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芦田愛菜&大竹しのぶインタビュー! アニメ『岬のマヨイガ』 “声”に感情を込める難しさと“感性”の育て方

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ライター:#SYO
芦田愛菜&大竹しのぶインタビュー! アニメ『岬のマヨイガ』 “声”に感情を込める難しさと“感性”の育て方
芦田愛菜 大竹しのぶ

アニメ映画で10年ぶりの再会

芦田愛菜大竹しのぶ。2011年のNHK大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』で初共演したふたりが、10年の時を経てアニメで“再会”を果たした。柏葉幸子のファンタジー小説を映画化した『岬のマヨイガ』(2021年8月27日[金]公開)だ。

『岬のマヨイガ』©柏葉幸子・講談社/2021「岬のマヨイガ」製作委員会

ある事件で、居場所を失った17歳の少女ユイ(芦田愛菜)と、声を失くした8歳のひより(粟野咲莉)。ひとりぼっちだったふたりは、不思議な老婆キワさん(大竹しのぶ)と出会い、特別な力を持った古民家「マヨイガ」で暮らし始める。

『のんのんびより』シリーズ(2013年ほか)の川面真也監督がメガホンをとり、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』シリーズ(2018年ほか)や『若おかみは小学生!』(2018年)、『映画 聲の形』(2016年)の吉田玲子が脚本を担当。アニメーション制作は『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ(2012年ほか)のdavid productionが務めた。

『岬のマヨイガ』©柏葉幸子・講談社/2021「岬のマヨイガ」製作委員会

このたびBANGER!!!では、芦田と大竹に単独インタビュー。作品についてはもとより、「声の演技について」「感性の保ち方」についても伺った。

芦田愛菜 大竹しのぶ

身の回りにある“小さな幸せ”に気づかせてくれる作品

―ほっと一息つける優しさを内包しつつ、根底には喪失や哀しみのドラマがあり、観終えた後も余韻が残る豊かな作品だと感じました。芦田さん、大竹さんは脚本を初めて読んだ際、どんな感想を持ちましたか?

芦田:タイトルにもある「マヨイガ(迷い家)」は、岩手県の伝承で「訪れた人をもてなしてくれる家」のことです。どこかにあるはずだけど、見つけられる人がいれば、そうでない人もいる不思議な存在ですね。それは、身の回りにある小さな幸せと通じるなと感じました。ちゃんとそばにあるのに、なかなか見つけるのが難しい――脚本を読んだ際はそんなメッセージを感じて、すごく素敵な心温まる話だと思いました。

大竹:“ふしぎっと”と呼ばれる昔話の住人が出てきますし、物語の内容としても、「忘れてはいけない」というメッセージや要素をたくさん感じました。

『岬のマヨイガ』©柏葉幸子・講談社/2021「岬のマヨイガ」製作委員会

―本作は、脚本段階から画が付くことで、また大きく進化した映画かなと思います。美しい自然の描写やご飯の描き方など、その世界に暮らしている感覚を得られますが、出来上がった作品をご覧になっていかがでしたか?

芦田:おっしゃる通り、自然や街並みの描写がすごくリアルで、マヨイガが本当にあるんじゃないか、このお話は本当なんじゃないかと思わされました。ご飯のシーンは私もすごく好きで、温かいご飯・美味しいご飯をみんなで一緒に、会話しながら食べている雰囲気がとても温かかったです。キワさん・ユイ・ひよりが3人で縁側で味噌おにぎりを食べているシーンは、「美味しそうだな」と思いながらアフレコをしていました。

『岬のマヨイガ』©柏葉幸子・講談社/2021「岬のマヨイガ」製作委員会

大竹:あれは食べたいよね。

芦田:はい! くだらない話で笑い合いながら食べている雰囲気がすごく素敵で、これこそが“小さな幸せ”と感じましたし、そうした心が温かくなるところをぜひ観ていただきたいです。

大竹:緑があってお花や自然があって、河童たちがいて……。日本の豊かさや凄さを、改めて感じました。

芦田愛菜 大竹しのぶ

声だけにすべての感情を込める難しさ

―ちょうど先日『漁港の肉子ちゃん』(2021年)を拝見したのですが、大竹さんの声の演技が本作ではまたがらりと変わっていて驚きました。

大竹:きっと声優さんだったら子どもの声からおばあちゃんの声までトーンを変えられると思うのですが、それはとても難しくて、色々と思考錯誤はしましたね。最初は方言を入れたほうがおばあちゃんっぽくなるかなと思ったのですが、「具体的に“この場所”という風にしたくないので、あまり作り過ぎないでください」とご指示いただき、自分の中では「低めの声」ということを決めて臨みました。

肉子ちゃんの場合は「テンション高めです」と渡辺歩監督からリクエストいただきました。アニメの場合はもう画が演技しているので、そこに合わせて調整していくのが面白さであり難しさだと思います。

大竹しのぶ

―キワさんはどこかこの世ならざる者の雰囲気があるというか、人間とふしぎっとの両方と交流できるポジションであるぶん、絶妙な塩梅を演じるのが大変だったのではないかな、と感じました。

大竹:本当に大変でした(笑)。私はアニメに限らずそうなのですが、出来上がったものを観ると1回目は落ち込んでしまうんです。実写だとまだ顔が映っているぶん表現できている感じがあるけど、声だけだと「自分では精いっぱい表現したつもりでも、まだ足りないかな」と思ってしまうし、「声で生きる」ってすごく難しいなと毎度思わされます。

『岬のマヨイガ』©柏葉幸子・講談社/2021「岬のマヨイガ」製作委員会

芦田:わかります。ドラマや実写映画だと、表情や動きで表現できますが、声優さんのお仕事だと画面に映っているキャラクターの顔に合わせて声だけで気持ちを表現しなければならないから「もっともっとやらないと伝わらないな」とか「これくらいやってちょうどいいんだな」と、毎度難しさがありますね。でも、それが楽しさでもあります。

芦田愛菜

―おふたりともナレーションのお仕事も多数されていますが、ナレーションはまた声の使い方が違いますよね。

大竹:ナレーションはあんまり感情的にならずに、つたえるべきことははっきり伝える感じですね。それはそれで、また違った難しさがあります。

芦田愛菜と大竹しのぶの「感性の保ち方」

―本作では、ユイの心情の変化が物語の展開に直結しています。芦田さんは、どのように気持ちのグラデーションを作っていったのでしょう?

芦田:そこは、かなり悩んだところです。最初はちょっとそっけない感じがあって、でもそれはみんなのことが嫌いなのではなくて、過去に色々あったからこそ優しくなれない。でも本当はきっと優しい子なんだろうなというのは、少しずつ表現したいなと思っていました。

『岬のマヨイガ』©柏葉幸子・講談社/2021「岬のマヨイガ」製作委員会

最初は心を閉ざしていたけれど、ひよりとキワさんの優しさにどんどん触れて、前向きに生きていけるし、周囲を気遣って思いやりを見せられるようになっていく。そのバランスは難しかったですね。どこまで不愛想にするのか、この段階で優しくなりすぎるのも変だし……と悩みながら取り組みました。

芦田愛菜

―おふたりとも別ベクトルの苦労があったのですね。それこそ、ディレクターからの要望に応えるためには表現力と対応力が必要になってくるわけですが、おふたりはどのようにして感性を保っていらっしゃるのでしょう。

大竹:私は、舞台をやっているときはストレッチや声出しはするようにしていますが、公演が終わったとたんにやらなくなっちゃいます(笑)。お菓子を食べてだらだらしながら韓国ドラマを観て……となっちゃうから、ダメだなぁと思いますね(笑)。

大竹しのぶ

ただ、本当に些細なことでも無神経にならないように生きていきたいとは思っています。人の優しさとか、小さなお花が咲いた喜びとか、全ての感情に真剣に向き合いたいですね。よく父が「死ぬまで勉強だよ」と言っていたのですが、本当にそう思います。

たとえば、お買い物に行っておじいさんを見かけたときなどに「一人暮らしかな、大変そうだな」「荷物を持ってあげたいけど、いまはコロナ禍だから触れたらいけないかな」とか、心で感じることはたくさんありますよね。そういった一つひとつが、役者としての表現につながる気はします。

『岬のマヨイガ』©柏葉幸子・講談社/2021「岬のマヨイガ」製作委員会

芦田:私は読書がすごく好きで、よく「読書は役に立っていますか?」と聞かれることが多いのですが、「役に立てよう」と思って読んではいないんです。もちろん読んだ経験が蓄積されて何かにつながっている部分はあるかと思いますが、ただただ好きだから読んでいるだけなんですよね。その「好き」が大きいと感じています。

今はまだ時間的に余裕がないのですが、大人になったら旅をしたいと思っています。歴史が好きなので、遺跡巡りをしたいですね。音楽もすごく好きで、クラシックを聴いていると風景が浮かんできますし、ポップスや洋楽も音の連なりを聴いているだけでイメージできるものがあって、素敵だなと思います。バレエも観に行きたいですし、そうした色々な「好きなもの」に触れることが、感性につながっていくのかなと考えています。

芦田愛菜 大竹しのぶ

取材・文:SYO
撮影:川野結李歌

『岬のマヨイガ』は2021年8月27日(金)より全国公開

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『岬のマヨイガ』

ある事情で家を出てきた17歳のユイと、両親を事故で亡くしたショックで声を失った8歳のひより。居場所を失った二人は、ふしぎなおばあちゃん・キワさんと出会い、海を見下ろす岬に建つふしぎな古民家“マヨイガ”に住むことに。

なりゆきでキワさんに付いて来てしまった二人だったが、訪れた人をもてなす伝説の家“マヨイガ”、そしてキワさんの温もりに触れ、それぞれ傷ついた心は次第に解きほぐされていく。

そんなある日、“ふしぎっと”と呼ばれる優しい妖怪たちがキワさんを訪ねてきた。彼らは町で相次ぐ怪奇現象を調べるため、キワさんに力を貸しに来てくれたのだった。

ふしぎっとの存在と共に、キワさんは昔からこの地に伝わる伝説“アガメ”のことを語り出す。人々の悲しい思いを糧に大きくなっていくという“アガメ”と、人々を陰から守る存在“ふしぎっと”。新しく見つけた居場所と、自分のまわりの優しい人々を決して傷付けたくないと強く思うユイ。

ユイとひより、そしてキワさんは、それぞれの過去を乗り越え、大切な居場所を守ることができるのだろうか――。

制作年: 2021
監督:
声の出演: