配信中

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『仮面ライダーBLACK SUN』

監督:白石和彌
脚本:高橋泉
音楽:松隈ケンタ
美術:今村力
コンセプトビジュアル:樋口真嗣
特撮監督:田口清隆

出演:西島秀俊 中村倫也
   中村梅雀 吉田羊 三浦貴大
   音尾琢真 濱田岳 平澤宏々路
   木村舷碁 黒田大輔 筧美和子 沖原一生
   ルー大柴 尾美としのり 寺田農 プリティ太田 
   中村蒼 芋生悠 前田旺志郎
   モクタール 今野浩喜 川並淳一 ジュア

制作年: 2022

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