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夫殺害の容疑者と不眠症の刑事「愛は大きなミステリー」 来日した鬼才パク・チャヌク監督『別れる決心』を語る

夫殺害の容疑者と不眠症の刑事「愛は大きなミステリー」 来日した鬼才パク・チャヌク監督『別れる決心』を語る
『別れる決心』© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED

『JSA』『親切なクムジャさん』『お嬢さん』で知られる韓国の名匠、パク・チャヌク監督の6年ぶりとなる新作『別れる決心』が、2023年2月17日(金)より全国公開。このたび都内でティーチインイベントが行われ、来日中のパク・チャヌク監督が本作を鑑賞したばかりの観客から投げかけられた様々な質問に、じっくりたっぷり答えてくれた。

「愛というものは、本当に大きなミステリー」

本作は本年度「アカデミー賞」国際長編映画賞部門の韓国代表に選出され、「カンヌ国際映画祭」コンペティション部門で監督賞を受賞、「第80回ゴールデングローブ賞」作品賞−非英語作品(旧・外国語映画賞)にもノミネートされている。

そんな本作を引っ提げ、5年10ヶ月ぶりの来日となったパク監督。「本当に久しぶりに劇場公開される長編映画を撮りました。コロナ禍を経て、『果たしてこの先、皆さんにこの映画を劇場で観てもらえる日が来るのだろうか?』と心配していたので、まるで初めて映画を作って、それを皆さんに観ていただくようなワクワク、ウキウキした気分でいます」という挨拶からイベントは始まった。

パク・チャヌク監督

まずMCより、「前作『お嬢さん』とは全く異なる設定ではありますが、愛の物語をミステリーというジャンルの枠組みで描く、という点では共通しています。ミステリーとロマンスを融合させるスタイルに、映画作家として惹かれる理由はなんでしょうか?」と問われると、監督は「私は、その2つの要素はとてもよく似合う要素だと思います。というのも、“愛”というものは本当に大きな“ミステリー”ではないか、と思うからです。『どうして私は、あの男性/女性に惹かれるのだろうか?』――それは言葉では言い表せないほどの大きな謎だと思うんです。ですからミステリーにロマンスを融合させるというのは、とても理にかなっていると思います」と答えた。

「愛を成就するために厳しい条件や厚い壁があるほどドラマチックになる」

続いて会場から質問を募ると、「韓国語と中国語のやりとりがもどかしく、セクシーに感じました。言葉は通じないけれど何かで通じ合う、という様子がすごく良かったのですが、そのあたりの作用は何か考えて作られたのでしょうか?」という質問が。

この質問に対し監督は、「まず、言葉が通じない人同士の愛というものは、それが効果的な“装置”になるのではないかと思いました。愛を成就するために厳しい条件や厚い壁があればあるほど、よりドラマチックになると思いませんか? そういう意味で、私は言葉の壁というものを活用せずにはいられませんでした。映画を作るにあたって通訳を必要とする場面は、できるだけ避けようとします。それは、どうしても描写に時間がかかってしまうので、何を言おうとしているのか分かるまでに時間がかかると、観客も非常にもどかしい気持ちになってしまうため、そういう場面を避けるか字幕で処理をします。ですが私はむしろ、それを効果的に利用しようと思いました」と回答。

その狙いとして、「簡単に言えば、主人公へジュンと観客の皆さんの両方を、もどかしくさせようと思ったわけです。ヒロインのソレが何かを熱弁しているけれど、一体なんと言っているのだろう? と、皆さんもとても気になったと思います。たった今も、私がこうやって韓国語で話していると、彼は何を言っているのか? と知りたい気持ちになると思います。ですから私も、できるだけ短く話して通訳さんに任せたいと思います」と続け、会場を笑わせた。

パク・チャヌク監督

パク・チャヌク作品の音楽を担うチョ・ヨンウクとは

さらに会場からは、『JSA』からパク監督作品の音楽を手掛けてきた音楽監督チョ・ヨンウク氏について「いつも監督から具体的に楽曲をオーダーするのか、もしくは一任するのか?」と質問が。ヨンウク氏が映画の仕事をする以前から友人関係だったという監督は、「ヨンウク氏は音楽を手掛けた作品が大ヒットしたので映画界で大きな仕事をするようになり、彼がよく知る映画会社に私を紹介してくれたことで、『JSA』という作品に巡り合うことができたんです」と意外な関係を吐露。

さらに「そして彼は、私の“隣人”でもあります。実際に仕事でお世話になっていますし、文字通りすぐ横に住んでいる事情もあるので、他の音楽監督に作品を任せたくても、それが叶わない関係性というのが痛いところです。今回、彼は韓国の様々な映画賞で音楽賞を受賞して有頂天になっているのですが、私は言いました。『いい気になるなよ』と(笑)」と、親しい関係性がうかがえるジョークを交えて再び会場を笑わせた。

この後も一つ一つの質問に対し、じっくり時間をかけて真摯に答えつつ、かならず“ひと笑い”挟んでくるチャーミングさも見せたパク監督。最後には「すでにこの映画を観た皆さんの多くが『この映画は2回以上観ると、より面白い』とおっしゃってくれています。たとえば1回目は男性主人公・へジュンの観点から、2回目は女性主人公・ソレの観点から観てみると、また別の楽しみ方があると言ってくれているのです。皆さんにも同じように感じていただけるかは分かりませんが、“そういった口コミが広がっている”ということをお伝えし、ご挨拶に代えさせていただきます(笑)」と締めくくり、発見とユーモアにあふれたイベントは終了した。

『別れる決心』は2023年2月17日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

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『別れる決心』

男が山頂から転落死した事件を追う刑事ヘジュン(パク・ヘイル)と、被害者の妻ソレ(タン・ウェイ)は捜査中に出会った。
取り調べが進む中で、お互いの視線は交差し、それぞれの胸に言葉にならない感情が湧き上がってくる。いつしか刑事ヘジュンはソレに惹かれ、彼女もまたへジュンに特別な想いを抱き始める。
やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに思えた。しかし、それは相手への想いと疑惑が渦巻く“愛の迷路”のはじまりだった……。

監督:パク・チャヌク
脚本:チョン・ソギョン、パク・チャヌク
出演:パク・ヘイル、タン・ウェイ、イ・ジョンヒョン、コ・ギョンピョ

制作年: 2022