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古典テルグ語映画は「声」が命? NTR Jr.主演のラージャマウリ監督作『ヤマドンガ』から“パディヤム”を学ぶ

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ライター:#安宅直子
古典テルグ語映画は「声」が命? NTR Jr.主演のラージャマウリ監督作『ヤマドンガ』から“パディヤム”を学ぶ
『ヤマドンガ』
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一周回って斬新なレトロ

そしてNTR Jr.の見せ場のひとつである、閻魔大王への挑戦(1時間27分あたり)。閻魔が「ケチで身勝手な、たかが人間の分際で」と口走ったことへのラジャの反論「ヤマ! 今何て言った?」から「どうだ?」までの2分にわたる演説では、その活舌から、アーティキュレーション、表情の作り方まで、NTR Jr.の演技者としての卓越が華麗に披露されます。これが舞台劇だったなら、芝居はここで中断して拍手喝采タイムとなったでしょう。

監督がこうしたオーラルな演技をハイライトと考えていたのは、サントラCDとは別に、グッとくる場面のセリフだけを収録した「ダイアログCD」が発売されたことからも明らかです。このCDは現在はもう入手できませんが、YouTubeに公式音源としてアップロードされています。

実はこのようなダイアログ音源は、ホームビデオが普及する以前の時代のインドではカセットテープで盛んにリリースされていました。役者のセリフを繰り返し聞いて味わうという文化があったのです。そうした過去の遺物を、本作の作曲家M.M.キーラヴァーニの個人レーベル<Vel Records>からわざわざリリースすること自体が、斬新なプロモーションで知られるラージャマウリ監督の狙い澄ました洒落だったのです。

『ヤマドンガ』は、現代的でスピーディーなアクションやダンスと共に、過ぎ去った大いなる時代へのノスタルジーを、セピア色ならぬ金ピカ極彩色で描いた楽しい地獄絵図なのです。

『ヤマドンガ』

文:安宅直子

『ヤマドンガ』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「ハマる!インド映画」で2023年6~7月放送

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『ヤマドンガ』

泥棒のラジャは任務の途中、悪漢に追われる女性マヒを助ける。彼女は12年前にラジャが命を救った少女で、幼い頃に両親を亡くし、財産を狙う親族から虐げられていた。一方、ひょんなことから閻魔大王を怒らせてしまったラジャは、地獄に呼び寄せられてしまう。

監督:S.S.ラージャマウリ
出演:NTR Jr.
   モーハン・バーブ
   プリヤーマニ

制作年: 2007