“毒と笑い”で社会を覗く？ カンヌ＆オスカー2冠に期待『逆転のトライアングル』ほかブラックユーモア満載な今冬注目の映画＆ドラマ4選

この冬注目のブラックコメディ映画＆ドラマ

これは笑っていいのか……？ と戸惑ってしまうような鋭い“毒”の効いたユーモアが癖になるブラックコメディ。2022年から同ジャンルの作品が多くの映画賞で軒並み高く評価されており、世界的なトレンドと言えるほどの盛り上がりを見せている。

その勢いは2023年も留まらず、ただ笑えるのではなく“社会と人間”を冷静に見つめ、時代を読み解くきっかけにもなる優れた作品が勢ぞろい。ということで、現在公開中＆もうすぐ公開の“旬”なブラックコメディ映画／ドラマを一挙に紹介したい。

『逆転のトライアングル』Fredrik Wenzel © Plattform Produktion

『逆転のトライアングル』2月23日（木・祝）公開

リューベン・オストルンド監督の『逆転のトライアングル』は、前作『ザ・スクエア 思いやりの聖域』に続き2作品連続でカンヌ最高賞パルムドール受賞という、史上3人目の快挙を成し遂げた大注目作だ。

さらに本年度アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞の主要3部門にノミネートされており、『パラサイト 半地下の家族』に次ぐ“カンヌ＆オスカー”の2冠達成なるか!? と一層の注目を集めている本作。驚くべき人間観察眼とセンス抜群のブラックユーモアを持つ“ブラックコメディの申し子”ことオストルンド監督が、「もし豪華客船が無人島に漂着したら……？」というシチュエーションに挑む。

『逆転のトライアングル』Fredrik Wenzel © Plattform Produktion

ルックスの美しさで生きるインフルエンサー、ロシアの大富豪、武器商人の上品な老夫婦、巨額のチップを夢見る船の客室乗務員たちが乗った豪華客船が難破し、無人島に漂着。金も宝石もゴミと化し、SNSも機能しない島でヒエラルキーの頂点に立ったのは、サバイバル能力抜群の船のトイレ清掃婦だった……！

『イニシェリン島の精霊』公開中

演劇出身の強みを最大に生かした作風が高い評価を受け、映画界の最前線に立つマーティン・マクドナー監督の最新作。第80回ゴールデングローブ賞で最多3部門受賞を果たし、第95回アカデミー賞では主要9部門にノミネートされている。

『イニシェリン島の精霊』©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

娘を殺された母の怒りを描いた『スリー・ビルボード』で、主演のフランシス・マクドーマンドに2度目のアカデミー賞主演女優賞をもたらしたマクドナーが本作で描くのは、中年男たちの“絶交”。長年育んできた友情に亀裂が入ってしまうもの悲しいストーリーに人間讃歌の優しいユーモアが加えられ、マクドナーらしい深みのあるブラックユーモアが唯一無二の作品。

『コンペティション』 3月17日（金）公開

ペネロペ・クルス×アントニオ・バンデラス共演、スペイン発業界風刺エンターテイメント。『ル・コルビュジエの家』『笑う故郷』などシニカルな笑いに定評のあるアルゼンチンの監督コンビ、ガストン・ドゥプラットとマリアノ・コーンが描くのは、誰もが憧れる華やかな映画業界の裏側で本当に繰り広げられているかもしれない、天才監督と人気俳優2人の三つ巴の戦い。エゴとプライドにまみれた3人の全力の小競り合いが驚くほどスタイリッシュな手法で描かれ、ラテンのブラックユーモアが存分に表現されている。

「ホワイト・ロータス／諸事情だらけのリゾートホテル」シーズン1～2  U-NEXTで独占配信中

本年度ゴールデングローブ賞で作品賞（リミテッド・シリーズ）と助演女優賞（ジェニファー・クーリッジ）を獲得した話題のドラマ。ハワイのリゾートホテル＜ホワイト・ロータス＞を舞台に、訪れる客や従業員の複雑な事情をシュールに描いたコメディに、ミステリーの要素も含まれているのがポイントだ。

全6話のリミテッドシリーズとして終わる予定が、あまりの人気ぶりにシーズン2が完成。白人特権層に向けられた毒は時に同情してしまうほど強烈だが癖になってしまう人が続出し、シーズン3の制作も決定している。