映画で学ぶ侵略・征服戦争の歴史と果てなき連鎖~『ラスト・オブ・モヒカン』&『ブレイブハート』~
強国による支配と暴力の不条理な論理
半世紀以上におよぶ占領がもたらしたパレスチナの惨状にとどまらず、イランからレバノン周辺にも戦火が拡大し緊迫の度を増す中東情勢。アメリカやイスラエルは空虚な大義名分を掲げつつ、他国の主権や一般市民の平穏な日常を破壊しながら自らの利益を貪っている。
武力によって他者を支配しようとする“侵略と征服”の論理と、最低限の共感すら失った現代の不条理。そして、そうした抑圧と流血の構図は、人類がはるか過去から絶え間なく繰り返してきた歴史でもある。
この普遍的な悲劇の構造を歴史の連続性の中で象徴的に描き出した映画として、CS放送タイミングに合わせ『ラスト・オブ・モヒカン』(1992年)と『ブレイブハート』(1995年)に焦点を当てたい。
『ラスト・オブ・モヒカン』© 1992 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
『ブレイブハート』© 1995 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
『ラスト・オブ・モヒカン』と『ブレイブハート』が描いた征服の歴史
18世紀の北米大陸を舞台にした『ラスト・オブ・モヒカン』は、英仏という大国の覇権争いに翻弄され、故郷を追われて滅びゆく先住民モヒカン族の姿を通して植民地主義の残酷さを浮き彫りにした。
『ラスト・オブ・モヒカン』© 1992 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
一方、13世紀末のスコットランドを描いた『ブレイブハート』は、イングランド王国の暴虐な圧政に対し、主権と人間の尊厳を取り戻すために民衆が結束して立ち上がった壮絶な抵抗の歴史を活写する。
『ブレイブハート』© 1995 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
これら作中の出来事はスクリーンの中だけの昔話ではない。地政学的な野心のために生活を破壊される人々の姿は、中東をはじめ世界中で起きている抑圧や侵略と生々しく重なり合う。両作品が突きつけるのは、征服戦争がいかに生命や文化を無慈悲に蹂躙してきたかという歴史の事実だ。
『ラスト・オブ・モヒカン』© 1992 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
しかし同時に、どれほど圧倒的な暴力に晒されようとも、故郷や自由を守り抜こうとする意志までは決して奪えないという事実を、現代の私たちへ強く訴えかけてもいる。過去から目を背けないことも、私たちにできる抵抗の一つなのだ。
『ブレイブハート』© 1995 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
『ラスト・オブ・モヒカン』(1992年)
1757年、独立前夜のアメリカ東部。植民地戦争が激化する中、英軍大佐の娘・コーラとアリスの姉妹がヒューロン族に襲われ、モヒカン族の長・チンガチェックと実子のウンカス、そして彼に育てられた白人青年ホークアイに助けられる。やがて、コーラとホークアイは愛し合うようになるが……。
マイケル・マン監督が古典的小説「モヒカン族の最後」を映画化。独立前夜のアメリカで、モヒカン族に育てられた白人青年と英軍大佐令嬢の愛を描く。第65回アカデミー賞で音響賞を受賞。出演:ダニエル・デイ=ルイス、マデリーン・ストー、ジョディ・メイほか。
『ブレイブハート』(1995年)
13世紀末、残虐な王・エドワード1世率いるイングランドの侵略で、家族を皆殺しにされたウィリアム。成長して久々に故郷に戻るが、愛する妻もイングランド兵に惨殺されてしまう。復讐を誓う彼は、祖国の解放を願うスコットランドの民衆と共に、自由を勝ち取るために立ちあがる。
スコットランド独立のために戦った英雄ウィリアム・ウォレスを描く歴史ドラマ。メル・ギブソンが監督・製作・主演を務め、アカデミー賞で10部門にノミネート、5部門を受賞した。