「嵐」という幸福論【前編】 “6人目のメンバー”としてファンを並走させる『ARASHI’s Diary -Voyage-』

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ライター:関口裕子
「嵐」という幸福論【前編】 “6人目のメンバー”としてファンを並走させる『ARASHI’s Diary -Voyage-』
Netflixオリジナルドキュメンタリーシリーズ『ARASHI's Diary -Voyage-』Netflixにて全世界独占配信中

28カ国語の字幕、190カ国で配信の赤裸々ドキュメンタリー

嵐のCDデビュー記念日である11月3日。都内の地下鉄で、嵐のコンサートグッズのショッピングバッグを肩から下げた方と遭遇した。その日、配信予定の嵐のコンサート<アラフェス 2020 at 国立競技場>を、誰かの家、または配信映像が見られる商業施設で、仲間と見ようとしているのだろうか? はじけるような笑顔だ。

<アラフェス 2020>は、約1000万人が視聴したと言われる。日本の人口でいうと約12人に1人が見た計算。それは町ですれ違いもするだろう。

2019年1月の記者会見で休止を発表した、日本のトップアイドルグループ「」は、その席で「2年間近くの期間をかけて、感謝の思いを伝えていく」と述べた。その“感謝”は、全国5大ドームで50公演を行った<5×20>などのツアー/ライブ、楽曲やCDの発売、展覧会といった形で着々と実行されていった。

だが2020年2月、新型コロナウイルス感染拡大の防止のため、政府から大規模イベントの中止・延期が要請される。そんな想定外の事態が、休止まで1年を切った嵐を描くドキュメンタリーを、予定とは異なるものへと変えていった。

2019年12月31日よりNetflixオリジナルシリーズとして全世界への配信が始まったドキュメンタリー『ARASHI’s Diary -Voyage-』。英語、フランス語、ドイツ語、ヘブライ語、アラビア語など28カ国語の字幕が付けられ、190カ国で視聴可能。休止に向かう大野智、櫻井翔、相葉雅紀、二宮和也、松本潤の日々とその想いが収められている。

2020年11月11日時点で17話までを配信。配信されたタイトルは、1話「二十年」、2話「5×20」、3話「でも 僕らは」、4話「ずっと5人で」、5話「ぞれぞれの想い」、6話「活動休止を発表」、7話「AIBA’s Diary」、8話「SHO’s Diary」、9話「2020年4月」、10話「世界中に嵐を」、11話「Turning Up」、12話「デジタルの世界へ」、13話「2019年11月」、14話「5×20 Tour Final」、15話「2020年」、16話「OHNO’s Diary」、17話「アラフェス2020に向かう」。(※追記:11月30日までに第18話「11月3日へ」、第19話「NINO’s Diary」、第20話 「7年振りの国立競技場」が配信中)

だが、これはただのドキュメンタリーではない。ドキュメンタリーという形を借りて、6人目の嵐メンバーとして、ファンを並走させようというもくろみなのだ。徹夜でライブ作りに没頭していく嵐のメンバーの姿に、「こんな顔は見たくない」というSNSの声もあった。でも、それでも彼らは見せたいのだ。共有させたいのだ。ゴールを切るところまで、すべてを。ついでに、ひとつも飾っていない姿、人間なんだということも見せたいのだと感じた。

「あのときとは見ているものが違う。使命が、やらなければならないことが変わってきている」

カメラが回り始めたのは、2018年9月12日。第1話「二十年」。まだファンに休止を伝えていない嵐が、20周年アニバーサリーツアー<5×20>をどんな内容にするか、演出を担当する松本潤を核に詰めていく様が撮影される。当初は、嵐の20年間の活動、それぞれの休止への想い、アニバーサリーとしての<5×20>の意味、休止発表以降の2年間で行おうとしている活動を記録し、ファンへ、世界へ伝えようと始めた企画だったのだろう。しかし、前述のように世界中で猛威を振るい始めた新型コロナウイルスの存在が、このドキュメンタリーをスリリングなものへと変えた。

2020年4月7日に出された緊急事態宣言を受け、櫻井翔、松本潤がメンバーとスタッフをオンライン会議に緊急招集し、いま何をするべきかを話し合う第9話「2020年4月」は、当然、予定にはなかった内容だろう。

2019年11月3日に発表した5大SNS解禁、2020年4月の中国・北京国家体育場でのライブ、5月の国立競技場でのライブ開催のうち、北京公演の中止を2月15日に、国立公演の延期を4月14日に発表する(無観客にて行い、11月3日に配信)。そしてライブはおろか、個人の行動も自粛を要請される事態に突入。

そこで櫻井と松本が企画したのは、新型コロナウイルスで休校となり、ずっと家にいる子どもたちと、在宅勤務で仕事中も子どもと向き合うことになった親世代、そして全・嵐ファンに向けたオンライン・コンテンツの配信だった。

まず、2017~2018年に行ったライブ「untitled」の期間限定無料配信。次に、メンバーがそれぞれの場所から参加して読み聞かせるYouTubeでの「リモート紙芝居」。そして2011年の東日本大震災を機に始まったチャリティ・イベント「嵐のワクワク学校」のオンライン版の配信を決定し、実行していく過程が記録された。

「ファンの人が喜んでくれ、観たいこと、心が穏やかになること、大変な人が救われること。そういうことが必要なのかな?」「あのときとは見ているものが違う。使命が、やらなければならないことが変わってきている」と櫻井。

嵐が国民的アイドルとされるのは、売り上げやファンクラブの数だけではなく、こうして公益性のある“自分たちにできること”を自発的に考え、実行してきたことがそう呼ばせるのだと思う。

第15話「2020年」には、国立でのライブの打合せに入るところから徐々に状況が厳しくなり、すべての予定が中止・延期となっていくさまが映し出される。その冒頭は、8月に嵐のメンバー全員で「第71回NHK紅白歌合戦」を観ている場面。「紅白に出てるんだね」という大野の客観的な言葉の通り、自分たちのパフォーマンスを客観的に観る暇なく走り続けてきたことが表現される。くしくも冒頭で述べた11月3日に配信された無観客ライブ<アラフェス 2020>を、メンバーもリアルタイムで観ている図とシンクロする。

5人がお互いに認め合う、友だちとも、単なる仕事仲間とも違う関係性

嵐の5人は、互いを補完する術を知っている。グループ結成当初はそうもいかなかったかもしれないが、20年の時間はもともと彼らが持っていたポテンシャルを熟成させた。現在の嵐は、それぞれ形の違うピースが無理なく嵌まることで成立している。第4話「ずっと5人で」で大野が「嵐って20年、内に向いてきてたから強いのかなと思う」と語る通り、5人がそれぞれ“グループにどう貢献できるか(=内に向く)”を意識してきたからだろう。

ファンの方には異論もあるかもしれないが、嵐というグループはこんなメンバーで構成されているように見える。歌、ダンス、絵に力を発揮するクリエイターでグループの性格形成に影響を与えたリーダー・大野、日本のラップ文化醸成に貢献するグループの調整役で頭脳・櫻井、ムードメーカーで誰をも魅了する正統派アイドル・相葉、作曲・ダンス・演技と天才肌でありながら運営・演出ではアシストに回れる二宮、王道アイドルながら妥協を許さない演出家でもある松本。

持ち分がそれぞれ異なり、その何を担当している者が上で、何が下というのではなく、誰もが同じ土俵に立っている。どこかの番組で「嵐のメンバーを簡単に飲みに誘えない」と松本が言っていたのも、その表れだろう。友だちとも、単なる仕事仲間とも違う関係性を、互いに認めているからこそ。

嵐のメンバーは、ライブへ、記者会見へ向かうとき、握手をする。第6話「活動休止を発表」でも、握手で活動休止会見に向かうメンバーの姿が映し出される。2019年1月27日。櫻井は、「ここに着いたら今日、初めて(休止を)聞いた恐ろしい数の事務所のスタッフがいた。総勢何名なのかも想像つかないスタッフたちを守り切るっていうことだった」と語る。一人ひとりの肩に、アーティストとしてのクオリティだけでなく、恐ろしいほどのビジネス的責任が乗っている。

休止発表後、初めてのライブが4月13日、愛知県ナゴヤドームで行われた。「嵐にしやがれ」(日本テレビ系)のコーナー「MJ倶楽部」で山崎賢人から取り戻したコートを着た松本は、「前日は全然寝られなかった」と言う。スタート前、松本は大野にコンサートのMCで休止について触れるか確認する。一瞬、場の空気が緊張するが、「1回やってみて」と答える大野に相好を崩す。「まあ、1回しかないんだけどね(笑)」と。

文:関口裕子

Netflixオリジナルドキュメンタリーシリーズ『ARASHI’s Diary -Voyage- 』はNetflixで独占配信中

 

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『ARASHI's Diary -Voyage- 』

デビューから20年、国民的アイドルへと成長した嵐。新たな門出を迎え、さらなるチャレンジに取り組む5人の素顔に迫り、その魅力を世界に届ける。

制作年: 2019
出演:
  • BANGER!!!
  • ドラマ
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