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警官の囚人虐殺事件への怒り、刑務所でMV撮影 リアルを叫ぶ反骨のヒップホップクルー『Racionais MC’s:サンパウロのストリートから』

警官の囚人虐殺事件への怒り、刑務所でMV撮影 リアルを叫ぶ反骨のヒップホップクルー『Racionais MC’s:サンパウロのストリートから』
『Racionais MC's:サンパウロのストリートから』

Netflixで配信中の『Racionais MC’s:サンパウロのストリートから』は、ブラジルで絶大な影響力を持つヒップホップグループ・Racionais MC’s(日本表記=ハショナイスMC’s)のこれまでの活動を、当時のライブ映像やミュージック・ビデオ、メンバーへのインタビューから振り返ったドキュメンタリーだ。

 

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ブラジリアン・ヒップホップが生んだ最高のグループ・ハショナイスは、サンパウロを拠点に1988年結成。ハショナイスは、サンパウロを拠点に1988 年結成。メンバーは、マノ・ブラウン、エディ・ロック、アイス・ブルー、K・L・ジェイの4人。サンパウロ周辺の貧民街出身だった彼らは、ストリートや裏社会のリアルをハードコアな歌詞にのせたことでブレイクし、ブラジルが抱える「貧困」「人種差別」「犯罪」に変革を呼び起こす社会運動の起爆剤となった。

1997年、伝説として語られる1stアルバム『Sobrevivendo No Inferno』をリリースし大ヒットした彼らを語るうえで、避けて通れないのが、1992年10月に発生した「カランジル虐殺事件」だ。サンパウロ・カランジル刑務所の囚人の暴動に対して警官が突入し発砲、111人が死亡するという事件だ。突入を指示したサンパウロ州軍警察大佐には懲役632年が言い渡された(大佐はその後、2006年に暗殺されている)。

ハショナイスは、その刑務所の元受刑者と共同で作曲されたトラック「Diario de um Detento(被拘禁者の日記)」は1992年の反乱前の緊張を歌詞にのせた。

「あの事件のことは書きたくなかった」と告白するマノだったが、囚人たちが「(虐殺について)誰も言ってないことを書いてくれ」という言葉に共感し、虐殺記事を書いていたジョセニールという囚人を探したという。

そして「別の刑務所にいた彼を見つけるために一年かかった。そして曲が生まれた。分かるか?刑務所を撮影したビデオがMTVの『ピープルズ・チョイス・アワード』を受賞し、歌が弾けた!」とマノは語る。

本物の刑務所で撮影したMVは強烈な印象を残し、現在の「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」に相当する賞にもつながった。ちなみに、カランジル刑務所は2002年12月、全所解体されているが、爆破解体シーンがこれまでのブラジルから新時代への変革をイメージするようにインサートされている部分も見逃せない。

ストリートの声を赤裸々に発信してシーンに台頭して一流のヒップホップ・グループとなった彼らだが、度重なるショーで観客と警官の衝突や「死体が転がっていても気にしない」観客の態度に違和感を覚える。メンバーの逮捕などで長引くだけ長引いた強制活動休止期間に自分を見つめ直す作業を行ったグループは10年かけてシーンの第一線に返り咲き10万人を集めるショーも成功させた。マノはこのことを「新時代の到来」と言ってみせた。

「俺はリーダーとしてすべてを知っている。哲学からロマンティシズムまで真剣に掘り下げた。俺が達成したことを新人のラッパーは超えてほしい。高みに行ってほしい。俺も行くから。しなくても俺がやる!」

マノ・ブラウンのこの言葉は、すべてのラッパーに送る金言となった。

『Racionais MC’s:サンパウロのストリートから』はNetflixで配信中だ。

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