Netflix『呪詛』実際の事件を解説! 恐怖の実話に基づく台湾最凶ホラー!! 早くも続編決定

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ライター:稲垣貴俊
Netflix『呪詛』実際の事件を解説! 恐怖の実話に基づく台湾最凶ホラー!! 早くも続編決定
Netflix『呪詛』独占配信中

実話に基づく台湾最凶ホラー、世界に拡散

「台湾史上最も怖い」と評されたホラー映画がいよいよ世界に披露された。現地では興行収入1億7,000万台湾ドル(約7億6,000万円)を記録、2022年最大のヒット作となった『呪詛』が2022年7月8日よりNetflixで配信開始となったのである。

本作の原題は『咒』。本国版予告編の公開直後から、映画ファンの間ではそのおぞましさに話題が集まり、日本公開が待たれていた一作だ。本編の配信がスタートするや、映画ファンのみならず一般層を巻き込み、「怖すぎる」との口コミが拡散。Netflixのランキング「今日の総合TOP10(日本)」では連日トップを獲得し、グローバルでも非英語作品の第4位に入った。

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主人公のシングルマザー、リー・ルオナン(ツァイ・ガンユエン)は、かつて「超常現象調査隊」を名乗り仲間たちと怪奇スポットを巡るYouTuberだった。しかし、6年前に“絶対に入ってはいけない地下道”を訪れたあと精神を病み、今では娘・ドゥオドゥオとも離れて暮らす身。ようやく回復し、ついにドゥオドゥオとの生活を始めるルオナンだったが、その日から奇妙な出来事が起こり、ドゥオドゥオの身にも異変が生じるようになる。原因が6年前の事件にあると確信したルオナンは、ビデオカメラに向かい「娘の呪いを解くために映像を撮っている」と語りかけ……。

本作は『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999年)『パラノーマル・アクティビティ』シリーズ(2007年ほか)などでおなじみのファウンド・フッテージ形式で、全編が登場人物によって撮影された映像の中で進行する。SNSで見知らぬ誰かの撮影した映像を観ることが日常のひとつとなった今、この映画をNetflixで観ることにはえも言われぬ臨場感と緊張があるものだ。

台湾発のホラー映画といえば、『返校 言葉が消えた日』(2019年)や『呪われの橋』(2020年)など、現地の歴史や事件、文化に基づく作品が有名。『呪詛』もその例外ではなく、監督・脚本のケヴィン・コーは、2005年に起きた実際の事件からこの物語を着想した。

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『呪詛』実際に起こった事件の全容

2005年2月、台湾・高尾市鼓山区に住む6人家族に異変が起こった。両親と20代の子どもたち4人からなる一家の末娘が、起きぬけに「三太子に取り憑かれた」と言いはじめたのだ。三太子とは道教の少年神で、夫婦は三太子を長年崇拝していた。末娘は「台北に住む長女が危ない、すぐに呼び戻さなければ」と訴えかけ、これを聞いた母親は一夜のうちに長女を自宅に呼び戻している。

ところが29歳の長女にも、その直後から怪異が襲いかかった。夜ごと性的暴行を受ける悪夢を見るため、昼間にしか眠れなくなってしまったのだ。3月、長女は一本の電話を受けた後から「私は観音菩薩である」と主張するようになった。家族は悪霊が憑いたのではないかと考え、長女を瞑想に連れていき、お祓いをしたが、いっこうに事態は好転しない。父親は風水を頼って自宅の三太子像を動かし、他の像を焼き払い、その灰を入れた水を家族全員に飲ませ、さらには家じゅうに塩や米粒をばら撒いたが、とうとう効果はなかった。

状況は悪化の一途をたどる。長女が正気を取り戻すどころか、家族全員がそれぞれに、自分は玉皇大帝(道教の最高神)だ、仙女・西王母だ、その娘の七仙女だ、臨済宗の僧・済公だと名乗り、悪霊を祓うためだと言って長女を攻撃しはじめたのである。やがて、その攻撃はお互いに向けられるようになった。6人は同時に起床するや、位牌や杖で互いを殴り合い、線香の火で身体を焼き合ったのである。断食を行う一方、腹が減り、喉が渇けば自分たちの糞尿を食べ、飲むようになった。

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家族が意味不明な言葉を叫び、家の外で冥銭(紙幣を模した副葬品)を焼き、笑い、泣き、互いに暴力をふるう様子は近所の住人たちにも目撃されている。のちに彼らは「あの家族は狂ったのだと思った」と証言しているが、実際に警察が通報を受け、事態が明るみに出たのは4月11日午後のこと。家族に異変が発生してから、実に1ヶ月以上が経過していた。

きっかけは、台北から連れ戻されたのち「私は観音菩薩である」と主張した長女の死だった。4月9日、長女が泡を吹いて冷たくなっているところを家族が発見。看護師の妹は蘇生を試みたが、一同は「これは悪霊が死んだのであり、本来の長女は肉体の外に出ているだけだ」と考えてしばらく遺体を放置している。2日後、長女の様子がおかしいと思った父親がパニック状態で近所の家を訪れ、長女は病院に搬送された。この時、ようやく警察への通報がなされている。

残された5人の家族は、その後もしばらくの間「死んだのは長女ではなく悪霊だ」と考えていたという。のちに母親が長女に取り憑かれ、自分の死について説明したことで――これまた異様な出来事なのだが――ようやく彼らは事態を理解するに至った。もっとも治療の結果、家族全員が「精神異常なし」との診断を受ける。5人は遺棄致死罪で起訴され、医学的には「集団的妄想性障害ではないか」という説も出たが、長女の死因が多臓器不全だったこと、外的要因によるものではないことから全員が無罪となった。

この事件はいまだ解明されていない謎が多く、すべての原因は三太子像を動かしたせいではないかとも、それ以前に父親が三太子像を寺院に頼んで処分しようとしたためではないかとも推察されている。なお無罪の確定後、近所の住人たちが長女の追悼と家族の悪霊祓いのために資金を集めたことで、家族はゆっくりと以前の生活に戻っていった。

ケヴィン・コー監督、悲願の一作

ケヴィン・コー監督は幼い頃、幽霊の話や怖い話を見聞きすることを大人たちに許してもらえなかったという。劇中でルオナンが口走る「知れば知るほど不幸になる……」という言葉は、かつて監督自身が大人から「怖いものには近づくな」という考え方のもとで言い聞かされたもの。「近づいてはならない、という考え方は感染症と同じ。呪いと病は似ている」とはコー監督の談だ。

『呪詛』は高尾市の事件をそのまま映画化したものではなく、実在の要素を随所に組み込んだオリジナル・ストーリーだ。登場する宗教や「大黒仏母」なる邪神、観る者の脳裏に焼きつく呪文や絵画などは、いずれも古代の伝説や、台湾および中国本土に実在する宗教団体と儀式などを参考に創り出されたもの。大黒仏母はヒンドゥー教のカーリー・マーや仏教の鬼子母神、不動明王などを思い出させるため、おそらく複数の宗教のイメージを掛け合わせて生み出されたのだろう。恐ろしい絵画は仏像専門の画家2名の手で描かれたという。

1983年生まれのコー監督は、学生時代に製作した短編ホラー映画『鬼印(原題)』(2004年)が大きな注目を浴び、卒業後に『絕命派對(原題)』(2009年)で長編デビュー。その後もSFラブストーリー『ハクション!』(2020年、Netflixにて配信中)をはじめ、いくつものジャンルを横断して映画製作に取り組むかたわら多数のCMやMVを手がけてきた。しかし本人の中には「まだ自分には代表作がない、自分自身を表す映画を作りたい」という思いがあり、それが『呪詛』の製作に結びついている。本作を実現させるべく、監督は中国本土のテレビ局から届いた巨額のオファーを断っているほどだ。

本作はもともと、2017年ごろにコー監督が企画していた、台湾の実在事件に基づく短編ホラー3部作『鬼島(原題)』が原型。ところが「3部作はヒットしにくい」という理由から2年連続で助成金を得られなかったため、監督は企画を抜本的に見直して本作を発案した。脚本を読んだ配給会社やプロデューサーは、当初「フェイク・ドキュメンタリーは売れないのでは」と危惧して設定の変更を提案したが、コー監督はこれを拒否。その背景には、フェイク・ドキュメンタリーならば工夫次第で予算を抑えられるという狙いもあったという(結果的に製作費は3,300万台湾ドルという低予算に収まった)。

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世界と勝負するホラー映画、監督の個人的な思い

コー監督が台湾で起こった事件にインスパイアされ、宗教や伝承などを参考にしながら『呪詛』を作ったのは、これこそが台湾でホラー映画を作ることの意味だと考えたからだった。「私たちはアメリカのヴァンパイア映画を必ずしも怖がれるわけではありません。けれども台湾人として台湾の恐怖は理解できる。これこそが私たちの武器であり、海外の映画と戦える強みだと思います」と監督は語っている。

本作の恐怖演出は多岐にわたり、心霊映像のような怖さもあれば、グロテスクな表現もあり、突然の大音量で観る者を驚かせるジャンプスケアも数ヶ所に仕掛けられた。しかし「スラッシャー映画は好きじゃない」とも言うように、コー監督が重視したのは“怖がらせること”それ自体ではない。『リング』(1998年)や『着信アリ』(2003年)、『呪怨』シリーズ(1999年ほか)などを例に挙げて、監督は日本製のホラー映画を「怖さの程度にかかわらず、とても現実的で深みがある」と賞賛。この映画を手がけるにあたっても大きな影響を受けたことを認めた。

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エンドクレジットの冒頭には「この作品を我が家の天使に捧げる(In Memory of Black Nose)」という一文が表示されるが、コー監督いわく、本作のテーマのひとつは「“さよなら”の言い方」。Black Noseとはコー監督が幼い頃から飼っていた愛犬の名前であり、本作の企画に取り掛かっていた約5年前、Black Noseは死の危機に瀕していたのである。それでも「ずっと一緒にいてほしい」という思いから、監督は延命治療のためにありとあらゆる手を尽くした。

実際のところ、死の数年前からBlack Noseは聴覚を失っており、片目は見えず、最後には自力で食事をすることもできなかった。それでも生かし続けようとする行為が正しいのか、それとも間違っているのか、コー監督は自問自答を続けながら生活をともにしていたという。当時、監督は自分がそばにいることを愛犬に伝えるため、抱きしめる時には尻尾の決まった位置を触るようにした。しかし、その手が自分であることを分かってもらえているのかどうかさえ、監督はだんだん不安になっていったと語る。

台湾の映画賞・金馬奨のイベントに監督が参加した日、Black Noseは突然この世を去った。さまざまな疑問に答えは出ておらず、今でも監督はきちんとお別れをできずにいるというが、のちに監督は「彼を抱いていたのが僕だということが仮に分からなかったにせよ、一緒にいたいと思ってくれただけで十分なのかもしれない」という思いに至ったことを明かしている。「彼に健やかでいてほしい、きちんとお別れをしたいという思いは、すべてこの映画に入っています」と監督は話した。

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ちなみに『呪詛』の物語は曖昧な部分を残したまま幕を閉じるため、その後がどうなったのか、果たして何が真実だったのかはすべて語られない。しかし映画の冒頭から示されるように、「現実世界の結果は観る者の意志によって形作ることができる」もの。コー監督いわく、すべての謎に答えはあるようだが、それでも結論は「観客それぞれに決めてほしい」ということだ。

本作の大ヒットを受けて、コー監督はすでに続編となる『咒2(仮題)』を準備中。今後も実在の事件を基にした映画を撮りつづけていきたい、とも語っている。

文:稲垣貴俊

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【参考】
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『呪詛』

かつてある宗教施設で禁忌を破り、呪いを受けたリー・ルオナン。そして6年後、あの時の呪いが今度は自分の娘に降りかかったと知り、必死で我が子を守ろうとするが……。

監督・脚本:ケヴィン・コー

出演:ツァイ・ガンユエン ホアン・シンティン
   ガオ・インシュアン ショーン・リン

制作年: 2022

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