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「いまだに自分の感情が説明できない」横浜流星と黒木華が明かす『ヴィレッジ』に反映された迷いと恐れ、そして共感

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ライター:#SYO
「いまだに自分の感情が説明できない」横浜流星と黒木華が明かす『ヴィレッジ』に反映された迷いと恐れ、そして共感
横浜流星 黒木華
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朝5時まで撮影した渾身のアクションシーン

―おふたりの共演シーンですと、一ノ瀬ワタルさん演じる透との格闘シーンも凄まじい迫力でした。

黒木:あのシーンは凄かったですよね。

『ヴィレッジ』©2023「ヴィレッジ」製作委員会

―横浜さんと一ノ瀬さんが戦う後ろで、黒木さんが相当長い時間泣き続けていたのも圧倒されました。

横浜:本当に。あのシーンの撮影は朝5時くらいまでかかりました。

黒木:陽が出るからもう撮れないというギリギリまでやりました。あのシーンは本当に怖かったです。おふたりともアクションが得意だし私もそのことはわかっているのですが、吹っ飛ばされた優を見ていると「やめて、怪我しないで」という気持ちになって涙が止まらなかったです。暴力というものが怖くて、早く止めてほしくて、優も透もどっちも哀しくて……。でも男性って、本気でやるのが好きじゃないですか(笑)。

横浜:そうですね(笑)。

黒木:だからこそいいシーンになりましたよね。

―こちらのシーンもそうですが、『ヴィレッジ』のキーワードの一つに、実は“におい”があるんじゃないかと思いました。ゴミ、風、火、雨など観ている僕たちには直接的にはにおわないけど、演技に作用した部分は大きかったのではないでしょうか。

横浜:すごく味方になってくれました。もともと雨の予定じゃなかったけど、雨が降っちゃったシーンもありましたが、それでより良くなりましたし。台本で予想していたものより、もっと深いところまで行けた感覚があります。

横浜流星

―茅葺(かやぶき)の部屋のにおい等、空間から吸い上げるものもあったでしょうね。

黒木:夏のにおいがしました。それってきっと、そこに住んでいる人が日々感じているものだと思うんです。私は関西出身なので、地元に帰ると地元のにおいを感じますし、そういったものが演技に無意識的に作用した部分はあったと思っていて。撮影監督の川上智之さんが「ゴミ処理場のにおいが取れなくて困った」とおっしゃっていましたが、「そういった環境で生活している人々」という説得力は画面に映り込んでいると思います。

先ほどおっしゃっていたように直接的にはにおわないけれど、『ヴィレッジ』はそれでも想像して感じ取ることができる、すごく素敵な映画です。

『ヴィレッジ』©2023「ヴィレッジ」製作委員会

俳優としての“転落する恐怖”が注入された脚本

―今回の特徴でいうと、横浜さんがロケハンに同行されたり脚本がブラッシュアップされていく工程を見てきた、ということもあるかと思います。

横浜:ゴミ処理場が爆発したり、優が原始人というバージョンもありました(笑)。

―「ゴミ処理場の爆発」は、故・河村光庸プロデューサーの当初のアイデアでしたね。優のキャラクターも変遷していったかと思いますが、美咲も同様だったのでしょうか。

横浜:そうですね。美咲が村への復讐心に燃えて爆発を仕掛けていたバージョンもありました(笑)。

黒木:そうだったんだ!(笑)

横浜:あとは、完成した本編にも少しその要素はありますが、すべてが優の夢だった、というパターンもありました。本当に色々なパターンを藤井さんが悩んで悩んで作っていきました。

黒木:私は「重い話だな」と思って読んでいました(笑)。でも、人生の中で生きづらい瞬間や同調しなければならないときってなにかしらあるものですし、そこに光を当てた作品は興味深いですよね。「能」が組み込まれた物語も新鮮でしたし、藤井監督が映像化したときにどんな作品になるんだろう? と感じました。

黒木華

―優には「邯鄲(かんたん)」、美咲には「羽衣(はごろも)」という能の演目が呼応するものとしてあてがわれていますが、さらに優には横浜さんの“分身”的な要素も盛り込まれていると伺いました。

横浜:脚本執筆前に、藤井さんと本作について話す機会がありましたが、そのときに役者をやっていくうえでの迷いや怖れを伝えました。完成した台本には、それが反映されています。優は村中から蔑まれて、感情を捨ててゾンビのように過ごしてきて美咲と出会い、一度は村のみんなにもてはやされて祭り上げられるものの、ある事件によって運命の波にのまれていきます。

僕たち俳優も何か一つ失敗すれば転落していきますし、実際にそういう事例も見てきました。失敗が許されない立場ゆえの恐怖を常に感じていて、もてはやし祭り上げる人間も怖い。これは芸能界に限定した話ではなく、組織に属している人たちはみな共感できるものかと思います。

黒木:私も学校や組織に馴染めないタイプの人間だったので、生きづらさに共感しました。美咲でいうと、都会で頑張っていたんだけど頑張り切れず地元に戻ってきて、でも村にも落ち着ける場所がない。きっと美咲も優も、同じく欠けているものがあったから惹かれあったのだと思います。

横浜流星 黒木華

取材・文:SYO

撮影:落合由佳

『ヴィレッジ』は2023年4月21日(金)より全国公開

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『ヴィレッジ』

夜霧が幻想的な、とある日本の集落・霞門村。
神秘的な「薪能」の儀式が行われている近くの山には、
巨大なゴミの最終処分場がそびえ立つ。
幼い頃より霞門村に住む片山優は、美しい村にとって異彩を放つこの施設で働いているが、母親が抱えた借金の支払いに追われ希望のない日々を送っている。
かつて父親がこの村で起こした事件の汚名を背負い、その罪を肩代わりするようにして生きてきた優には、人生の選択肢などなかった。
そんなある日、幼馴染の美咲が東京から戻ったことをきっかけに
物語は大きく動き出す――。

監督・脚本:藤井道人

出演:横浜流星
   黒木華 一ノ瀬ワタル 奥平大兼 作間龍斗
   淵上泰史 戸田昌宏 矢島健一 / 杉本哲太 西田尚美 木野花
   中村獅童 古田新太

制作年: 2023