フィリピンのスラムを支配する非情なリアル! 苛烈な麻薬戦争と警察組織の腐敗を描く『アルファ 殺しの権利』

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ライター:BANGER!!! 編集部
フィリピンのスラムを支配する非情なリアル! 苛烈な麻薬戦争と警察組織の腐敗を描く『アルファ 殺しの権利』
『アルファ 殺しの権利』

フィリピン映画界が誇る遅咲きの新鋭監督が再び麻薬戦争を描く

いま何度目かの黄金期を迎えているフィリピン映画界の中でも、特に注目を集めているブリランテ・メンドーサ監督の最新作『アルファ 殺しの権利』(2018年)が、シネマート新宿・シネマート心斎橋にて開催中の劇場発信型映画祭「のむらコレクション」(通称:のむコレ)にて2019年12月2日(月)より公開中だ。

『アルファ 殺しの権利』

マニラで雑貨店を営む傍ら麻薬を密売する主婦と警察の腐敗をドキュメンタリータッチで描いた『ローサは密告された』(2016年)でジャクリン・ホセがカンヌ国際映画祭女優賞をもたらしたことも記憶に新しいメンドーサ監督。Netflixオリジナルドラマ『AMO 終わりなき麻薬戦争』(2017年)でも、ごく普通の男子高生がズブズブと麻薬密売の沼にハマっていく様子を淡々と描いている。

『ローサ~』では主婦、『AMO~』ではミドルティーンの少年、そして『アルファ 殺しの権利』は『AMO~』製作時にリサーチしたネタの数々を、1人の警官の視点に変えて映画化したものだという。ドキュメンタリータッチの映像は一貫していて、有名俳優が出演するハリウッド作品と違って一般人~本職の人にしか見えないキャストがとことんリアル。野次馬が取り囲む中、殺された家族の前で号泣する妻や子どもたちの姿は、まるでフィリピンの現状を目の前に突きつけられているかのようだ。

『アルファ 殺しの権利』

メンドーサ作品の特徴でもある手持ちカメラの躍動感は『アルファ』でも健在。映像がブレようが画質が荒れようが、それがリアリティにつながるのだからお構いなし。本作が先述の2作と大きく異なるのは、取締部隊の一員である警官モイセス(『AMO~』で巡査部長を演じていたアレン・ディソン)と囮捜査に協力する情報屋エライジャを軸に、取り締まる側の視点で物語が進んでいく点だ。激しい銃撃戦などアクション要素も多めだが、SWATの潜入シーンなどはスリリングではあるものの非常に淡々と描かれていて、とことんリアルである。

『アルファ 殺しの権利』

過激な麻薬撲滅作戦の裏で警察組織に蔓延る腐敗に鋭く切り込む

ご存知の通り、フィリピンでは2016年にロドリゴ・ドゥテルテ大統領が誕生してからというもの、これまでほぼ黙認されてきた麻薬の密売・使用に対する取締が過激化。警察だけでなく自警団までもが生死を問わない苛烈な検挙を行っていることが問題視されているが、『ローサ~』でも描かれたように、その取締が警察組織の腐敗など新たな犯罪の呼び水になっているという現状が、本作でも引き続き大きなテーマとなっている。

『アルファ 殺しの権利』

メンドーサ監督自身は、ドゥテルテ大統領の過激な麻薬対策に対するコメントは避けている模様。麻薬や貧困など庶民を苦しめる様々な問題を扱いながら、あくまで客観的な視点で描いているため、警察は撮影にも協力的だという。警察内部の腐敗も大統領が掲げる麻薬撲滅作戦の対象と考えれば納得だが、そのあたりのバランス感覚が今後問題になってくる可能性は大いにあるだろう。

『アルファ 殺しの権利』

『アルファ 殺しの権利』はシネマート新宿・シネマート心斎橋にて開催中の劇場発信型映画祭「のむらコレクション」(通称:のむコレ)にて2019年12月2日(月)より公開中

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『アルファ 殺しの権利』

大統領の麻薬殲滅政令の元、警察はスパイを送り込み、麻薬組織の一網打尽作戦を決行した。しかし、スパイをコントロールする警官もまた、組織から華麗に奪い取った麻薬を裏で捌いていた。やがて善と悪、表と裏が入り乱れる止めどない戦いが展開していく。

制作年: 2018
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