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嵐のあとにかかる虹【後編】最後に5人が伝えてくれたこと ~This is 嵐 LIVE『ARASHI’s Diary -Voyage-』

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ライター:#関口裕子
嵐のあとにかかる虹【後編】最後に5人が伝えてくれたこと ~This is 嵐 LIVE『ARASHI’s Diary -Voyage-』
◎ARASHI’s Diary -Voyage-

新たなスタート地点へ

20年にわたる活動の休止を宣言し、最後のライブ「This is 嵐 LIVE 2020.12.31」を終えた5人。ここでは『ARASHI’s Diary -Voyage- リミテッドシリーズ』の第18話から第23話、そして2020年12月31日に行われた休止前最後のライブ「This is 嵐 LIVE 2020.12.31」に触れながら、アイドルとは何か? 休止に向けて嵐がファンに残したものは何か? を考えていく。

第22話:2020年12月31日に向かう 前編

「アラフェス 2020」配信翌日からスタートした「This is 嵐 LIVE 2020.12.31」(以下、「This is 嵐 LIVE」)の準備を追う第22話「2020年12月31日に向かう 前編」。第18話で「全部、自分たちの口で最初に言いたい。リリースを出すのも俺らのコメント出てからにしてほしい」と松本が言うように、これまで以上にファン・ファーストな体制でライブ作りが進む様が描かれる。2020年9月10日、「アラフェス」リハーサル時のホワイトボードにも、「メンバーコメント発射後のHP告知」という文字が見える。

松本は改めて、テクノロジーは温かみを感じてもらうために使うものだとスタッフと認識をすり合わせる。「This is 嵐 LIVE」では配信を見るだけでなく、オンライン上でファン同士がコミュニケートできる「フレンズ参戦機能」や、コンサート中の嵐と双方向で繋がれる「MEETS CHANCE」など、様々な技術を導入した。初めての試みゆえ、それを使うファンも運営側も試行錯誤。不安なく楽しんでもらうために、使用方法などを分かりやすく5人が説明した動画もアップした。それが「This is 嵐 LIVE みんなで準備だ!TV」だ。

「当日は手いっぱいだと思うから、楽しめるところまで事前に持っていってあげないと」と櫻井が提案。それを松本が「1つずつクイズ形式でYouTubeなどに上げていこう」と具体にする。「news zero」(日本テレビ)のインタビューで明かしていた、“櫻井がトスをあげ、松本が具体にする”というフォーメーション・プレーだ。

嵐の強みの1つに、櫻井と松本、この2人が自分の意思でこの世界に飛び込んでいる、というのがあると思う。もちろん全員がグループへの貢献力に富んでいるのだが、エンターテインメントの中でやりたいこと、自分がそこでできるだろうことが当初からある程度見えていたとしたら、それは大きいと思う。

原田監督は「VS嵐」の最終収録日の翌11月25日と27日に、何度目かの質問をメンバーにしたようだ。「This is 嵐 LIVE」を前に、今どんな思いでいるのか? と。

相葉は「寂しいスイッチが入りそうな感じ」。櫻井は「ありがとうございました。お世話になりましたと言える形で、そしてこんなに多くの人にいままでありがとうと言われながらその日を迎えられるなんて、約2年近くの期間を決めて本当によかったと思う。当たり前だったことが当たり前じゃなくて、日常だと思っていたことがどれほど非日常だったか分かった今、瞬間瞬間が愛おしい」と答えた。

2021年以降活動を休止する大野は「次の日、朝起きて何を思うんだろうと想像してみたら、ちょっと震えたんだよね、体が。見えなさ過ぎてなのか、やり切ったという感情なのか分からないけど。1ミリ単位で感情は来ているんだけど表に出てこない感じ」と切ない。

ライブのリハーサル初日、松本は大野が描いたジャニー喜多川氏のTシャツを、二宮は5人の顔をイラストで描いた「ARASHI EXHIBITION “JOURNEY” 嵐を旅する展覧会」のグッズTシャツを着て臨んだ。

第23話:2020年12月31日に向かう 後編

「2020年12月31日に向かう 後編」は、おそらく原田監督の定点観測から始まったと思われる。

櫻井は「This is 嵐 LIVE」のセット図を見ながら、「“This is 嵐”に尽きる」「レガシーを残したい。ワクワクしている」とドヤ顔を見せる一方で、「会見の時にニノが言ってたけど、僕らだけが先に走っちゃったらファンの人はついてこれないと思うから、横に並んでという想いで伝えるなら、俺も寂しいよ」と吐露。

「(僕らは)必ずしも正五角形ではなく、辺の長さを変えながらやってきた。正五角形じゃないのは個性だから、めちゃめちゃ面白いと思いながらやってきたけど、今はぎゅっと凝縮されて点になっている感じ。もはや、ひとつの点じゃないかと思う」

大野も同じようなことを言う。「勝手な見方だけど、これまでは5人が突出したり、へこんだり、いろいろな形になることもあったけど、いまは真横。横並びの形で一緒に上って行ってる感じ」

相葉と二宮には大きな変化はないようだ。「何があっても大丈夫なんだよね、この5人なら。決断してよかったねと人生の最後で思えたらいいな。止まっちゃだめ、それだけはずっと思ってる」と相葉。二宮は「5人で歌ったり、一つの曲を表現している姿は現状最後になるわけだから、5人で居るのを見てもらいたい」と語る。

すべての構築に全力を注いできた松本は「いろいろなことがあったけど、それをそぎ落としたシンプルなメンバー愛、嵐愛、嵐のファン愛、そして自分たち、ファンの人、スタッフなど俺たちの周りにある愛のエネルギーが結集するライブ、そういう日になると思う。1曲1曲、一つひとつの詞が俺らからのメッセージ。楽しかったり、嬉しかったり、いいなだったり、悲しかったり、いろいろな感情をごちゃまぜにして全部渡すから、それをみんながどう感じてくれるか」とライブへの思いを語った。

「This is 嵐 LIVE 2020.12.31」へ

「アラフェス2020 at 国立競技場」は、新型コロナウイルス感染予防のために無観客、配信の形を余儀なくされたが、「みんなが見られる状況を作るためには配信になるだろうと思っていた」と松本が語るように、「This is 嵐 LIVE」は当初から配信の方向で計画され、「ファンの人たちの気持ちを直で受け取れる環境を、どうやったら作れるかも2年前から模索していた」という。

ここまでの2年間で、動画配信の技術も進化した。「This is 嵐 LIVE」で取り入れた配信時に付随する機能では、事前にファンが送付した自身のダンス動画やコールの音声をパフォーマンスに反映させるという演出が、ライブを大いに盛り上げた。前出の「MEETS CHANCE」でピックアップされたファンがメンバーの問いかけにリアクションする様も、最後に東京ドームの天井に映し出されたファンからのメッセージもライブに臨場感をもたらした。

「This is 嵐 LIVE」開催にあたって、通信インフラを圧迫しないよう配信時間帯にも配慮。12月30日のファンクラブ向け動画では、いち早く年越しの時間帯までライブを行わないことが伝えられた。それでも大晦日の20時から23時半まで(21時半から22時を除く)のトラフィックは、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言前の平均より約150%増加したと聞く。また家電量販店では、PCとテレビをつなぐHDMIケーブルが飛躍的に売れたとも聞いた。改めて嵐を支持するファンの熱意、そしてこのライブがいかに多くの人に得難いイベントだと認知されていたかを確認した。

ライブ・パンフレットには、「This is 嵐 LIVE」のエンディングをどんな演出にしたいかを語る記事が掲載されていた。山口百恵の場合はマイクを、光GENJIの場合はスケート靴を残して舞台を降りた。嵐は冒頭に記したように、何か形あるものを舞台上に残すことなくライブの幕を閉じた。強いて残したものがあるとすれば、それは“歌”なのかもしれない。11月3日に発売したアルバム『This is 嵐』に収録され、ライブではアンコール曲として歌われた「The Music Never Ends」が言わんとするように。

1曲1曲が、その詞の一つひとつが嵐からのメッセージだという「This is 嵐 LIVE」は、光の旅を表現したライブだったのではないか。宇宙から現れたUFOは、光を集めながら東京ドーム上空へと到着。嵐はドームの天井付近に現れた宇宙船らしき5色に光る物体から「We are 嵐」と登場した。

――ここまでの嵐を振り返ろう。嵐とはいったいなんだったのか? 良くも悪くも彼らは、早い段階から自分が動かないかぎり物事は変えられないということを学んでいたように思う。そして早々に動くための素地づくり、強みを作ることに励んだ。

「This is 嵐 LIVE」の最後のあいさつで驚いたのは、櫻井のあいさつに、家族への感謝が含まれていたことだ。アカデミー賞やトニー賞、グラミー賞などアメリカの授賞式では言わない人はほぼいないが、これまで日本のエンターテインメントの現場でそれが述べられたのを見た記憶はほぼない。公私を分けるプロ意識とも言えるが、日本のエンタメ現場には、自分の言葉で話すことがはばかられる風潮もあったのかもしれない。櫻井は、嵐は、そんな見えそうで見えなかった“壁”を破片の散らばらない方法で壊した、様に感じた。少なくとも私には、感謝を伝えたい彼の気持ちがストレートに伝わってきた。

そのあいさつで大野は、4人の人間力、人間性に感謝した。大野が言うように、嵐は人を思いやり行動するグループであったと思う。そして、それは簡単なようでなかなかできることではない。

「明けない夜はない」

『ARASHI’s Diary -Voyage-』では、2020年、新型コロナウイルスのために北京やロサンゼルスで予定していたコンサートなどが次々にキャンセルされていく様子が描かれた。代わりに彼らが生み出したコンテンツは、リモートワークであたふたする子育て世代に向けたオンライン紙芝居だ。「世界へ」と動いていたアーティストが急に「家庭へ」と目線を変えられるだろうか? 人への思いやりももちろんだが、その普遍性のある発想に驚く。

世界は異なる様々な立場の人々で構成されている。きっと、どんな立場の方が欠けてもその均衡は崩れ、無関係と高をくくっていた人にも影響は及ぶだろう。ある尊敬する評論家がこんなふうに言っていた。「アイドルとは(それを応援する人にとって)、生きる“よすが”なのだと思う」と。これは彼の経験からの言葉。どんな人の心にも“アイドル”は存在し、それを応援する時間で一時の憂さを晴らし、またよじれた自身の軌道を修正するのだと解説してくれた。もちろんファンの在り方はそれに限らないだろうが、たぶん嵐は“よすが”と考えるすべてにアクセスしようと試みたのではないか。大げさな言い方かもしれないが。

いずれにしてもアイドルとは大変な仕事だ。もし彼らが、ここで推測したように考え、動いたのだとしたら、休むのも致し方ないと思う。ライブの最後の曲は「Love So Sweet」。たくさんの応援歌と普遍の愛を伝える歌の最後に、明けない夜はない、と彼らは心を込めて伝えてくれた。

そんな嵐に対して、スタッフとファンがサプライズで贈ったメッセージ。――ファンの心からの声は、ドームの天井いっぱいに止むことなく映し出された。

<【完結編】へ続く……>

第24話(最終話)『We are ARSHI』Netflixで独占配信中

文:関口裕子

Netflixオリジナルドキュメンタリーシリーズ『ARASHI’s Diary -Voyage- 』はNetflixで独占配信中

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『ARASHI’s Diary -Voyage-』

デビューから20年、国民的アイドルへと成長した嵐。新たな門出を迎え、さらなるチャレンジに取り組む5人の素顔に迫り、その魅力を世界に届ける。

制作年: 2019
出演: