稲垣吾郎インタビュー!「まだドキドキしていたい」等身大の思いを演じるミュージカル・コメディ『恋のすべて』

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ライター:石津文子
稲垣吾郎インタビュー!「まだドキドキしていたい」等身大の思いを演じるミュージカル・コメディ『恋のすべて』
稲垣吾郎

稲垣吾郎インタビュー!

2022年2月11日に開幕するミュージカル・コメディ『恋のすべて』に主演する稲垣吾郎。舞台となるのは、1930年代のアメリカ。稲垣は「娘を一晩だけ恋に落としてほしい」という依頼を受けた、人の良い探偵ニック・テイラーを演じる。黄金時代のハリウッド映画を思わせる、甘く華やかな世界を、稲垣はどう魅せてくれるのだろうか?

【チケット一般発売は1月22日(土)10時より】ミュージカル・コメディ 『恋のすべて』

「いつも自分へのご褒美みたいな感じで」

―作・演出の鈴木聡さん(劇団ラッパ屋主宰)とは、2003年の舞台『サンセット・アパート 謎の下宿人』以来、度々タッグを組んでおり、2012年からはミュージカル『恋と音楽』シリーズを続けてきました。

鈴木聡さんとまた一緒にやれることを、すごく嬉しく思っています。もちろん、まだまだこんな状況ではあるけれど、舞台ができるっていうのも本当に幸せだなと思いますし。2021年のお芝居(『サンソン』)は途中で中止になってしまったけれど、1公演も欠くことなく完走できればと思います。

何よりも鈴木(聡)さんとのお仕事は本当に“楽しい”しかなくって。お仕事とは思えないくらいの楽しさ。鈴木さんとのお芝居では、いつも2ヶ月間くらい夢の中にいるような気がするんです。非現実的で、何か甘くキラキラした夢の中にずっといるみたいで。作品のテイストもそうだと思うし、鈴木さんも、バンドのメンバーとかも、皆そんな空気を醸し出してくれる。本当にいつも自分へのご褒美みたいな感じで、この期間を過ごしています。

台本もすごく面白いし、探偵役と言ってもあんまり探偵らしいことはしないのですが、中年の男性が今まで人生いろいろと経験してきた中で、まだちょっとドキドキしていたいような思い。恋はもうしなくなったのかな、とか思いながらも、なんかまだちょっとドキドキしたり、ゆらゆらゆらゆら心が動いてしまったりとか。そういったものが今回は描かれているので……ちょっとコミカルにね。それが自分の心境とも上手く合っているのかな、と。等身大ですね。

稲垣吾郎

―吾郎さんには1920年代とか1930年代のアメリカが似合う、と鈴木さんはおっしゃっていますね。

鈴木さんがその時代がお好きなんですよ。スイングの時代っていうのかな。文学で言うと、(アーネスト・)ヘミングウェイや(F・スコット・)フィッツジェラルドの時代。すごくお好きで影響を受けていると思うんですけど、僕がその時代にそれほど大きく影響を受けたものはないんです。映画だったら、禁酒法時代のギャングの映画であったりとか、戦後の映画っていうのは興味があったんですが。

スイング・ジャズの時代というのはアメリカの1つの黄金期で、勢いがあった時代なんでしょうね。僕はこれから色々と鈴木さんに教えてもらって、知っていきたいです。ただ自分では、なぜそれが似合うのかは全然わからないんです。鈴木さんの中のイメージがあるんでしょうね。僕はヨーロッパ系が似合うと言われることが何度かあったんですが、アメリカってなんでなんだろう?

稲垣吾郎

「稲垣吾郎は実はおしゃべりなんです」

―スイングの時代ということで、楽曲もスイング・ジャズ的なものになりそうですか?

そうですね。スイング・ジャズ的なものもあります。北村岳子さんが歌うスイングは、すごく素敵ですよ。もう、ほんとにベニー・グッドマンの世界というか。そこに僕たち男性がコーラスをつけたり。あとはスイング・ジャズの時代ではないんですが、ビル・エヴァンスのピアノ一本で歌うような、きれいなジャズ・ボーカルのバラードがあったり。

面白いのが、かつて美空ひばりさんが歌われていたようなジャズ歌謡曲みたいなものもあるんです。どこかアメリカだけじゃなくて日本の昭和感、歌謡曲感もあるというか。うまく表現できないんですが、どこか通じるものがあるのかな。もちろん音楽の歴史というのは、連綿と続いているものだと思うんです。昭和歌謡テイストのものから、スタンダードなジャズナンバー、そして僕らが歌ってきたようなポップス、そういうエッセンスが色々入っていて面白いですね。今回、楽曲が本当に素晴らしい。20曲近くあるんですよ。

稲垣吾郎

―鈴木さんから引き出されるのは、吾郎さんのどんな部分ですか?

僕の調子の良さとか、意外とおしゃべりなところとか、ですね。稲垣吾郎は実はおしゃべりなんです。あとは“人たらし”なところとか(笑)。

僕のパブリック・イメージ的には、そういうふうに当て書きしないと思うんです。今までやってきた役はサイコパスだったり、天才音楽家だったり、今度やる大正時代のドラマ(NHK『風よ あらしよ』)では、辻潤(日本を代表するダダイスト)の役ですから。本当は違うのにな? っていう役の方が多いんですけど、鈴木さんは僕の資質というか、僕の少しコミカルなところもわかってらっしゃる。だからすごく“見られている”のがわかります。自分の言葉すぎて、セリフを言うのが恥ずかしいほどです。

稲垣吾郎

「いっとき、立場の違う人と恋をする」

―ニック・テイラーと吾郎さんには重なる部分と同時に、違うところもあると思いますが、どんなふうにアプローチしているんですか?

全然、考えていない(笑)。ただニックはちょっとキザかな。それと、僕よりも言葉が上手。僕は言葉が理屈っぽくなってしまうところがあるので。親切心からなんですが(笑)、こういう取材でも、しつこく説明しちゃうんです。その点、ニックはもっと洒落ています。「この言葉は村上春樹だね」とか、鈴木さんが言ってますから。自分で書いておいて(笑)。鈴木さんの大学の先輩なんですよね、村上さんは。

―『恋のすべて』の背景となる1930年代ごろのアメリカは、映画でいうとアカデミー賞を独占した『或る夜の出来事』(1934年)[AmazonPrimeVideo]とか、『フィラデルフィア物語』(1940)[AmazonPrimeVideo]といったロマンティック・コメディとか、スクリューボール(変わり者)・コメディが流行した時代ですね。大金持ちの令嬢が、親の決めた相手を嫌がって、全く違う世界の人と恋をするというのが基本設定です。

ああ、なるほど。その少し後の『ローマの休日』(1953年)[AmazonPrimeVideo]とかも、設定は似てますね。いっとき立場の違う人と恋をするというのは。

稲垣吾郎

―そうですね。かつてのハリウッド映画の一つの典型ですね。

『恋のすべて』という作品は、そういう意味で、その時代のアメリカ映画へのオマージュでもあるんですよね。僕はその辺の映画を観ていなかったので、ぜひ観てみます(と、スマホにメモをする吾郎さん)。

―あとはフレッド・アステアとジンジャー・ロジャース主演のミュージカル『トップ・ハット』(1935年)[dTV]とかのテイストがあるのかな、と設定を読んで感じました。

そう! アステア、鈴木さんが大好きなんです。僕はその時代のアメリカの映画やジャズを通過しないで育ってきたので。でも普通、僕の年代だとそうなのかな。鈴木さんは、その時代のものにすごく親しんできたんですよ。

僕も最近、ラジオ番組のゲストの方からジャズを勉強させてもらっているんですが、この時代から音楽はずっと通じているんですよね。ただ、なかなか30年代のジャズというのは番組でもたまにしか取り上げられなくて。スタッフとも「ここはあまり通ってこなかったよね」なんて、よく話すんです。音楽に詳しいスタッフでも「あの時代の音楽は勉強はしましたが……」という感じで。鈴木さんは、その時代の文化からとても影響を受けたんですよね、映画も音楽も。

稲垣吾郎

「鈴木聡さんに、僕はすごく見抜かれているんだと思う」

―鈴木聡さんが、吾郎さんにこの時代のアメリカが似合うとおっしゃっているのは、もしかすると『フィラデルフィア物語』(1940年)のジェームズ・スチュワートのような、どこかのほほんとした品の良さを感じるからかもしれないですね。考えてみたら、羽場裕一さんの役名がクラークなのはクラーク・ゲーブルからきているのかな、とも感じました。

あ~、ちょっとわかってきた!(笑)。鈴木さんはこの時代を「華やかでスタイリッシュ、それでいて繊細」と表現しているんですが、そこに天然な感じも必要なんですね。そうか、そこを演じているんですね、当時の俳優というのは。僕自身、のほほんとしたところがあると思うんです。うん、あるある(笑)。

鈴木さんに、僕はすごく読まれているんだと思う。鈴木さんって、どこか占い師みたいなところがあって。初めてお仕事した女優さんたちも、「私のこと、読まれてる!」って言ってましたから。何か見えるのかな? スピリチュアルなものが(笑)。

稲垣吾郎

―あの時代のハリウッド・スターが持つ、能天気というか、のほほんとした善良さが、キラキラ感を生んでいるのかなとも思います。

それはありますね。アメリカの俳優さんが持つ、マッチョさとは違う、能天気さの魅力ってありますよね。香取(慎吾)くんとかも、そうじゃないかな? これがヨーロッパの俳優さんだと、もっとシニカルな魅力だったりナルシストだったり、そういう癖が少しあったりするけれど。

―ジェームズ・スチュワート的な善良さ、明るさというのは、実は吾郎さんにも感じられるので、舞台がとても楽しみです。きっと鈴木さんはそこを見抜いて、ずっと書かれているんでしょうね。

善良さがある、と言ってもらえるのは嬉しいです。本当に鈴木さんに、僕は見抜かれているんですよ。善良さ、というのは今回のニックにすごくあるんです。彼が仕事を引き受けるのはお金のためもあるんだけど、やっぱり人のため、というところがある。生活は苦しいけれど、それでもニックはのほほんとしていて。そして結末は言えませんが、ニックには“ある想い人”がいるんですよ。すごく気持ちの良い終わり方をするし、人のために何かをするというのは良いなあ……って思えると思うんです。

稲垣吾郎

「かけがえのないものとしてエンターテインメントを続けていきたい」

―探偵ニックと、彼が恋を仕掛ける令嬢コニーとは年がかなり離れていますが、そういう関係はどう思われますか?

憧れのある人は少なくないでしょうね。女性でも男性でも、年上でも年下でも。若いときは年上の女性に憧れるし、それなりの年齢になったら若い方の魅力というのもわかる。もちろん、僕くらいの年齢であっても年上の方を魅力的に感じることだってあります。ジェネレーションが違うからこそ惹かれ合う、というのはやっぱりありますよね。時代が一周したことで同じようなものが好き、とか。

またラジオの話になっちゃいますが、若いアーティストの方に影響を受けた曲とかを訊ねると、90年代の渋谷系とかを聴いてたり、十代の人がめちゃくちゃ大貫妙子さんを聴いていたりするんです。今は、すぐになんでも聴ける時代というのも大きいでしょうけれど。それで思い出しましたが、今回は大貫妙子さんの透明感があるバラードのような、なんというかシティポップ調の曲もあるんですよ。あくまで僕の中のイメージですが。音楽に関しても、とても楽しんでいただけると思います。

稲垣吾郎

―音楽は青柳誠さんですね。『恋と音楽』(2012年~)『君と輝く夜に』(2018年~)シリーズの故・佐山雅弘さんとの違いは、どんなところに感じますか?

違いますね。鈴木さんもそう言っています。佐山さんの曲は難解なところもあったようなんです、音楽のアプローチとして。僕は耳で聴いてやっているだけで、楽譜のこととか専門的なことはわからないんですが。実は佐山さんは実験的なことをやっていたみたいですね。一方、青柳さんは、もしかしたらスタンダードなミュージカルらしさがあるかもしれない。そこに日本の歌謡曲やポップス、そして30年代のデューク・エリントンのジャズだったり、色々な要素が混ざっていているのが、とても楽しいんです。

稲垣吾郎

―最後に、このコロナ禍においてエンターテインメントをやり続けることについて、お気持ちをお聞かせください。

みなさんと取材でお話していても、エンターテインメントの必要性というものをすごく感じますし、自分自身が欲しているということも再確認しました。そしてコロナ禍の時間の中で、それが当たり前ではないんだ、ということに気がついたと思うんです。だからこそ、かけがえのないものとしてエンターテインメントを続けていきたいと思うし、そういうチャンスが自分にはあり、歴史もあると思うんです。これから先はまだわからない状況だけれども、舞台でのルールも少しずつわかってきたし、楽しみにしたいと思います。

取材・文:石津文子
撮影:町田千秋

〈スタッフ〉
スタイリスト:細見佳代(ZEN creative)
ヘアメイク:金田順子(June)
〈衣装クレジット〉
ジャケット:¥88,000、
ネクタイ:¥14,300、
パンツ:¥29,700/すべてボス
シャツ/スタイリスト私物
〈読者問い合わせ先〉
ヒューゴ ボス ジャパン株式会社
TEL:03-5774-7670

【公演概要】

モボ・モガ プロデュース ミュージカル・コメディ 『恋のすべて』
2022年2月11日(金・祝)~2月27日(日)
※2月11、12日の公演は諸事情により中止、詳しくは公式サイトへ

東京建物 Brillia HALL

出演:
稲垣吾郎
花乃まりあ 石田ニコル 松田凌
北村岳子 羽場裕一

作・演出:鈴木聡

※チケット一般発売は1月22日(土)10時より

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モボ・モガ プロデュース ミュージカル・コメディ『恋のすべて』

ニック・テイラーは探偵。過去に大切な探偵仲間シドを事件で亡くしている。シドの未亡人に送金しているためいつもお金がない。

クラーク・キャンピオンは、手広く事業を行う経営者。コニーという箱入り娘がいるが、最近、テディ・モーリーという若者が娘の周りをうろついていることを苦々しく思っている。ただ、富豪の未亡人でテディの母、カミラ・モーリーに投資を頼んでいる手前、テディを追い払うことはできない。

テディはどうやらコニーにプロポーズをしようとしているらしい。クラークは、カミラからの投資の契約が終了するまで、コニーをテディから遠ざけるという任務をニックに依頼する。

「娘を君との恋に落としてくれ」
破格の依頼料に、仕事を引き受けるニック。

一緒に時を過ごすうち、二人の間には「恋のような感じ」が漂いはじめる。さらにクラークは、自分の愛人ザラ・エイミスを使ってテディを誘惑しようとする………。

制作年: 2022
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