『地獄の黙示録』撮影秘話7選! 当時の撮影現場は「まるで本当に戦時中のようだった」!?

『地獄の黙示録』撮影秘話7選! 当時の撮影現場は「まるで本当に戦時中のようだった」!?
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『地獄の黙示録 ファイナル・カット』が本日2022年9月20日(火)13:00よりNHK BSプレミアムで放送される。巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督が手がけた本作の撮影秘話7選をご紹介する。「まるで本当に戦時中のようだった」とキャストが語るほど、ぶっ飛んだ撮影現場で超大作が誕生したことが明らかになっているぞ!!

目次

1.マーティン・シーンは撮影中に心臓発作を起こしていた!!
2.フィリピンでのサーフィン文化を作り出した
3.ローレンス・フィッシュバーンが年齢を偽ってオーディションに合格!!
4.ハーヴェイ・カイテルが主役をつとめる予定だった
5.撮影現場では酒とドラッグが蔓延していた
6.コッポラ監督が3回も自殺を宣言!?
7.ジョージ・ルーカスがもともと監督をつとめるはずだった

フランシス・フォード・コッポラ監督による、ベトナム戦争の闇を壮大なスケールで描いた戦争大作『地獄の黙示録』(1979年)。劇場公開から40年の時を経て、高画質の映像と迫力のサウンドでよみがえったデジタル修正版の本作は、劇場公開版より30分長く、全てを盛り込んだ2001年の特別完全版より20分短いバージョンに再編集された。

本作の舞台は、ベトナム戦争が激化する1960年代末。米陸軍ウィラード大尉(マーティン・シーン)は、軍規に背きカンボジア奥地のジャングルで自らの王国を築いたカーツ大佐(マーロン・ブランド)の暗殺を命じられた。4人の部下と、哨戒艇でヌン川を遡っていくウィラード。やがて一行は戦争の狂気を目の当たりにする——。

『地獄の黙示録』知られざる撮影秘話7選!

【1/7】マーティン・シーンは撮影中に心臓発作を起こしていた!!

マーティン・シーンは撮影中に心臓発作を起こした。深刻な健康不安があったにもかかわらず、シーンは映画に投資してくれている製作会社が手を引くことを恐れて、ほとんどの人にその事実を隠していた。そのため、弟のジョー・エステベスが代役をつとめていたという。どのシーンでマーティンの代わりにジョーが演じているのかを見分けることは事実上不可能であり、コッポラ監督も同様に「わからない」と話している。

【2/7】フィリピンでのサーフィン文化を作り出した

本作が公開される前のフィリピンでは、サーフィンはほとんど知られていないアクティビティだった。しかし、地元住民は、撮影スタッフがサーフィンを楽しむ姿を目撃。撮影終了後、サーフボードが残され、何人かのフィリピン人がサーフィンを習うことになった。そして、その人たちが他の人たちに広めたおかげで、それまで存在しなかったサーフィンのコミュニティが作り出されたという。その後、海岸沿いでサーフィンに関するビジネスを行う人も現れ、フィリピンの経済に大きく貢献した。

【3/7】ローレンス・フィッシュバーンが年齢を偽ってオーディションに合格!!

タイロン・“クリーン”・ミラーを演じたローレンス・フィッシュバーンにとって、『地獄の黙示録』は3本目の映画出演であった。そしてフィッシュバーンの場合、キャスティングされた時点で14歳だったため、世間からさらに注目を集めることになった。しかし、彼は本作のオーディションで年齢を偽っていたという。本人も認めているように、誰もが嘘だとわかっていたはずだが、結果的にうまくいった。もし本作に出演していなかったら、フィッシュバーンの俳優としてのキャリアは大きく変わっていただろう。

【4/7】 ハーヴェイ・カイテルが主役をつとめる予定だった

コッポラは脚本のジョン・ミリアスに監督を依頼したが、最終的に自分で引き受けることにし、フィリピンでのロケを決定した。予算は1,200万ドル、撮影期間は6週間を予定していたが、コッポラは当初から、キャスティングに苦労するなど、早くもトラブルの兆しが見えていた。コッポラはカーツ役の第一候補であったオーソン・ウェルズを断り、第二候補のマーロン・ブランドも決心がつかないでいた。アル・パチーノジャック・ニコルソンロバート・レッドフォードが候補に挙がったが、最終的にブランドが出演を承諾した。主役のウィラード大佐は、パチーノ、スティーヴ・マックィーンに断られ、ハーヴェイ・カイテルに決まった。しかし、撮影の2週間後、カイテルの演技がこのキャラクターには「激しすぎる」と判断され、マーティン・シーンに代わった。しかし残念なことに、シーンにとって最悪の撮影環境が待ち受けていた……。

【5/7】 撮影現場では酒とドラッグが蔓延していた

マーティン・シーンはその当時、飲酒問題を抱えたまま撮影に臨んでおり、コッポラ監督はその状況を撮影に生かしていたという。しかし実際はシーンだけではなく、コッポラ監督をはじめ多くのキャストやスタッフが、撮影中に酒やドラッグに溺れていたという。サム・ボトムズはLSDとマリファナを吸いまくり、デニス・ホッパーは大量の飲酒やコカインに手を染めていた。カメラが回っていないところでは、夜遅くまでパーティーが続き、撮影が予定より長引くことになるトラブルが発生していたという。

【6/7】コッポラ監督が3回も自殺を宣言!?

本作の制作費が膨れ上がるにつれ、コッポラ監督は撮影を続けるために思い切った手段を取らざるを得なくなった。当初の予算は、撮影開始から3カ月も経たないうちに使い切り、撮影は予定より数週間遅れてしまっていた。そこでコッポラ監督は、自宅とワイナリーを銀行に譲渡し、3000万ドルという巨額の私財を投じて事態を収拾した。シーンが撮影中に心臓発作を起こした後、コッポラ監督は自分を責め、てんかんの発作を起こし神経衰弱になった。

そして、コッポラ監督は3度にわたって自殺を宣言するほど、この作品は重くのしかかることとなった。のちにコッポラ監督は、自身とキャスト、スタッフ全員を代表してこの経験を「私たちはジャングルにいて、あまりにも多くの人がいて、あまりにも多くのお金と機材が必要としていたので、少しずつ気が狂っていったんだ」と振り返っている。ホッパーも同様に「そこにいた者たちに聞いてくれ、みんな、戦争で戦っていたような気がしたんだよ」と語っている。

【7/7】ジョージ・ルーカスがもともと監督をつとめるはずだった

コッポラは1969年、当時駆け出しの映画監督だったジョージ・ルーカスとともに、製作スタジオ「アメリカン・ゾエトロープ」を設立した。ハリウッドの既成概念にとらわれず、他ではできないような映画を作ろうと考えた彼らは、『地獄の黙示録』をそのスタート地点とした。

コッポラはルーカスに監督を任せるつもりだったが、戦争が世間で物議を醸すようになり、資金繰りがつかなくなった。コッポラはパラマウント映画から仕事を受け、彼の最も成功した作品の1つである『ゴッドファーザー』の監督を引き受けた。『ゴッドファーザー』はアカデミー賞を受賞し、その続編作と『カンバセーション…盗聴…』(1974年)はアカデミー作品賞と脚本賞でノミネートされた。
アメリカン・ゾエトロープを支え、1976年に『地獄の黙示録』はやっと製作の準備が整ったが、その頃にはルーカスは『スター・ウォーズ』という(当時は)小さなプロジェクトに夢中になっていた。コッポラは今日に至るまで、同作に対して複雑な思いを抱き、「ジョージ・ルーカスは本当に実験的でクレイジーな男で、『スター・ウォーズ』という大作に没頭してしまい、そこから抜け出せなかったんだ」と語っている。

『地獄の黙示録 ファイナル・カット』は、本日2022年9月20日(火)13:00よりNHK BSプレミアムで放送!! ぜひお見逃しなく!!

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『地獄の黙示録 ファイナル・カット』

1960年代末、ベトナム戦争が激化する中、アメリカ陸軍のウィラード大尉は、軍上層部から特殊任務を命じられる。それは、カンボジア奥地のジャングルで、軍規を無視して自らの王国を築いているカーツ大佐を暗殺せよという指令だった。ウィラードは4人の部下と共に、哨戒艇でヌン川をさかのぼる。

監督:フランシス・フォード・コッポラ
出演:マーロン・ブランド マーティン・シーン デニス・ホッパー ロバート・デュヴァル フレデリック・フォレスト アルバート・ホール サム・ボトムズ ラリー・フィッシュバーン G・D・スプラドリン ハリソン・フォード スコット・グレン コリーン・キャンプ リンダ・カーペンター シンシア・ウッド トム・メイソン

制作年: 2019