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ディズニーアニメ60作目! ラテンミュージカル『ミラベルと魔法だらけの家』にトップクリエイターが集結

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ライター:#増田弘道
ディズニーアニメ60作目! ラテンミュージカル『ミラベルと魔法だらけの家』にトップクリエイターが集結
『ミラベルと魔法だらけの家』© 2021 Disney. All Rights Reserved.

ディズニーアニメ60作目にふさわしい才能が結集

新型コロナウイルスの影響が峠を超しそうな気配を見せてきた2021年末、ディズニーが映画館に戻ってきた。日本同時公開、映画興行の最盛期に登場する『ミラベルと魔法だらけの家』には否が応でも注目が集まりそうだ。

しかも、監督は『塔の上のラプンツェル』(2010年)『ズートピア』(2016年)のバイロン・ハワードで、その彼がミュージカルに挑戦。さらに、作品の核となる音楽を手がけているのは、最近映画化されたブロードウェイミュージカル「イン・ザ・ハイツ」や、トミー賞をはじめアメリカの演劇賞を総なめにしたミュージカル「ハミルトン」のリン=マヌエル・ミランダ(『モアナと伝説の海』[2016年]も担当)、共同担当者としてピクサーの『リメンバー・ミー』(2017年)のジャーメイン・フランコまでもが参加しているという、まさに『白雪姫』(1937年)から数えて60作目となるディズニーのアニバーサリー・アニメーションにふさわしい豪華な才能が集った作品である。

『ミラベルと魔法だらけの家』© 2021 Disney. All Rights Reserved.

ディズニーの魔法復活

『ミラベルと魔法だらけの家』のテーマはズバリ魔法。その意味ではディズニー・アニメーションの原点への回帰とも言える作品である。舞台は南米だが、今までのディズニー・アニメーション史で彼の地が舞台になった作品は今まで二つしかない。ひとつ目はウォルト・ディズニーがスタッフを引き連れてロケハンまでした『ラテン・アメリカの旅』(1942年)、ふたつ目がインカ帝国を思わせる若き王様が主人公の『ラマになった王様』(2000年)。そして、三作目となるのがコロンビアの山地にある“エンカント/Encanto”と呼ばれる魔法の家が舞台となる本作である。

『ミラベルと魔法だらけの家』© 2021 Disney. All Rights Reserved.

この家で生まれたマドリガル一家の人々は、5歳になると“魔法のギフト(天賦の才能)”が与えられるのだが、家族の中でただ一人だけその“ギフト”を与えられないまま少女になったのが主人公のミラベルである。一家のリーダーであるおばあちゃんはもちろん、両親、二人の姉、おじさん、おばさん、それに大勢いるいとこもみんな素晴らしい魔法が使えるのに、なぜかミラベルだけが使えない。
そんな悩みを抱えながら悶々とするミラベルだが、ある日“魔法の家エンカント”に亀裂が走るビジョンを見る。やがてミラベルは繰り返されるそのビジョンが“エンカント”から魔法が失われる兆しであると気がつくのだ。ミラベルはいてもたってもいられなくなり、魔法の家の秘密を探ろうと行動に移すが……。

ラテン・ミュージカルの可能性

古くは『白雪姫』などのディズニー・クラシック、近年においても『美女と野獣』(1991年)『アラジン』(1992年)『アナと雪の女王』(2013年)などにおいて顕著であるが、ミュージカル作品のキモは何と言っても音楽である。『アナと雪の女王』も公開前から大評判となった「Let It Go」が、歴代映画興行収入4位という空前のヒットの呼び水となった。

『ミラベルと魔法だらけの家』も当然その見所(聞き所)は音楽ということになるが、ここでポイントとなるのがラテン音楽。アメリカはすでにラティーノ(スペイン語圏だけではなくフランス語圏のハイチやポルトガル語圏のブラジルも含むラテン系アメリカ人)の人口が黒人を追い抜いたという調査があるように、彼らがたしなむラテン音楽がアメリカの主流のひとつになりつつあるという状況がある。

2021年は、『ミラベルと魔法だらけの家』の音楽を担当しているリン=マヌエル・ミランダが手がけた、ハイチ系住民が主人公のミュージカル映画『イン・ザ・ハイツ』(2020年。ミランダはブロードウェイのミュージカルでは脚本や主演まで務めた)が公開されたが、2022年2月にはニューヨークのプエルトリコ人の存在を強く印象づけた不朽の名作ミュージカル『ウェスト・サイド・ストーリー』がスティーヴン・スピルバーグ監督によってリメイク公開されるので、2021~2022年はラテン音楽躍進の年としても記憶に残るのではないか。

ディズニーヒロインの変化

ディズニーのヒロインも変わりつつある。ディズニーのクラシックアニメーションのヒロインはほとんどが白人の女性であった。伝統的と言えば伝統的、保守的と言えば保守的な価値観に支えられていた時代が続いていたが、アメリカ社会で進みつつある多民族社会・人種的多様性を反映して、ディズニーにおいてもヒロインのありようが変化を遂げつつある。ディズニーの場合、実は1990年代後半、時代に先駆けて『ムーラン』(1998年)や『ポカホンタス』(1995年)といった中国人やネイティブアメリカンのヒロインを登場させている。2009年の『プリンセスと魔法のキス』のプリンセスはアフリカ系アメリカ人であった。

そして、その動きはオバマ大統領の時代を経て本格化する。それが『モアナと伝説の海』(ネイティブハワイアン)であり、2021年の『ラーヤと龍の王国』(アジア人)であり、『ミラベルと魔法だらけの家』(ラティーノ)といったヒロインの出現であった。11月5日より公開中のマーベル作品『エターナルズ』では、世界的なトレンドである人種的多様性、地球温暖化、LGBTQといったテーマが全て盛り込まれていた。おそらくディズニー・アニメーションもキッズ/ファミリーが対象という前提はあるものの、多様な価値を取り込んだ作品づくりを目指すものと思われる。日本人がヒーロー/ヒロインになるディズニー・アニメーションの登場は案外近いかもしれない。

文:増田弘道

『ミラベルと魔法だらけの家』は2021年11月26日(金)より全国公開

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『ミラベルと魔法だらけの家』

魔法の力に包まれた、不思議な家に暮らすマドリガル家。
家族全員が家から与えられた“魔法のギフト(才能)”を持つ中で、少女ミラベルだけ何の魔法も使えなかった。

ある日、彼女は家に大きな“亀裂”があることに気づく──それは世界から魔法の力が失われていく前兆だった。 残された希望は、魔法のギフトを持たないミラベルただひとり。

なぜ、彼女だけ魔法が使えないのか?
そして、魔法だらけの家に隠された驚くべき秘密とは…?

制作年: 2021
監督:
音楽:
声の出演: