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“その愛は、純粋か、支配か” 美しい青年と映画監督のパワーゲーム『苦い涙』予告編&ポスタービジュアル解禁

“その愛は、純粋か、支配か” 美しい青年と映画監督のパワーゲーム『苦い涙』予告編&ポスタービジュアル解禁
『苦い涙』© 2022 FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION ©Carole BETHUEL_Foz

世界三大映画祭の常連で、『Summer of 85』『すべてうまくいきますように』など話題のヒット作が続くフランソワ・オゾン監督の最新作『苦い涙』が、6月2日(金)より公開。このたび、日本版予告編映像と、グラフィックデザイナーの大島依提亜のデザインによるポスタービジュアルが解禁となった。

その愛は、純粋か、支配か—

2000年代に手がけた『まぼろし』『8人の女たち』『スイミング・プール』で世界的な脚光を浴び、その後もほぼ年に1本のペースで長編映画を発表し、その大半が世界三大映画祭のコンペティションに選出されてきたフランソワ・オゾン監督。近年では、実話を映画化した『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』でベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員特別賞)受賞、現在公開中の『すべてうまくいきますように』も絶賛を博している。

活躍ぶりが目覚ましいオゾン監督の最新作である『苦い涙』は、『焼け石に水』以来20年ぶりに、ニュー・ジャーマン・シネマの伝説的な映画作家ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの名作『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』(1972)の再創造に挑んだ愛の物語。1970年代ドイツのアパルトマンを舞台にした室内劇という作品の大枠はそのままに、ファスビンダーが描いた女性同士の恋愛関係を男性同士に置き換え、ファッション・デザイナーだった主人公の職業を映画監督に変更。さらに現代的な視点とオゾン特有の美意識に基づくアレンジが施され、風刺やユーモアをふんだんに織り交ぜた語り口は驚くほど軽やか。カラフルな壁紙に写真や鏡をあしらったアパルトマンの装飾にも目を奪われる。

著名な映画監督ピーター・フォン・カントが、俳優志望の美青年アミールに心を奪われ、情熱的に結ばれて公私にわたりサポートするが、奔放な美青年に翻弄される。その果てにあぶりだされる、残酷ではなかい愛の本質。オゾン監督は恋愛にとどまらない人間関係や芸術における支配と隷属のパワーバランスを鋭く考察し、ユーモラスかつシニカルに「人を愛するということとは何なのか」という根源的な問いを投げかける。

『苦い涙』© 2022 FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION ©Carole BETHUEL_Foz

『苦い涙』© 2022 FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION ©Carole BETHUEL_Foz

名優イザベル・アジャーニらが豪華競演

キャストには、オゾン作品初登場にして強烈な存在感を放つ名優イザベル・アジャーニのほか、フランス映画界屈指の人気実力派ドゥニ・メノーシェ、長編映画初出演にして目が離せない新鋭ハリル・ガルビア、本作でみごと2023年セザール賞の有望若手新人賞にノミネートされたステファン・クレポン、そしてファスビンダーのミューズでありオリジナル版で準主役を演じたハンナ・シグラという豪華キャスト競演。刺激的なヴィジュアルと、1960~70年代のヒットソングをちりばめた秀逸なセンスの音楽など、見どころの尽きない濃密でエモーショナルなメロドラマとして完成し、第72回ベルリン国際映画祭のオープニングを華々しく飾った。

予告編では、1967年に日本でのみシングルカットされ大ヒットしたウォーカー・ブラザーズ「孤独の太陽」の印象的なイントロで鷲掴みにされ、ファスビンダーの名作のリメイクであることが明かされる。魅力的な青年、スター女優、映画監督、助手、という見るからに癖のある登場人物たちが紹介される。エゴイスティックな愛に翻弄される映画監督と美しい青年のパワーゲームを軸に、アパルトマンの一室で繰り広げる人間模様が気になる展開を見せていく。正気を失うほど美青年に恋をしてしまう映画監督はどうなるのか。オゾン監督ならではの美意識で統一され、初期作品を思い起こすようなヴィヴィッドなカラーと、室内のインテリアや装飾へのこだわり、そしてカメラ目線で熱い視線を送る美青年のラストカットに、本編を期待せずにはいられない映像になっている。

日本版ポスタービジュアルは、グラフィックデザイナーの大島依提亜がデザインを担当。ゴールドを基調に豪華キャストが勢ぞろいしたポスターは、オゾン監督のもとに集結した最高の俳優たちによる絶妙のアンサンブルを期待できるゴージャスなビジュアルだ。劇中でイザベル・アジャーニ演じる女優シドニーが歌うオスカー・ワイルドの詩を基にした歌から引用した「人は愛するものを殺す(でも誰も死なない)」という意味深なキャッチコピーが添えられている。

実はフランソワ・オゾンの作品の日本版デザインを担当するのもかれこれ5作目。最初に担当した初期の傑作『焼け石に水』と同じく、今回の『苦い涙』はファスビンダーの戯曲が原案と、さらに縁を感じますが、お洒落で(珠玉の70sインテリアや衣装の数々に悶絶!)妙に可笑しい作風も、どこか『焼け石に水』と共通して、一見すると原点回帰ともいえます。しかし!これまでの監督としての経験とキャリアだからこそのオゾンの成熟ぶりは、技術やテーマ性、全てにおいて目を見張るばかりで、その辺も存分に堪能頂けるかと思います。
(大島依提亜/グラフィックデザイナー)

『苦い涙』は6月2日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

『苦い涙』© 2022 FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION ©Carole BETHUEL_Foz

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