「世界で一番ちっちゃなサギ師」に笑顔&涙!青春映画の巨匠が最後に手がけた感動作『カーリー・スー』
ジョン・ヒューズ最後の監督作『カーリー・スー』
ジョン・ヒューズといえば、『すてきな片想い』(1984年)や『ブレックファスト・クラブ』(1985年)、『フェリスはある朝突然に』(1986年)といった青春ロマンス~コメディ映画を手掛けた巨匠だ。『ホーム・アローン』シリーズ(1990年~)の脚本家としても知られている。
そんなヒューズ監督の1991年作『カーリー・スー』は、9歳の少女詐欺師とその保護者が、偶然出会った女性弁護士と絆を深めていく様子を描いたハートウォーミング・コメディ。“9歳の少女詐欺師”という強烈設定にぎょっとするが、物語としては王道にもほどがあるド真ん中の感動ものだ。なお「世界で一番ちっちゃなサギ師」とは本作のVHS/DVDのパッケージに添えられたキャッチコピーである。
『カーリー・スー』© Warner Bros Entertainment Inc. All rights reserved.
ホームレスの少女カーリー・スーと保護者のビル・ダンサー。当たり屋で一儲けしようと企む2人のカモにされたエリート女性弁護士グレイ・アリソンは、まんまと夕食をご馳走するハメに。だがその数日後、本当にグレイがビルを車ではねてしまう。それをきっかけに奇妙な3人の同居生活が始まり……。
『カーリー・スー』© Warner Bros Entertainment Inc. All rights reserved.
カーリーのおしゃまな魅力に笑顔! 凸凹な絆に涙
カーリー(アリサン・ポーター)とビル(ジェームズ・ベルーシ)は詐欺のパートナーで血縁関係はないものの、まだ幼いカーリーはビルの存在を拠り所にしている。しかし、弁護士グレイ(ケリー・リンチ)を当たり屋詐欺のターゲットにしたことから2人の状況は一変し、グレイの同情は本物の絆へと変わっていく。
『カーリー・スー』© Warner Bros Entertainment Inc. All rights reserved.
大都会の底辺に生きる2人と、リッチな白人の象徴である弁護士グレイ。現実では絶対に交わらない両者が絆を育んでいく展開はご都合全開だが、いま観ると思いのほか癒し効果あり。清廉潔白な弁護士が詐欺コンビから狡さを学んでいく様子や、階級ギャップによるドタバタぶり、ベタだが噴き出してしまうギャグも純粋に楽しい。
とにかくカーリーのおしゃまっぷりが可愛らしく、アニメのように表情豊かな演技が目を奪う。アリサン・ポーターはのちにアルコール依存症に苦しんだ時期もあったようだが克服し、2016年にはオーディション番組「ザ・ヴォイス」で見事優勝を果たした。
お話自体は容易に予想できてしまうし、グレイの人物像も過剰にステレオタイプではある。それでもフィジカルにポカスカしたギャグ(ベルーシが一手に引き受ける)は小気味よく、たびたびヒューズ作品らしい構図が出てきてニヤリとさせられる。彼の最後の監督作であることも観る理由としては十分だろう。
ちなみにヒューズの息子2人は現在、音楽レーベル運営やライターとして活躍。80~90年代アメリカのポップカルチャーを彩った偉大な父の意志を受け継いで(?)いる。
『カーリー・スー』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2025年5~6月放送