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韓国麻薬組織の驚愕実話! Netflix『ナルコの神』 ファン・ジョンミンが南米の麻薬王を演じる全6話ドラマ

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ライター:#椎名基樹
韓国麻薬組織の驚愕実話! Netflix『ナルコの神』 ファン・ジョンミンが南米の麻薬王を演じる全6話ドラマ
Netflixシリーズ『ナルコの神』独占配信中

まるで漫画のような驚きの実話

悪い癖だとは思うけれど、やたらと重箱の隅をつつきながら鑑賞をしてしまう。特にNetflix等で、連続ドラマが一気に公開されるスタイルが定着してから、私自身の中でその傾向が強まっている。

この『ナルコの神』も、第1話で作品に引き込まれていながら、第2話になって「韓国人が南米の国で麻薬王として君臨するなんて、こんな荒唐無稽なストーリーがあるだろうか?」「これは漫画だ」。そんなふうに思えてきて、鑑賞を続ける緊張の糸が一瞬切れそうになった。

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しかし、すぐに作品のクオリティが私の中の悪魔のささやきを一掃してくれた。特に、第4話冒頭のノーカット、ワンカメラで撮影された2分あまりのジャングルの銃撃戦の素晴らしさに、猜疑心の強い私の中の私は、すっかり降参してしまった。結果、全6話を一晩で一気に鑑賞した。

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それにしても、この「銃撃戦」は迫力満点だ。これをノーカットで撮ろうというアイディア自体がすばらしい。そして、それを見事に完遂している。でもこのシーンは、本当はノーカットワンカメラで撮影されているわけではないのかもしれない。

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銃撃シーンで、主役のハ・ジョンウ演ずるカン・イングがトラックに乗り込んだ以後、数十秒のシーンはどうやって撮影されてるんだ? まるで超小型のカメラが被写体を追って、空中を自由自在に移動しているようである。

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鑑賞を終えて、作品のことを詳しく知りたくなり、はじめて検索して情報を集めた。そして驚いた。漫画のようだと感じたプロットは、実話に基づいたものだった。

実話ベースの驚きと大胆フィクションの妙

1994年に韓国で詐欺の容疑で捜査線上に上ったチョ・ボンヘン(劇中ではチョン・ヨファンとしてファン・ジョンミンが演じる)は、犯罪者引き渡し条約が締結されていないスリナム共和国へと逃亡。そこで南米最大の麻薬組織“カリ・カルテル”と手を組み、麻薬密売組織を構築する。

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2007年に韓国国家情報院が、チョ・ボンヘンの本格的な検挙に乗り出す。そしてスリナム現地で、チョ・ボンヘンから被害を受けた民間人事業家を説得し、潜入捜査に協力させる。2009年、韓国国家情報院とアメリカ麻薬取締局(DEA)、ブラジル警察の共助でチョ・ボンヘンは逮捕された。

その後の取り調べでチョ・ボンヘンは、デシ・ボーターセ(軍事クーデターによって政権を握っていた人物)とも親交があったと供述。2010年から2020年には同国の大統領も務めたボーターセだが、2002年に麻薬密売の容疑で逮捕歴があった。なお2019年に、80年代に敵対派閥の十数名を殺害したとして実刑判決を受けている。

南米の小国で麻薬王として君臨した韓国人。民間人の潜入捜査。麻薬王と裏で繋がる、悪徳大統領――。作品の主だった部分はすべて実話が元になっている。

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一方で、フィクションとして大胆に脚色された設定は、チョン・ヨファンが麻薬密売の隠れ蓑として、スリナムで神父の職を務めている点である。「ナルコ(=ドラッグ)の神」という作品タイトルは、そこに由来している。皮肉が効いたダブルミーニングのタイトルで、私は好きだ。

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徹底したエンターテインメント性

Netflixの、同じく南米コカイン密売組織を扱ったオリジナルシリーズ『ナルコス』(2016年~)など、実在の人物を描いた作品は、得てして作風が端正すぎて地味になりがちであるが、『ナルコの神』は、この神父の設定を見てもわかる通り、史実を正確に描くことよりも、エンターテインメント性が重視されている。このあたりは韓国作品の面目躍如と言っていいだろう。徹底したエンターテインメント性こそが韓国映像作品の最大の個性だと思う。

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また『ナルコの神』は、既視感のない非常に新鮮味がある作品だ。なにせ、南米の地で東洋人が権力を握り、現地の女をはべらせ、大統領と繋がって軍隊を動かす。はたまた現地の中国系マフィア(『DUNE/デューン 砂の惑星』[2020年]のチャン・チェンが演じる)と抗争する。韓国の秘密警察とアメリカのDEAが協力して、それを排除する。韓国人同士で話す時は韓国語、異国人同士が話す時は英語のセリフが話される。これだけのことでも非常に目新しい作品であると感じられるはずだ。

『パラサイト 半地下の家族』(2019年)の時も「今まで見たことがない種類の映画」だと感じたが、この「既視感のなさ」も、昨今の韓国映像エンタメ作品が持つ魅力的な個性の1つだと思う。

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「徹底したエンターテインメント性の重視」「既視感のない新鮮味」に加えて、この『ナルコの神』に、もう一つ韓国作品らしい個性を付与しているのが、男性ホルモンほとばしる俳優陣である。クセの強い男優たちの魅力も、韓国作品の大きな個性として既に世界中で認知されているのではないだろうか。同じくワールドワイドで活躍しているという男性K-POPアイドルの中性ぶりとの対比がすごい。

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文:椎名基樹

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『ナルコの神』

南米のとある国で、政府の極秘作戦に参加することになった民間人事業家。その目的は、その地で麻薬取引を行う韓国人麻薬王を検挙すること。実話を基にした物語。

演出:ユン・ジョンビン
脚本:ユン・ジョンビン クォン・ソンフィ

出演:ハ・ジョンウ ファン・ジョンミン
   パク・ヘス チョ・ウジン
   ユ・ヨンソク チャン・チェン

制作年: 2022