桂正和「バットマンの変態性から妄想を膨らませて『ZETMAN』を描いたんです(笑)」(4/5)

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ライター:BANGER!!! 編集部
桂正和「バットマンの変態性から妄想を膨らませて『ZETMAN』を描いたんです(笑)」(4/5)
1981年に<週刊少年ジャンプ>でデビューを果たし、83年に同誌で『ウイングマン』の連載をスタートさせた漫画家・桂正和さん。その後90~00年代にかけて『電影少女』『I"s』『ZETMAN』といった歴史に残る傑作を生み出し、現在はその神々しいまでの画力でキャラクターデザイン分野など多方面で活躍されています。
今回は、そんな桂さんに「人生」と「映画」というテーマでインタビューを敢行。フェイバリット映画を5作挙げていただきつつ、幅広い世代に愛される桂作品が生まれた背景や影響を紐解くべくお話を伺いました。

「アクションのカッコよさに最後の爽快感、言うことなしですよね」

3:『ダイ・ハード』(1988年)

これも公開当時、たまたま観に(劇場に)入って「おもしろすぎる!」と思って(笑)。僕、あんまり何回も観ないんですけど、これは映画館で3回観てます。それほどハマりましたね。

当時ブルース・ウィリスのことを知らなかったんですけど、知らない俳優さんっていうのは予想ができないんで、そこの楽しさですよね。あとは『タワーリング・インフェルノ』(1974年)とかにも共通してますけど、閉じられた空間でどうやって話を進めていくか? っていうところの魅力。だから『エイリアン』とか『BTTF』もそうですけど、好きなのは1(作目)です、全部(笑)。

タワーの中だけでお話が完結してるのがとても魅力的で。あと黒人警官との顔も知らない同士のやり取りが最後のシーンにつながるんですけど、そういう人間としての感動みたいなものもあって。これも『BTTF』と同じぐらい、お話が秀逸だなと思ってますね。アクションのカッコよさもあるし、最後の爽快感もあるし、言うことないですね。

「頼りがいがないところが魅力的ですよね、裸足だし(笑)」

主人公に頼りがいがないじゃないですか。そこがとても魅力的ですよね、裸足だし(笑)。なんかもう、おもしろさが詰まってるんですよね。同じ頃の公開だと思うんですけど、『ロボコップ』(1987年)が大好きで。『ダイ・ハード』と『ロボコップ』は、観たあとに主人公になった気持ちで映画館から出てきましたからね(笑)。それくらい魅力的というかなんというか。

僕らより上の世代は、やくざ映画とかを観た後に本人になった気分で出てくるみたいなの、あるじゃないですか。僕がそれを体験したのが『ダイ・ハード」と『ロボコップ』だったりしましたね。あの頃って『ターミネーター』(1984年)もあって、あれも面白かったですね。この当時は、僕にとってすごく映画が面白かった時代です。

影響は……あるかなあ(笑)。そう言われると、娯楽と日常は分かれてる感じがします。マンガ制作のイマジネーションをもらうことって、そうそうないですね。いま挙げた3作は染みついちゃってますけど、案外そういうふうに影響を受けるっていうのはないかな。でも作品として大好きっていう。

「いろんな意味で“違う世界”を見せてくれた作品」

4:『バットマン』(1989年)

これでヒーローものの価値観が変わったというか。アメリカじゃとっくに公開されて超話題になってたのに、日本は1年くらい待たされた思い出があって。向こうじゃ大ヒットしてたから、観たくて観たくて仕方なかったんだけど。

僕らのバットマンっていうと、テレビでやっていたちょっとコメディチックな、あれのイメージがあったので。真っ黒な、悪そうなヒーローって何だろう!? っていうね。観る前から大好きでしたね。で、やっと公開になって、これも劇場で2、3回観ました。

まあ映像にやられてますね、バットマンの衣装の作り方とか、ジョーカーもそうですけど。正直言って、お話は全然おもしろくないんですよ(笑)。だけど世界観というか、バットマンの衣装とか武器とか、あと、ちょっと悪い、病んでいるっていう。僕たちみたいな、ウルトラマンとか仮面ライダーで育ってきてる(世代の)ヒーロー感としては、あり得ないことだったので。そこからちょっとヒーローものの考え方が変わったというか、人間味を感じるようになりましたね。

これはもう、かなり僕の体に染みついていて。『エイリアン』と共に非常に影響を受けてる感じですね、暗~い映像もそうですし。ただ衣装とかはカッコいいんですけど、立ち回りがカッコいいか? っていうと、そんなことなくて(笑)。それならジャッキー・チェンのほうがカッコいいわけで。でもそういうことじゃなくて、いろんな意味で“違う世界”を見せてくれたっていう。だから、これも「1」が大好きです。

「バットマンの変態性をベースに、妄想を膨らませて『ZETMAN』を描いたんです(笑)」

『バットマン』を観て、人間がそれをやる歪(ひずみ)というか矛盾というか、それが面白いなって。例えば、必ず小物には“コウモリマーク”がついてるとかって、バットマンであるっていうアイコンだから不自然さはないんですけど、でもよくよくリアルに考えたら、いちいちそれを付けるってどういうことなんだろうな? って思うじゃないですか。相当ナルシストなのかな? とか思うわけですよ(笑)。

1作目は冒頭のシーンが印象的で一番好きなんですけど、強盗が屋上で盗んだものを仲間同士で見ている。すると(バットマンが)後ろでマントを広げて降りてくるじゃないですか? もうナルシストでしかないわけですよ(笑)。そういう観方をしたらすごく味わい深くて。初めてそういう観方ができた作品なんですよね、こいつ変態だな! っていう(笑)。そこがとっても良かったんですよね。

そこで妄想を膨らませたことで、『ZETMAN』を描きたいって思ったんです。だからバットマン自体を描きたいか? って言われると、僕は描きたくないんですよ。それじゃつまらないし、人間が相手だから犯罪を描かなきゃいけないし。そういうことよりも、僕がこの映画で感じた細かな変態性というかですね……(笑)。知らないところでカッコつけてるとか。

「『ダークナイト』をパクったと思われてるかもしれないけど僕のほうが先に描いてますからね!(笑)」

おそらくですよ? 描かれてはいないですけど、町中にカメラが仕掛けてあって、その監視カメラみたいなものにもバットマークがついてるんだろうな、とか(笑)。で、あれは(執事の)アルフレッドが作ってることになってますけど、アルフレッドが実用性をもって「旦那様、こういうものを作りました」って出したときに、「いや、いいんだけど、バットマークついてないよね」ってクレーム出してる気がするんです(笑)。

バットモービルも、もうちょっと普通な車で作ったんだけど「羽が生えてない」とか「黒じゃないじゃないか」とか、そういうことを言ってそうな気がしたんですよね(笑)。それが、すごく僕の漫画に反映されてるというか、若干そういう妄想を『ウイングマン』の(主人公)広野健太にフィードバックしたというか(笑)。すごく僕の中で愛すべきキャラクターになった。

その何年後かに『ZETMAN』を描いてる頃、『ダークナイト』(2008年)が公開されて。トーンが似てるわけですよ、なんか。僕がパクったように思われてるかもしれないですけど、あれ僕のほうが先に描いてますからね!(笑)

でもリアルを突き詰めたとき、彼はどうしてこうなのか? を考えたときに、そういう歪が出てくる。なんでバットマークになってなきゃいけないのか? とか。そういうところも『ダークナイト』と『ビギンズ』(2005年)は描いてた気がするんですよね。後世にも影響を与える作品だと思いますよ。ヒーローのリアリティの在り方として、矛盾点がある部分を描くと面白いっていうことに気が付かせてくれた映画ですね。

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桂正和「これで『電影少女』の全体のイメージが湧いた、僕の核になってる映画」(5/5)

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