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TikTok短編映画祭で日本作品がグランプリ!コンペではパク・チャヌク、クローネンバーグほか超期待の3作上映【カンヌ映画祭レポート】

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ライター:#齋藤敦子
TikTok短編映画祭で日本作品がグランプリ!コンペではパク・チャヌク、クローネンバーグほか超期待の3作上映【カンヌ映画祭レポート】
バズ・ラーマン監督『エルヴィス』のレッドカーペット

5月24日に75回目の誕生日を迎えたカンヌ。世界中から集まったスターたちがレッドカーペットを歩き、誕生日を祝った。2020年の開催中止、厳重なコロナ対策の下で開催された2021年を経て、今年はほとんどの規制がなくなり、通常の9割まで参加者が戻ってきたという。

一方でサステナブルな映画祭化が進み、いつもは登録のときに配られたカタログや映画祭の記念バッグは廃止、各作品のプレスブックや上映スケジュールもHPからダウンロードする形になった。不要になったプレスボックスや紙くず用の大きなコンテナーがパレから消え、代わりに紙やプラスチックを分別するゴミ箱が登場した。

サステナブルなゴミ箱

ティックトックがオフィシャル・パートナーに

今年からティックトックがオフィシャル・パートナーになり、ティックトック短編映画祭( #TikTokShortFilm )が企画された。カンヌの目的は、配信の動画で育った世代を、映画の側に引き寄せようということだろう。

ただしティックトック側の目的は違ったようで、ティックトック映画祭初代審査員長だったカンボジアのリティ・パンが、審査員が選んだ作品にティックトック側が口出ししたとして早々に降りてしまった。新世代が撮った30秒から3分の作品を、旧世代の監督がどう評価するのか興味があったのだが。ただし、パン監督は審査を降りたものの、受賞作は発表になっている。

さて、コンペティション部門では22日にアリ・アッバシ監督の『ホーリー・スパイダー(原題)』、23日にはパク・チャヌク監督の『別れる決断(仮)』とデヴィッド・クローネンバーグ監督の『クライム・オブ・フューチャー(仮)』の期待の3本が登場した。

17人の娼婦殺人事件を元にしたスリラー『ホーリー・スパイダー(原題)』

『ホーリー・スパイダー(原題)』は、イランの聖都マシャハドで実際に起こった、町を“浄化”する目的で、ごく普通の父親が17人の娼婦を絞殺した事件を元にしたスリラー。イラン社会の男女差別に遭いながら殺人鬼を追う女性ジャーナリストが、事件の裏に潜む真相に気づいていく。

設定はイランだが、イランでの撮影は認められず、全編ヨルダンで撮影。手持ちカメラで捉える連続殺人の描写がリアルでゾッとするが、犯人が逮捕されてからの展開にも二重の意味でゾッとさせられた。

容疑者は妻?『別れる決断(仮)』パク・チャヌク監督作

『別れる決断(仮)』は、崖から落ちた登山家の死因を捜索する刑事(パク・ヘイル)が、夫の中国人の妻(タン・ウェイ)に不審なものを感じ、容疑者として取り調べ始めるが、決定的な証拠のないまま起訴に至らず、数年後、彼女が再婚した夫が殺されるという事件が起き、再び刑事が捜査を開始するが…というフィルム・ノワール。

映像のスタイリスト、パク・チャヌクの本領発揮で、どのカットもきっちりデザインされていて、死者の目から見た光景など、凝りに凝った描写がちりばめられている。

タランティーノの失言?パルム・ドール逃した『オールド・ボーイ』

パク・チャヌクといえば忘れられないのが、2004年に『オールド・ボーイ』をコンペに出品した年のことだ。審査員長はクエンティン・タランティーノ。『オールド・ボーイ』はまさにタランティーノ・テイストの作品で、大いに気に入った彼は、『オールド・ボーイ』主催のパーティでパク・チャヌクに“お前にパルム・ドールをやる”と言ったという。真偽は不明だが、この噂は瞬く間に映画祭中に広がり、結果として授賞式でパルムを手にしたのはマイケル・ムーアの『華氏911』だった。私は今もタランティーノが余計な一言を漏らさなければ、韓国初のパルム・ドールを受賞したのはポン・ジュノではなく、パク・チャヌクだったかもしれないと思うことがある。

期待以上の変態度!クローネンバーグ監督作『クライム・オブ・フューチャー(原題)』

さて、9年ぶりの新作となる巨匠デヴィッド・クローネンバーグの『クライム・オブ・フューチャー(原題)』(70年の同名映画とは別物だそう)は、期待以上の変態度だった。主人公は体内で培養した臓器を切除する手術を公開する世界的に有名なアーティスト、サウル(ヴィゴ・モーテンセン)とパートナーのカプリス(レア・セドゥ)。

二人が手術の痛みにエクスタシーを感じるグロテスクでエロチックなシーンはまさにクローネンバーグの世界。“クローネンバーグ・ファンは熱狂するだろうが、そうでない人は5分で出ていくだろう”という評が出ていた。

文:齋藤敦子

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