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娼婦16人を殺害した“スパイダー・キラー事件” 英雄視されていく犯人の真の姿とは 『聖地には蜘蛛が巣を張る』冒頭シーン解禁

娼婦16人を殺害した“スパイダー・キラー事件” 英雄視されていく犯人の真の姿とは 『聖地には蜘蛛が巣を張る』冒頭シーン解禁
『聖地には蜘蛛が巣を張る』©Profile Pictures / One Two Films

「第75回カンヌ国際映画祭」にてザーラ・アミール・エブラヒミが女優賞を受賞し、「ロバート賞」で作品賞、監督賞など今年度最多11部門に輝いた、鬼才アリ・アッバシ監督の最新作『聖地には蜘蛛が巣を張る』が、4月14日(金)より公開。このたび、世界49以上の映画祭を震撼させた本作より、冒頭シーンの一部が解禁となった。

それは、一線を越える

本作は、イランの聖地マシュハドで2000年から2001年にかけて16人もの犠牲者を出し“スパイダー・キラー事件”と呼ばれたサイード・ハナイによる娼婦連続殺人事件に着想を得た、戦慄のクライム・サスペンス。監督を務めたのは、「第71回カンヌ国際映画祭」ある視点部門でグランプリを受賞した『ボーダー 二つの世界』(18)でスリリングなファンタジーの世界を描き、映画界の注目を一気に集め、最近では話題沸騰のHBOドラマ「THE LAST OF US」第8話、最終話の演出も手掛けた北欧の鬼才アリ・アッバシ。

聖地マシュハドの闇に殺人鬼の姿が溶けていく…

今回解禁となったのは、聖地マシュハドで、またひとり“スパイダー・キラー”と呼ばれる殺人鬼により殺害された娼婦のアップから始まる冒頭シーンの一部映像。男は淡々と殺害した娼婦の死体をヒジャブで包み、バイクの後ろに乗せて運び、夜の荒野に捨てていく。再びバイクで暗い道を進む男の指に光るのは、敬虔な信者の証を示す赤いメノーの指輪。蜘蛛の巣のように広がるマシュハドの街の光の中に男の姿が溶けていき、本作の原題“Holy Spider(聖なる蜘蛛)”がペルシャ語と英語で浮かびあがる—。

男の乗るバイク音に重なるように聞こえてくる音楽を担当したのは、アリ・アッバシ監督の『マザーズ』『ボーダー 二つの世界』も手掛けたデンマーク出身の作曲家マーティン・ディルコフ。本作にて、ロバート賞(デンマーク・アカデミー賞)作曲賞を受賞した。監督いわく「マシュハドの暗黒部が持つ無骨で、工業的な要素に合うものにしたいと思っていた」イラン的なグランジの感性を表現したというサウンドデザインと相まって、男の正体への興味と得体のしれない不穏さを感じさせる印象的なシーンとなっている。

アリ・アッバシ監督は、映画化のきっかけについて「『聖地には蜘蛛が巣を張る』は、イランで最も悪名高き連続殺人犯、サイード・ハナイの壮絶な一生を描いた作品だ」と言及した上で、「犯人が敬虔な信者で模範的な人物であることを踏まえると、イラン社会に対する風刺作品であるともいえる」と語る。そして「ハナイが聖なる街マシュハドで娼婦を襲っていた2000年代初頭は、私もまだイランに住んでいた頃だった。ハナイは、逮捕され、裁判にかけられるまでに、16人もの女性を殺害した。私がこの事件に関心を持ったのは、その裁判が行われている時だった。普通の世界なら、16人も殺した男は犯罪者として見られるはずだ。しかし、ここでは違った。一部の市民や保守派メディアは、ハナイを英雄として称え始め、ハナイは“汚れた”女たちを街から始末するという宗教的な務めを果たしただけだと擁護したのだ。私はそれを知った時に、この出来事を基に映画を作ろうと思った」と振り返っている。

『ボーダー 二つの世界』で、善と悪、美と醜など世の中のあらゆる“境界”の既成概念を揺さぶり、私たちに潜む差別や優劣意識を白日の下に晒したアッバシ監督。人間の本性を凝視する視線はそのままに、本作では、娼婦連続殺人事件の全容から、私たち人間に潜在する狂気と恐怖を暴き出す。

『聖地には蜘蛛が巣を張る』は4月14日(金) より公開

『聖地には蜘蛛が巣を張る』©Profile Pictures / One Two Films

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